支払調書とは?6種類・提出義務・書き方を公認会計士が完全解説【2026年・電子提出義務化対応】

支払調書(しはらいちょうしょ)は、報酬・料金・不動産家賃などを支払った事業者が、支払先の氏名・支払金額・源泉徴収税額を税務署に報告する書類で、「法定調書」全6種類のうち4種類を指します。本記事では、支払調書の種類・提出義務・書き方・電子提出義務化(令和9年改正)を、公認会計士・税理士が国税庁の一次情報をもとに解説します。

本記事は、田中将太郎公認会計士・税理士事務所(顧問先500社以上・東京/札幌/仙台)の監修です。最終更新日:2026年5月8日。

結論:支払調書の提出義務は「支払の種類×金額」で決まる

支払調書の提出義務の判定は、シンプルに次の早見表で確認できます。

支払の種類提出義務の閾値
弁護士・税理士・原稿料・講演料・デザイン料など同一人に年5万円超
外交員報酬・ホステス報酬・広告宣伝の賞金同一人に年50万円超
馬主に支払う競馬の賞金1回75万円超
プロ野球選手等の報酬・契約金同一人に年5万円超
不動産の使用料(家賃・地代・礼金等)同一人に年15万円超
不動産等の譲受けの対価(売買代金)同一人に年100万円超
支払調書の主な提出範囲(出典:国税庁タックスアンサーNo.7431・No.7441 等)

提出期限は支払の確定した年の翌年1月31日。提出先は事業所所在地を管轄する税務署です。

そして、令和9年(2027年)1月1日以後に提出する法定調書から、e-Tax等の電子提出義務化の閾値が「前々年100枚以上」から「30枚以上」に引き下げられます。中小企業も他人事ではありません。

支払調書とは?基本の定義

支払調書の意味

支払調書とは、報酬・料金・契約金・賞金・不動産家賃などを支払った事業者(法人・個人)が、その支払の内容(支払先の氏名や住所、支払金額、源泉徴収税額など)を税務署に報告するための書類です。所得税法第204条・第225条などを根拠に、支払者に提出が義務付けられています。

「法定調書」との違い

「法定調書」とは、所得税法・相続税法・租税特別措置法などの法令により税務署への提出が義務付けられている書類の総称で、現在全部で60種類以上あります。「支払調書」はそのうち、報酬・契約金・賞金・不動産関連の支払を報告するものを指します。

後述する6種類の主要な法定調書のうち、「給与所得の源泉徴収票」「退職所得の源泉徴収票」を除く4種類が「支払調書」です。

「源泉徴収票」との違い

支払調書源泉徴収票
対象となる支払報酬・料金・契約金・賞金・不動産関連給与・退職金
受給者への交付義務法律上の交付義務なし(慣行で交付)あり(所得税法226条)
提出先税務署のみ税務署+市区町村(給与)/受給者
マイナンバー記載受給者・支払者ともに必要受給者のみ必要(受給者交付分は記載不可)
支払調書と源泉徴収票の主な違い

法定調書6種類の全体像

主要な法定調書6種類の概要は以下の通りです。

#名称提出義務者
給与所得の源泉徴収票給与の支払者
退職所得の源泉徴収票退職手当等の支払者
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書外交員報酬・税理士報酬等の支払者
不動産の使用料等の支払調書法人および不動産業者である個人
不動産等の譲受けの対価の支払調書法人および不動産業者である個人
不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書法人および不動産業者である個人
主要な法定調書6種類(出典:国税庁No.7400 法定調書の種類

このうち、③〜⑥が「支払調書」と呼ばれるものです。なお、上記6種類とあわせて「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を1枚提出するのが原則です。

「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を完全解説

提出義務者

外交員報酬・税理士報酬・原稿料・講演料・デザイン料など、所得税法第204条第1項各号に規定される報酬・料金等を支払った事業者(法人・個人事業主)。

提出範囲(早見表)

区分具体例提出範囲
所得税法204条1項1号原稿料、講演料、デザイン料、翻訳料、放送謝金、著作権使用料同一人に年5万円超
所得税法204条1項2号弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・弁理士などの報酬同一人に年5万円超
所得税法204条1項3号社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬同一人に年50万円超
所得税法204条1項4号外交員・集金人・電力量計検針人の報酬同一人に年50万円超
所得税法204条1項5号映画俳優・芸能人・モデル・スポーツ選手の報酬同一人に年5万円超
所得税法204条1項6号ホステス・コンパニオン等の報酬同一人に年50万円超
所得税法204条1項7号契約金(プロ野球選手の契約金など)同一人に年5万円超
所得税法204条1項8号広告宣伝のための賞金(懸賞応募の賞金など)同一人に年50万円超
所得税法174条10号馬主に支払う競馬の賞金1回75万円超のものに係る年中の支払額
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の提出範囲(出典:国税庁No.7431

