青色申告・白色申告とは?
こんにちは。田中将太郎公認会計士・税理士事務所です。
確定申告には「青色申告」「白色申告」の2種類があります。そのうち「青色申告」は条件を満たしていれば控除が適応されるため節税につながり、弊社で担当させていただいているお客様でも、確定申告は青色申告を選択される方がほとんどです。
一方で「白色申告」という申告方法もございますので、今回はそれと比較しながら、どちらで申告を行うとより節税につながるかについて考えていきます。
法人と個人事業主で条件が異なるため、今回は「個人事業主」にフォーカスして解説していきます。
所要時間: 5分
- 青色申告のメリット・デメリットについて
まず、青色申告のメリット・デメリットについて説明します。
- 白色申告のメリット・デメリットについて
次に、白色申告のメリット・デメリットについて説明します。
- 青色と白色、どちらを選べばよい?
最後に、青色申告と白色申告はどちらを選べば得策かについて明確にしていきます。
青色申告のメリット・デメリットについて
まずは青色申告のメリット・デメリットについて説明していきます。
青色申告のメリットについて
青色申告のメリットは、大きく以下の5点挙げられます。
最大65万円/55万円/10万円の青色申告特別控除を受けることができる
青色申告の最大のメリットは控除が受けられるという点です。複式簿記(勘定元帳を使用する制度)を使用し、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付することで、最大65万円(または55万円)の青色申告特別控除を受けることができます。ただし、e-Taxを利用した電子申告または優良な電子帳簿保存を行わない場合、最大控除額は55万円となります。また、上記の控除を受けるには期限内申告が必要で、期限外に申告すると10万円の控除となります。
※「優良な電子帳簿保存」に当てはまるには条件があります。詳細は国税庁のHPをご覧ください。 (国税庁『優良な電子帳簿の要件』)
家族の給与を必要経費にすることができる
家族が事業を手伝っている場合、その報酬を必要経費として計上できます。ただし、この適用は青色申告者が15歳以上の配偶者や親族(高校生や大学生は除外)が事業に専念している場合に限られます。
また報酬額については、事前に税務署へ提出する「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載された金額の範囲内で、かつ「専念者の労務に対する適正な報酬である」と認められる必要があります。
この報酬額には上限はありませんが、この金額に対して源泉徴収の対象としたくない場合は「88,000円」未満に設定しましょう。
純損失の赤字を3年間繰り越すことができる
個人事業に損失が発生した場合、その損失額を翌年から3年間にわたって持ち越し、それ以降の都市の所得から差し引くことが可能です。
また、前年に青色申告を行っている場合は、損失額を前年の所得から差し引いて、所得税の還付を受けることもできます。
ただし、この繰戻し還付制度では、還付請求がある場合、その内容が調査されて還付が決定されます。したがって、税務署からの問い合わせや、場合によっては税務調査が行われる可能性があるので注意が必要です。
いずれの場合でも、青色申告の場合、事業が赤字でも、純損失の持ち越し控除や繰戻し還付を活用して所得金額を削減することができ、各年の税負担を軽減できます。
減価償却の特例を受けられる
白色申告の場合、仕事で利用するパソコンや車などの固定資産の価格が10万円以上であれば、使用期間に応じた減価償却を行わなければなりません。例えば、20万円で購入したパソコンの場合、減価償却期間は4年で、毎年5万円を経費として計上します。全額の経費計上が完了するのは4年後です。
一方で、青色申告の場合、30万円未満の固定資産については、少額減価償却資産の特例を適用し、購入年に全額を経費として計上することができます。これにより、所得金額を減少させ、結果として所得税を削減することができます。
貸倒引当金の計上が可能
事業所得を得る青色申告者は、貸倒引当金の一括評価分を必要経費として計上できます。貸倒れとは、取引先が倒産などの理由で債権を回収できなくなる状況を指します。
貸倒引当金は、貸倒損失に備え、発生する損失の予想金額を一定の割合で計算し、あらかじめ計上したものです。青色申告の場合、年末時点での金銭債権の帳簿価額の総額から、5.5%以下の金額(金融業は3.3%以下)を貸倒引当金として計上することができ、この金額は必要経費として認められます。金銭債権のうち、貸倒れによる損失の見込み額は、それぞれの理由に応じた制限額までを貸倒引当金勘定に繰り入れることが可能です。
青色申告のデメリットについて
次に青色申告のデメリットについては主に2点挙げられます。
事前に「所得税の青色申告承認申請書」の申請が必要
