食事代の勘定科目は3つ!福利厚生費・会議費・交際費の判定方法を公認会計士が解説【2024年改正対応】

「取引先との会食は経費にできる?」「社内のランチミーティングはどの勘定科目?」――食事代の経費処理は、多くの経営者・経理担当者が悩むテーマです。
食事代を経費にする場合、使える勘定科目は「福利厚生費」「会議費」「交際費」の3種類。どの科目を使うかは、誰と食べたか・目的は何か・金額はいくらかの3つの要素で決まります。
なお、2024年4月の税制改正で、会議費と交際費を分ける金額基準が1人あたり5,000円から10,000円(税抜)に引き上げられました。この改正を知らないまま経費処理をすると、本来「会議費」にできる支出を「交際費」に計上してしまい、損金不算入で余計な税負担が発生する可能性があります。

食事代って、毎回どの勘定科目にすればいいか迷います…










判断のポイントは3つだけ。「誰と?」「目的は?」「金額は?」を確認すれば、ほぼ自動的に決まるよ。この記事で一つずつ解説するね。
この記事では、公認会計士・税理士として実務に携わる僕が、食事代・飲食代の勘定科目の判定方法を、仕訳例や税務調査の注意点まで含めて徹底解説します。
食事代の勘定科目は3種類 — 判定の考え方
食事代を経費にするための大前提は、「ビジネスに関連する支出であること」です。プライベートの食事は当然ながら経費にはなりません。
ビジネス関連の食事代に使える勘定科目は、次の3種類です。
| 勘定科目 | 誰と? | 主な目的 | 金額基準 |
|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 従業員(おおむね全員) | 従業員への食事提供・社内行事 | 会社負担 月額3,500円以下(税抜) |
| 会議費 | 社内・社外問わず | 会議・打ち合わせに伴う飲食 | 1人あたり10,000円以下(税抜) ※2024年4月改正 |
| 交際費 | 得意先・仕入先等 | 接待・供応・慰安・贈答 | 1人あたり10,000円超 |
この3つの勘定科目を正しく使い分けるためのポイントは、以下の3つの質問です。
- 誰と食事をしたか? → 従業員全体か、特定の取引先か
- 食事の目的は? → 福利厚生・会議・接待のどれか
- 1人あたりの金額は? → 10,000円(税抜)以下か超か
以下のセクションで、それぞれの勘定科目の要件・金額基準・仕訳例を詳しく解説していきます。
「福利厚生費」になる食事代
福利厚生費は、従業員の福利厚生を目的とした支出に使う勘定科目です。食事代を福利厚生費として処理するには、一定の要件を満たす必要があります。
福利厚生費の要件(従業員におおむね一律に提供)
食事代を福利厚生費とするための最も重要な要件は、「従業員におおむね一律に」食事を提供することです。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 社員食堂の運営費
- 仕出し弁当の提供(全従業員が対象)
- 残業時の夜食代
- 忘年会・新年会・歓迎会(従業員全員が参加対象)




社長と役員だけの食事会は福利厚生費にできないの?










できないよ。「おおむね一律」がポイントで、特定の役員・従業員だけを対象にした食事代は、福利厚生費としては認められないんだ。その場合は交際費や給与として扱われる可能性があるよ。
金額基準 — 月額3,500円ルール
会社が従業員に食事を支給する場合、次の2つの要件を両方とも満たせば、従業員に対する給与課税はなく、会社は福利厚生費として処理できます(国税庁タックスアンサーNo.2594)。
- 従業員が食事代の50%以上を負担していること
- 会社の負担額が月額3,500円(税抜)以下であること
例えば、1か月の食事代が6,000円で従業員が3,500円を負担し、会社が2,500円を負担する場合は、上記の要件を満たすため福利厚生費として処理できます。
なお、現金で食事代を支給する場合は金額にかかわらず給与として課税されます。あくまで食事の現物支給(弁当の提供や社員食堂の利用など)が対象です。
仕訳例
【例】従業員に月額6,000円(税抜)の弁当を提供し、従業員が3,500円を負担、会社が2,500円を負担するケース
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 福利厚生費 | 2,500円 | 現金 | 2,500円 |
【例】忘年会の費用30万円を会社が全額負担(従業員50名全員参加)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 福利厚生費 | 300,000円 | 現金 | 300,000円 |
よくある失敗パターン
税務調査で福利厚生費が否認されやすいケースをまとめました。
- 役員だけの食事会を福利厚生費にしている → 特定の者のみが対象のため、交際費または役員給与として否認される
- 現金で食事代を支給して福利厚生費にしている → 現金支給は給与課税の対象
- 会社負担が月額3,500円を超えている → 超過分ではなく全額が給与課税の対象になる
- 一部の従業員のみが対象 → 「おおむね一律」の要件を満たさない
「会議費」になる食事代
会議費は、会議・打ち合わせに伴って提供される飲食費に使う勘定科目です。社内ミーティングのランチ代から、取引先との打ち合わせ時のカフェ代まで幅広く使えます。
会議費の要件
食事代を会議費として処理するための要件は、以下の通りです。
- 会議・打ち合わせの実態があること(議事録の作成を推奨)
- 飲食が会議に付随するものであること(飲食が主目的ではないこと)
- 飲食費が社会通念上妥当な金額であること
- 社内・社外のいずれの相手とでも使える
金額基準 — 1人1万円以下【2024年改正】
2024年(令和6年)4月1日以降に支出する飲食費について、1人あたり10,000円以下(税抜)であれば、交際費等から除外され、会議費として全額損金算入できます。
| 旧基準(〜2024年3月) | 新基準(2024年4月〜) | |
|---|---|---|
| 金額基準 | 1人あたり5,000円以下(税抜) | 1人あたり10,000円以下(税抜) |
| 損金算入 | 交際費等から除外(全額損金) | 交際費等から除外(全額損金) |