注意:消費税の取扱い — 提出範囲の判定は消費税および地方消費税の額を含めた金額で行うのが原則です。ただし請求書等で消費税額が明確に区分されている場合は、消費税抜きの金額で判定して差し支えありません。

対象となる「報酬・料金等」の具体例

実務でよく出てくる例を整理します。

  • 税理士・公認会計士への顧問料・税務申告報酬
  • 弁護士・司法書士・行政書士・社労士への報酬
  • フリーランスのライターへの原稿料
  • セミナー講師への講演料
  • デザイナー・イラストレーターへのデザイン報酬
  • 翻訳家への翻訳料
  • 広告宣伝のための懸賞賞金

書き方(記載項目)

支払調書の様式には、以下の項目を記載します。

  • 支払を受ける者:住所・氏名・マイナンバー(または法人番号)
  • 区分(原稿料、税理士報酬など)
  • 細目(取引内容)
  • 支払金額(年間合計)
  • 源泉徴収税額(年間合計)
  • 支払者:住所・氏名・法人番号

様式は国税庁ホームページからPDF・OCR用紙でダウンロードできます。e-Taxで電子的に作成・送信することも可能です。

法人への支払も提出範囲に該当する場合あり

「源泉徴収義務がない法人への支払だから不要」と誤解されがちですが、馬主である法人への競馬賞金のように、法人への支払でも提出義務がある場合があります。所得税法204条第2項各号で源泉徴収不要とされる支払でも、支払調書の提出範囲に該当すれば調書は必要です。

「不動産の使用料等の支払調書」を完全解説

提出義務者

法人および不動産業者である個人。ただし、建物の賃貸の代理・仲介を主たる業務とする個人は除かれます。

提出範囲:年15万円超

同一人に対するその年中の支払金額の合計が15万円を超えるもの。

対象となる支払

  • 土地・建物の賃借料(地代・家賃)
  • 権利金・礼金(返還を要しない敷金等を含む)
  • 更新料・承諾料
  • 借地権譲受時の名義書換料
  • 催物会場・陳列ケースなどの一時的賃借料

法人への支払の特例

支払先が法人の場合、地代・家賃などの「賃借料」は提出範囲から除かれ、権利金・礼金・更新料・承諾料・名義書換料などのみが対象です。個人オーナーへの支払は賃借料も含めて15万円超で提出義務が発生する点と異なります。

出典:国税庁No.7441 「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲等

提出期限・提出先・提出方法

提出期限

原則として、支払の確定した日の属する年の翌年1月31日まで。例えば2026年中の支払については、2027年1月31日が提出期限です。

提出先

事業所の所在地を管轄する税務署長。給与所得の源泉徴収票については、本人住所地の市区町村にも「給与支払報告書」として提出します。

提出方法

提出方法は次の4種類があります。

  1. 書面(紙) — 国税庁から取り寄せたOCR用紙を使用
  2. e-Tax — 国税電子申告・納税システムでオンライン送信
  3. 光ディスク等(CD・DVD) — 所定のレイアウトで作成
  4. クラウド等を経由した提出 — 認定されたクラウド事業者経由で送信

【2026年最新】電子提出義務化(令和9年改正)

現行:前々年100枚以上で電子提出義務

現行制度では、ある法定調書について前々年に税務署に提出した枚数が100枚以上だった場合、翌年以降の提出は電子的方法(e-Tax・光ディスク・クラウド経由)に限定されます。

令和9年1月1日以後:30枚以上に引き下げ

令和9年(2027年)1月1日以後に提出すべき法定調書から、電子提出義務化の閾値が「100枚以上」から「30枚以上」に引き下げられます。これは令和3年度税制改正により決定済みの改正です。

自社が対象になるかの判定方法

判定は「前々年」の提出実績で行います。たとえば令和9年(2027年)1月に提出する分は、令和7年(2025年)の提出実績で判定します。

提出年判定基準年判定基準電子提出義務
令和8年(2026)1月令和6年(2024)100枚以上あり
令和9年(2027)1月以降令和7年(2025)30枚以上あり
電子提出義務化の判定(出典:国税庁No.7400

早めにe-Taxに移行するメリット

  • 30枚閾値で対象になる中小企業が大幅に増える(手続きを早めに整備すべき)
  • e-Taxなら24時間提出可能・提出受付印不要
  • 給与計算ソフト・会計ソフトとの連携で作業時間を削減
  • マイナンバーの管理がシステムで一元化できる

マイナンバー(個人番号・法人番号)の記載

平成28年以降、原則記載必須

平成28年(2016年)1月1日以後の支払に係る支払調書には、支払を受ける者のマイナンバー(個人番号)または法人番号、および支払者の法人番号の記載が必須です。

取引先からマイナンバーを教えてもらえないとき

マイナンバーの提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録・保管し、単に「提供を受けていません」と空欄で提出するのではなく、税務署にその理由を説明できる状態にしておく必要があります。提供拒否そのものに対する罰則はありませんが、支払者として「相当な努力をした」記録が重要です。

