法定福利費の消費税・会計処理を完全解説【2026年度(令和8年度)最新料率対応】

法定福利費の消費税・会計処理を解説するイメージ
法定福利費(Welfare)

法定福利費(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料・労災保険料・子ども・子育て拠出金)の消費税の取扱い会計処理(仕訳)を、公認会計士・税理士が2026年度(令和8年度)最新料率に基づいて解説します。

「法定福利費の消費税は課税?非課税?」「仕入税額控除はできる?」「インボイス制度の影響は?」といった疑問にも、国税庁・厚生労働省の一次情報をもとに正確にお答えします。

本記事は、田中将太郎公認会計士・税理士事務所(顧問先500社以上・東京/札幌/仙台)の監修です。最終更新日:2026年5月8日。

結論:法定福利費の消費税は「非課税」(仕入税額控除の対象外)

結論から先にお伝えすると、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料・労災保険料・子ども・子育て拠出金は、すべて消費税の「非課税取引」にあたります。

根拠は、消費税法第6条第1項および別表第二第3号です。「保険料を対価とする役務の提供」が非課税とされているためです。

したがって、これらを支払っても仕入税額控除はできません。本則課税で消費税申告をする会社の経理担当者は、必ず「対象外(非課税仕入)」として処理してください。

参考:国税庁ホームページ「No.6201 非課税となる取引

2026年度(令和8年度)法定福利費 料率早見表

2026年4月以降に適用される、法定福利費の主要な料率を一覧にまとめました。中小企業の多くが加入する協会けんぽ(全国健康保険協会)の全国平均ベースです。

保険料の種類料率(合計)事業主負担従業員負担適用開始
健康保険料(協会けんぽ全国平均)9.90%4.95%4.95%2026年3月分〜
介護保険料(40歳以上)1.62%0.81%0.81%2026年3月分〜
厚生年金保険料18.30%9.15%9.15%2017年9月以降固定
雇用保険料(一般事業)13.5/10008.5/10005/10002026年4月〜
労災保険料(事務職)3/10003/10000業種別
子ども・子育て拠出金0.36%0.36%0事業主全額負担
2026年度の法定福利費 主要料率(協会けんぽ全国平均ベース)

注意点:

  • 健康保険料率は都道府県ごとに異なります(協会けんぽの場合)。組合健保はそれぞれの組合の規約による
  • 介護保険料は40歳以上65歳未満の被保険者(介護保険第2号被保険者)に課されます
  • 労災保険料率は業種別に3/1000〜88/1000と幅があります(事務職は最低の3/1000、林業は最高の60/1000、金属鉱業は88/1000など)
  • 雇用保険料率は事業の種類により異なります(農林水産・清酒製造は15.5/1000、建設は16.5/1000)

出典:協会けんぽ「令和8年度保険料率のお知らせ」厚生労働省「雇用保険料率について」

月給30万円の場合の計算例(協会けんぽ・東京)

月給30万円・40歳未満・一般事業・事務職の従業員のケースを試算します。

項目計算事業主負担従業員負担
健康保険料30万円×9.90%14,850円14,850円
厚生年金保険料30万円×18.30%27,450円27,450円
雇用保険料30万円×13.5/10002,550円1,500円
労災保険料(事務職)30万円×3/1000900円0円
子ども・子育て拠出金30万円×0.36%1,080円0円
合計46,830円43,800円
月給30万円・40歳未満・一般事業・事務職のケース(標準報酬月額=30万円とした概算)

従業員1人あたり、事業主は給与の約15.6%を法定福利費として追加負担していることがわかります。経営者・スタートアップが採用計画を立てるときは、この追加コストを必ず織り込みましょう。

法定福利費とは(5+1の保険料)

法定福利費の定義

法定福利費とは、法律で事業主に納付が義務付けられている、従業員のための社会保険料・労働保険料の総称です。会計上は「法定福利費」勘定で処理し、税務上は損金(経費)として認められます。

同じ「福利」という名前でも、福利厚生費(社員旅行・健康診断・慶弔見舞金など、企業が任意で支出する費用)とは明確に区別されます。

法定福利費を構成する6つの保険料

① 健康保険料

従業員(被保険者)とその家族が病気・ケガ・出産時に医療給付を受けるための保険料。中小企業の多くは協会けんぽに加入し、大企業は健康保険組合(組合健保)を運営しています。

料率は労使折半。2026年度の協会けんぽ全国平均は9.90%(2025年度の10.00%から0.10ポイント引き下げ)です。

② 介護保険料

40歳以上65歳未満の被保険者(介護保険第2号被保険者)に課される、介護保険制度の財源。健康保険料と一緒に徴収され、料率は労使折半です。

2026年度の協会けんぽ介護保険料率は1.62%です。

③ 厚生年金保険料

老齢・障害・死亡時に給付される厚生年金制度の財源。70歳未満の従業員が対象で、料率は労使折半です。

厚生年金保険料率は2017年(平成29年)9月以降、18.30%で固定されています(過去の段階的引上げが終了)。

出典:厚生労働省「厚生年金保険料率の引上げが終了します」

④ 雇用保険料

失業給付・育児休業給付・教育訓練給付などの財源。労使で負担割合が異なり、事業主の方が多く負担します。

2026年度の雇用保険料率は、一般事業で合計13.5/1000(労働者5/1000、事業主8.5/1000)。事業主負担のうち3.5/1000は「雇用保険二事業」(雇用安定事業・能力開発事業)に充てられます。