この改正はかなりインパクトが大きいよ。実務上、取引先との食事で1人5,000円を超えることは多かったけど、1万円以下なら会議費にできるようになった。損金不算入のリスクがかなり減ったんだ。
この規定の根拠は、租税特別措置法第61条の4です。詳細は国税庁タックスアンサーNo.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」をご確認ください。
なお、会議費として処理するためには、以下の事項を帳簿書類に記載・保存する必要があります。
- 飲食等の年月日
- 飲食等に参加した得意先・仕入先等の氏名・名称およびその関係
- 飲食等に参加した者の人数
- 飲食費の金額ならびに飲食店等の名称・所在地
- その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
仕訳例
【例】取引先との打ち合わせでカフェ利用(2名で8,800円・税込、1人あたり4,000円・税抜)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 会議費 | 8,000円 | 現金 | 8,800円 |
| 仮払消費税 | 800円 |
【例】社内チームのランチミーティング(5名で33,000円・税込、1人あたり6,000円・税抜)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 会議費 | 30,000円 | 現金 | 33,000円 |
| 仮払消費税 | 3,000円 |





1人あたり6,000円でも会議費にできるんですね!前は5,000円超だと交際費だったのに。










そうだよ。2024年4月以降は1人1万円以下なら会議費でOK。ただし、会議の実態がないのに「形だけ会議費」にするのはNG。税務調査で否認されるリスクがあるから注意してね。
個人事業主の場合の注意点
個人事業主の場合、法人と異なり交際費の損金算入制限がありません。つまり、事業に関連する食事代であれば、金額に関係なく全額を経費にできます。
ただし、以下の点には注意が必要です。
- 事業関連性の証明が必要:プライベートの食事と明確に区別すること
- 領収書・メモの保存:誰と・何の目的で食事をしたか記録を残すこと
- 1人での食事は原則NG:自分だけの食事は生活費とみなされやすい
- 家事按分:自宅兼事務所の場合、食事代は事業部分のみ経費計上
個人事業主が食事代を経費にする場合の勘定科目は、会議に伴うものなら「会議費」、接待目的なら「接待交際費」として処理するのが一般的です。
「交際費」になる食事代
交際費は、得意先・仕入先等の事業関係者に対する接待・供応・慰安・贈答に使う勘定科目です。食事代の中でも金額が大きいものや、接待目的のものが該当します。
交際費の定義
法人税法上の交際費等とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と定義されています(租税特別措置法第61条の4)。
具体的には、以下のようなケースが交際費に該当します。
- 得意先を接待するための飲食(1人あたり10,000円超・税抜)
- 取引先のゴルフコンペ後の懇親会
- 仕入先との接待を目的とした高級レストランでの食事
- お中元・お歳暮などの贈答品
1人1万円超の飲食は交際費
2024年4月1日以降、飲食費の1人あたりの金額が10,000円(税抜)を超える場合は、原則として交際費として処理します。
| 1人あたり金額(税抜) | 勘定科目 | 備考 |
|---|---|---|
| 10,000円以下 | 会議費(損金算入可) | 帳簿に所定事項を記載する必要あり |
| 10,000円超 | 交際費(損金算入に制限あり) | 損金算入限度額の適用あり |
交際費の損金算入限度額(資本金別に解説)
交際費は、原則として法人税の計算上、損金に算入できません。ただし、以下の特例措置が設けられています。
| 区分 | 損金算入限度額 |
|---|---|
| 資本金1億円以下の法人 | 以下のいずれか有利な方を選択 (1)年間800万円まで全額損金算入 (2)飲食費の50%を損金算入 |
| 資本金1億円超 100億円以下の法人 | 飲食費の50%を損金算入 |
| 資本金100億円超の法人 | 損金算入不可(全額損金不算入) |