受給者交付分には記載不可

本人に交付する源泉徴収票・支払通知書(任意交付)にはマイナンバーを記載してはいけません(番号法による制限)。あくまで税務署提出用にのみ記載します。

支払調書とインボイス制度

支払調書と適格請求書は別物

2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)と、支払調書はまったく別の制度です。

  • 適格請求書(インボイス):消費税の仕入税額控除に使う請求書
  • 支払調書:所得税・源泉所得税の課税関係を税務署に報告する書類

取引先から適格請求書を受領していても、支払調書の提出義務は別途判定する必要があります。

業務委託先がインボイス未登録の場合

業務委託先がインボイス未登録(免税事業者)でも、支払調書の提出義務には影響しません。報酬5万円超等の閾値を満たせば、インボイス登録の有無に関係なく支払調書の提出が必要です。

関連記事:法定福利費の消費税・会計処理を完全解説【2026年度最新料率対応】

よくある質問(FAQ)

Q1. 支払調書を取引先に発行する義務はありますか?

法律上、取引先(受給者)に支払調書を発行する義務はありません。支払調書の提出義務は税務署に対するものであって、受給者への交付は任意です。実務上は、受給者の確定申告のために慣行として写しを送ることが多いですが、法的義務ではない点に注意してください。

Q2. 支払調書 5万円以下なら提出不要ですか?

「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」のうち、税理士報酬・原稿料・講演料・契約金などは、同一人に対する年間支払額が5万円以下であれば提出不要です。ただし外交員報酬・ホステス報酬・診療報酬などは50万円が閾値となり、種類により異なります。

Q3. 個人事業主から個人事業主への支払は提出義務がありますか?

個人事業主が支払者となる場合でも、所得税法204条1項の報酬・料金等を一定額超で支払えば、支払調書の提出義務があります。ただし、給与等の支払がなく、源泉徴収義務のない個人事業主は、報酬料金等の支払調書の提出義務もありません。給与の支払がある個人事業主や、不動産業者である個人は提出義務があります。

Q4. 業務委託への支払は支払調書が必要ですか?

業務委託先が「報酬・料金等」を受ける個人(フリーランス)で、所得税法204条1項該当の業務(デザイン・原稿・講演・税理士業務など)であれば、年5万円超で提出義務が発生します。業務内容が同条に該当しない単純な役務提供(清掃業務など)は対象外です。

Q5. 支払調書を受け取った側は確定申告で添付が必要?

2019年4月以降、所得税の確定申告書への支払調書の添付は不要とされています。ただし、自分が受け取った支払金額・源泉徴収税額の確認資料として保管しておくことは推奨されます。

Q6. 消費税は税込・税抜どちらで判定しますか?

原則として消費税および地方消費税の額を含めた金額で判定します。ただし、請求書等で消費税額が明確に区分されている場合は、消費税抜き金額で判定して差し支えありません(実務上は税抜判定とすることが多い)。

Q7. マイナンバーを教えてくれない取引先がいる場合は?

提供を求めた経過を記録・保管した上で、空欄のまま提出します。提供拒否そのものに罰則はありませんが、「相当な努力をした」記録が重要です。書面で複数回依頼した記録、電話・メール等の履歴を残しておきましょう。

Q8. 支払調書の提出を忘れたら罰則はありますか?

所得税法第242条により、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が定められています。実務上は、税務調査で漏れが判明した場合に追加提出を求められるケースが多いですが、悪質な場合は重い罰則が科される可能性があります。

Q9. e-Taxでの提出方法は?

国税庁の「e-Tax」サイトから、法定調書システムで作成・送信できます。給与計算ソフト・会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)から直接e-Tax連携で送信できる場合も多く、社員30名以上の事業者は早期にシステム化を推奨します。

Q10. 支払調書のフォーマットはどこで入手できますか?

国税庁ホームページの「法定調書(源泉徴収票、支払調書)特集」ページからPDFまたはOCR用紙をダウンロードできます。e-Taxやクラウド型の給与・会計ソフトを使えば、フォーマットを意識せず作成・送信が可能です。

まとめ

  • 支払調書は法定調書6種類のうち4種類を指す税務署提出書類。提出範囲は支払の種類ごとに5万円・50万円・15万円超など異なる
  • 提出期限は翌年1月31日。提出先は事業所所在地を管轄する税務署
  • 令和9年1月以後、電子提出義務化の閾値が100枚→30枚に引き下げ。中小企業も他人事ではなく、e-Taxへの早期移行を推奨

支払調書の作成、源泉徴収税額の計算、e-Tax導入支援、業務委託先のマイナンバー管理など、実務上の悩みは尽きません。田中将太郎公認会計士・税理士事務所では、顧問先500社以上の実績をもとに、給与計算・法定調書・年末調整までワンストップでサポートしています。

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田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした"戦略税務"や売上を伸ばすための"戦略マーケティング"に強みを持つ。
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