⑤ 労災保険料

業務上または通勤中の災害に対する補償の財源。全額事業主負担で、料率は業種別に大きく異なります(3/1000〜88/1000)。

事務職など災害リスクが低い業種は3/1000、建設・林業・鉱業など高リスク業種は数十/1000と、20倍以上の開きがあります。

⑥ 子ども・子育て拠出金

児童手当・地域子ども・子育て支援事業などの財源。全額事業主負担で、従業員からは徴収しません。

2026年度の拠出金率は0.36%(3.6/1000)で、2025年度から据え置きです。

法定福利費と福利厚生費の違い

法定福利費福利厚生費
性質法律で義務付けられた支出企業が任意で実施する支出
具体例社会保険料・労働保険料・拠出金社員旅行・健康診断・慶弔見舞金・社宅
消費税非課税(仕入税額控除不可)内容により課税・非課税混在
損金算入原則全額損金福利厚生として相当な範囲で損金
法定福利費と福利厚生費の違い

福利厚生費の詳しい解説や、交際費・会議費との区分については、関連記事「税理士が教える飲食費の経費計上・節税対策(交際費、会議費、福利厚生費)」をご覧ください。

法定福利費の消費税の取扱い(メイン解説)

結論:すべて非課税取引(消費税法6条1項・別表第二第3号)

法定福利費を構成する6つの保険料・拠出金は、すべて消費税の「非課税取引」に該当します。

保険料の種類消費税区分仕入税額控除
健康保険料非課税不可
介護保険料非課税不可
厚生年金保険料非課税不可
雇用保険料非課税不可
労災保険料非課税不可
子ども・子育て拠出金非課税(拠出金として)不可
法定福利費の消費税区分まとめ

「非課税」となる根拠

消費税法第6条第1項では、別表第二に掲げる取引には消費税を課さないと定めています。別表第二第3号に「保険料を対価とする役務の提供」が列挙されており、社会保険料・労働保険料はここに該当します。

立法趣旨としては、保険料は「消費に負担を求める税としての性格になじまない」こと、および「社会政策的配慮」の二つの観点から非課税とされています。

仕入税額控除はできない(実務上の注意点)

法定福利費は非課税仕入のため、本則課税で消費税申告を行う事業者は仕入税額控除の対象に含められません。会計ソフトで仕訳入力するときは、必ず税区分を「対象外」または「非課税仕入」に設定してください。

また、課税売上割合の計算上は、「不課税」とは異なり「非課税」として処理する違いがあります。ただし課税売上割合の分母に算入されるのは「非課税売上」であって、非課税仕入である法定福利費は分母にも分子にも入りません。

参考:国税庁「No.6209 非課税と不課税の違い」「No.6451 仕入税額控除の対象となるもの

福利厚生費との区分の違い(消費税)

「福利厚生費」は、内容によって課税・非課税が分かれます。実務でよく出てくる例を整理します。

福利厚生費の例消費税区分
社員食堂・食事補助課税
健康診断(医療機関への支払)課税
社員旅行(交通費・宿泊)課税
慶弔見舞金(金銭支給)不課税
家賃補助(社宅家賃の差額負担)非課税(住宅家賃)
福利厚生費の消費税区分(代表例)

法定福利費の会計処理(仕訳例)

実務でよく出てくる場面の仕訳をご紹介します。月給30万円・40歳未満・一般事業・事務職のケースを想定。社会保険料(健保・厚年・子育て拠出金)と労働保険料(雇用・労災)は納付サイクルが異なるため、分けて整理します。

① 給与支給時の仕訳(従業員負担分の預かり)

給与から従業員負担分の社会保険料・雇用保険料を天引きします。

借方金額貸方金額
給料手当300,000普通預金256,200
預り金(社保・従業員分)42,300
預り金(雇用保険・従業員分)1,500
給与支給時:健保14,850+厚年27,450=42,300円を社保預り金、雇用保険1,500円を別預り金として計上

② 月末計上時の仕訳(社会保険料の事業主負担分)

社会保険料の事業主負担分(健康保険・厚生年金・子ども子育て拠出金)を法定福利費として計上します。

借方金額貸方金額
法定福利費43,380未払費用(社保・事業主分)43,380
事業主負担分の社会保険料:健保14,850+厚年27,450+子育て拠出金1,080=43,380円

③ 翌月納付時の仕訳(社会保険料を年金事務所へ納付)

社会保険料は翌月末に日本年金機構へ納付します(例:4月分→5月末納付)。

借方金額貸方金額
預り金(社保・従業員分)42,300普通預金85,680
未払費用(社保・事業主分)43,380
社会保険料納付:従業員預かり42,300円+事業主負担43,380円=85,680円を一括納付