中小企業なら800万円まで全額損金にできるんですね。










そうだね。資本金1億円以下の中小企業は実質的に年800万円まで交際費を全額経費にできるよ。ただし、800万円を超える部分は損金不算入になるから、交際費の使いすぎには注意が必要だよ。
参考:国税庁タックスアンサーNo.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
仕訳例
【例】取引先を接待(4名で110,000円・税込、1人あたり25,000円・税抜)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 交際費 | 100,000円 | 現金 | 110,000円 |
| 仮払消費税 | 10,000円 |
【例】得意先へのお歳暮(5,000円・税込)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 交際費 | 4,546円 | 現金 | 5,000円 |
| 仮払消費税 | 454円 |
【実務ポイント】税務調査で指摘されやすい飲食費の注意点
飲食費は税務調査で最も指摘されやすい経費科目の一つです。僕がクライアントの税務調査に立ち会った経験からも、以下の3つのポイントは特に注意が必要です。
領収書に記載すべき5項目
1人あたり10,000円以下の飲食費を会議費として処理するためには、帳簿書類に以下の5項目を記載して保存する必要があります(租税特別措置法施行令第37条の5)。
| No. | 記載すべき事項 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1 | 飲食等の年月日 | 2026年4月5日 |
| 2 | 参加した得意先等の氏名・名称と関係 | 株式会社ABCの山田太郎部長(仕入先) |
| 3 | 参加した者の人数 | 4名(自社2名、先方2名) |
| 4 | 飲食費の金額、飲食店の名称・所在地 | 30,000円、○○レストラン(東京都港区…) |
| 5 | その他必要な事項 | 新商品の企画ミーティング |










領収書の裏に「誰と・何人で・何の目的で」をメモする習慣をつけるだけで、税務調査の対応がぐっと楽になるよ。面倒でも、その場で書くのがベスト。
1人1万円の判定方法(消費税の扱い)
1人あたり10,000円以下かどうかの判定は、その法人の経理処理方式によって異なります。
| 経理方式 | 判定基準 | 例(3名で33,000円・税込の場合) |
|---|---|---|
| 税抜経理方式 | 税抜金額で判定 | 30,000円 ÷ 3名 = 10,000円 → 会議費OK |
| 税込経理方式 | 税込金額で判定 | 33,000円 ÷ 3名 = 11,000円 → 交際費 |
税抜経理方式を採用している法人の方が有利になるケースがあります。自社の経理方式を確認しておきましょう。





同じ金額でも、経理方式で会議費になったり交際費になったりするんですか?










そうなんだ。だから税抜経理方式を採用していれば、1人あたりちょうど1万円(税抜)の飲食なら会議費にできる。税込経理だと11,000円になるから交際費になってしまう。この違いは意外と大きいよ。
二次会・三次会の取り扱い
一次会と二次会(三次会)は、それぞれ別々の飲食として判定します。
- 一次会:1人あたり10,000円以下(税抜)→ 会議費で処理可能
- 二次会:1人あたり10,000円以下(税抜)→ 会議費で処理可能(ただし、会議の実態がある場合)
- 合算して判定する必要はない(一次会と二次会で別々の領収書を取得すること)
ただし、二次会以降は「接待」の色合いが強くなるため、税務調査では会議の実態について詳しく確認されることがあります。二次会を会議費として処理する場合は、特に会議の目的と内容の記録を残しておくことが重要です。
まとめ — 食事代の勘定科目 判定チェックリスト
食事代の勘定科目を正しく判定するためのチェックリストをまとめました。
| チェック項目 | 福利厚生費 | 会議費 | 交際費 |
|---|---|---|---|
| 対象者 | 従業員(おおむね全員) | 社内・社外問わず | 得意先・仕入先等 |
| 目的 | 従業員の福利厚生 | 会議・打ち合わせ | 接待・供応・慰安 |
| 金額基準 | 月額3,500円以下(税抜) 従業員50%以上負担 | 1人10,000円以下(税抜) ※2024年4月改正 | 1人10,000円超(税抜) |
| 損金算入 | 全額損金算入 | 全額損金算入 | 資本金による制限あり |
| 記録要件 | 通常の帳簿記載 | 5項目の帳簿記載が必要 | 通常の帳簿記載 |










迷ったときは「誰と・何のために・いくらで」の3つを確認しよう。この3つがわかれば、正しい勘定科目は自然と決まるよ。
食事代の経費処理は、正しく行えば節税効果が大きい反面、間違えると税務調査で否認されるリスクもあります。特に2024年4月の改正で金額基準が変わっているため、最新の基準で処理するようにしましょう。
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