青色申告を行いたい場合、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。新しく事業をはじめた場合は開業から2か月以内、現在白色申告で、翌年分から青色申告に変更したい場合はその年の3月15日までに提出が必要となります。
申請書はインターネット上からダウンロードするか、税務署の窓口で受け取ることができます。事業開始から青色申告をしたいと考えている方はこちらの書類と「開業届」とセットで提出するとよいでしょう。
最大65万円・55万円の特別控除は複式簿記での記帳が必要
青色申告の中で最も手間がかかるのが、複式簿記による帳簿の管理です。
白色申告では簡易簿記が採用されており、これに比べて青色申告の最大65万円または55万円の特別控除を受けるためには、会計や事務の作業がより複雑になります。ただし、青色申告特別控除が10万円の場合、簡易簿記を使用しても問題ありませんので、帳簿付けは白色申告とそれほど変わりません。
白色申告のメリット・デメリットについて
次に、白色申告のメリット・デメリットについて説明していきます。
白色申告のメリットについて
白色申告のメリットについては、2点挙げられます。
申告方法がシンプル
白色申告も帳簿を記載する必要がありますが、簡易簿記(一つの取引について一つの科目のみ把握し記録・集計する記帳法)を使うため、青色申告より記帳が簡単に済み、比較的手続きは簡単です。確定申告も、売上や経費などを収支内訳書に記入していくシンプルなもので、専門知識がなくても容易に行うことができます。
白色申告するための届出の必要がない
青色申告を行いたい場合、開業後2カ月以内に申請が必要です。そのため、時期によっては同年の確定申告で青色申告を適用することができず、次年度からの適用となります。
一方、白色申告の場合、青色申告のように事前に税務署への申請手続きが不要ですので、時期に関係なく申告を行うことが可能です。
白色申告のデメリットについて
次に青色申告のデメリットについては主に5点挙げられます。基本的に青色申告で受けられる特典が、白色では受けることができない点がデメリットとなります。
青色申告特別控除(最高65万円)が受けることができない
青色申告においては、必要な書類を提出することで最大65万円の特別控除が適用されますが、白色申告ではこの特典は受けることができません。
青色事業専従者給与が受けられない
青色申告では、配偶者や親族に支払った「青色事業専従者給与」を必要経費として所得から差し引くことが可能ですが、白色申告ではこれが適用されません。
※ただし、白色でも「事業専従者控除」として確定申告のときに一定金額の控除を受けることが可能です。こちらは事前の申請などは不要で、確定申告の際に提出する収支内訳書の該当する欄に、必要な情報を記入して提出します。
純損失の繰越しと繰戻しができない
青色申告では、純損失の繰越しや繰戻しをすることができますが、白色申告では適用されません。
貸倒引当金を計上できない
青色申告では、貸倒引当金を経費として計上することが可能ですが、白色申告では計上することはできません。
少額減価償却資産の特例を使えない
青色申告では特定の条件を満たすことで、30万円未満の減価償却資産について、購入年度における経費として全額計上することができますが、白色申告ではこの特例を適用することはできません。
青色と白色、どちらを選べばよい?
最後に、青色申告と白色申告はどのような人がどちらを選べば適切かを明確にしていきます。
青色申告を選ぶべき場合
以下2点いずれかに当てはまる場合は、青色申告を選択するのが適切だと考えられます。
- 現在白色申告で事業をしている方で、上述した特典を受けたい現在白色申告で事業をしている方で、上述した特典を受けたい方
- 帳簿の作成について抵抗がなく、節税したい方
青色申告のデメリットとしては帳簿の作成が大変というところぐらいで、青色申告の方が節税に関しては様々な特典を受けることができます。節税というところに論点を置けば、現在白色申告を選択している方は青色申告への切り替えがおすすめです。
白色申告を選ぶべき場合
一方で、以下2点いずれかに当てはまる場合は、白色申告を選択するのが適切だと考えられます。
- 細かく帳簿をつけることに抵抗がある、もしくはあまり手間をかけたくない
- 事業を新たに始めたばかりで収益が限られている個人の方や、赤字を出している場合
- 事業専従者控除を受けたい方
青色申告の帳簿の作成については、弊社でも帳簿の作成を承っておりますのでお気軽にお問合せください。
また、事業を新たに始めたばかりで収益が限られている個人の方や、赤字を出している場合には、特典が制限されるため、手続きが簡便な白色申告が適しているといえます。
事業専従者控除は実際に事業専従者に給与を払っていなくても控除を受けることができますので、金銭的に余裕がない方はこちらの制度を使用するのがおすすめです。