④ 労働保険料(雇用+労災)の処理

労働保険料(雇用保険料+労災保険料)は、年1回の年度更新(毎年6月1日〜7月10日)で前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を申告・納付します。月次では事業主負担分を法定福利費として未払計上し、年度更新時に取り崩します。

借方金額貸方金額
法定福利費(雇用+労災)3,450未払費用(労働保険・事業主分)3,450
月次計上:雇用2,550+労災900=3,450円(事業主負担分)。年度更新時に未払費用と従業員預り金を取り崩して納付

法定福利費とインボイス制度

結論:適格請求書(インボイス)は不要

2023年10月から始まったインボイス制度ですが、法定福利費は非課税取引のため、もともと仕入税額控除の対象外です。したがって、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・労災保険料の納付に際して、適格請求書(インボイス)を保存する必要はありません。

健康保険料の納付書・領収書の取扱い

日本年金機構や労働局から送られてくる納付書・領収書は、適格請求書ではありません。会計上は「法定福利費」または「預り金」での仕訳の証憑として保存しますが、消費税法上の保存義務とは無関係です。

注意:産業医報酬・健康診断費用は別

会社が独自に契約する産業医への報酬や、定期健康診断の医療機関への支払は「福利厚生費」または「外注費」として課税仕入になり、適格請求書の保存が必要です(インボイス対応の医療法人・医師に依頼することを推奨)。

よくある質問(FAQ)

Q1. 法定福利費は損金算入できますか?

はい、事業主負担分は原則として全額損金算入できます。役員・従業員の区別なく、法律に基づく拠出は損金性が認められます。

Q2. 消費税の課税仕入として処理できますか?

いいえ、非課税仕入として処理します。本則課税で申告する場合、仕入税額控除の対象外です。

Q3. 雇用保険料も「非課税」ですか?

はい、雇用保険料も消費税法6条1項・別表第二第3号により非課税です。労働者負担分・事業主負担分のいずれも同様です。

Q4. 労災保険料は事業主が全額負担ですか?

はい、労災保険料は全額事業主負担で、従業員から徴収することはできません。料率は業種別(3/1000〜88/1000)です。

Q5. 子ども・子育て拠出金とは何ですか?

児童手当・地域子ども・子育て支援事業などの財源として、事業主が日本年金機構に拠出する負担金です。全額事業主負担、料率は2026年度で0.36%。法人税法上は損金、消費税は非課税です。

Q6. 法定福利費と福利厚生費の違いは?

法定福利費は法律で義務付けられた支出(社会保険料・労働保険料)、福利厚生費は企業が任意で実施する支出(社員旅行・健康診断・慶弔見舞金など)です。消費税の取扱いも法定福利費は一律非課税ですが、福利厚生費は内容により課税・非課税が混在します。

Q7. 役員の社会保険料も法定福利費ですか?

はい、役員の社会保険料も法定福利費として処理します。会社負担分は損金、消費税は非課税です。ただし役員報酬の額によっては社会保険料の最高等級に達する点、また役員報酬の改定タイミング(事業年度開始から3か月以内)に留意が必要です。

Q8. 個人事業主の場合、法定福利費は経費になりますか?

個人事業主本人の国民健康保険料・国民年金保険料は、事業の経費(法定福利費)にはなりません。これらは確定申告で社会保険料控除として所得控除を受けます。一方、従業員を雇用している個人事業主が支払う従業員分の社会保険料・労働保険料は、事業の経費(法定福利費)として計上できます。

Q9. 健康保険料の納付書はインボイスとして保存が必要ですか?

いいえ、不要です。法定福利費は非課税取引で仕入税額控除の対象外のため、適格請求書(インボイス)の保存は消費税法上求められません。ただし、会計帳簿の証憑としては保存しましょう。

Q10. 課税売上割合の計算上、法定福利費は分母に入りますか?

いいえ、入りません。課税売上割合の分母には「非課税売上+課税売上」を算入しますが、法定福利費は非課税仕入であり、売上ではないため分母にも分子にも入りません。

まとめ

  • 法定福利費(健康保険・厚生年金・介護・雇用・労災・子ども子育て拠出金)はすべて消費税「非課税」。仕入税額控除はできない
  • 2026年度の主要料率は健康保険9.90%、厚生年金18.30%、雇用保険13.5/1000、子ども子育て拠出金0.36%
  • インボイス制度の影響なし(適格請求書は不要)。ただし産業医報酬や健康診断費用などの福利厚生費は課税仕入なので別途対応必要

法定福利費の最適化、役員報酬の社会保険料設計、福利厚生制度の構築などについて、田中将太郎公認会計士・税理士事務所では顧問先500社以上の実績を踏まえてご提案します。社会保険料の事業主負担を見据えた採用・組織設計、節税と従業員満足度を両立する制度設計をお考えの経営者の方は、ぜひお問い合わせください。

お問い合わせはこちらから。

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした"戦略税務"や売上を伸ばすための"戦略マーケティング"に強みを持つ。
経営のための"裏ワザ"情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。
プロフィール詳細へ
友だち追加

この記事をSNSでシェア・保存