小規模宅地等の特例とは
こんにちは。田中将太郎公認会計士・税理士事務所でございます。
今日は、被相続人と一緒に住んでいた家を相続したときにその家の土地に係る評価額が減額される特例について解説していきます。
所要時間: 3分
- 小規模宅地等の特例の対象となる土地の種類と要件
まずは、特例の対象となる土地の種類と要件について解説します。
- 小規模宅地等の特例の申告要件等
次に、小規模宅地等の特例の申告要件について解説します。
- 小規模宅地等の特例の限度面積と減額割合
次に、小規模宅地等の特例の限度面積と減額割合について解説します。
- 小規模宅地等の特例と相続時精算課税制度
最後に、小規模宅地等の特例と相続時精算課税制度について解説します。
小規模宅地等の特例の対象となる土地の種類と要件
小規模宅地等の特例の対象となる土地の種類と要件は以下の通りです。
①特定居住用宅地(実際に住んでいた土地)
②特定事業用宅地等(事業を行っていた土地)
③貸付事業用宅地等(賃貸していた土地)
特定居住用宅地(実際に住んでいた土地)
特定居住用宅地等とは、被相続人や被相続人と生計を一にしていた親族が相続開始直前まで住んでいた土地です。
親が被相続人の場合は、親の自宅がある土地が該当します。
なお、土地建物を取得する人によって、以下の要件が定められております。
(1)配偶者
要件無し(住んでいなくても適用あり)
(2)被相続人と同居していた親族
①被相続人と同じ家に住んでいたこと
②相続税の申告期限までその家に住み、保有し続けること
(3)上記以外(家なき子特例)
以下の要件を全て満たす場合に適用されます。
①被相続人に配偶者も同居親族もいない
②相続人が3年以内に自己所有の家に住んだことがない
③相続人が3年以内に3親等以内の親族の家に住んでいない
④相続人が3年以内に特別な関係の法人が持つ家に住んでいない
⑤相続人が相続開始時に住んでいる家を過去所有したことがない
⑥相続人が相続税の申告期限までに土地を売却していない。
※要介護認定等を受け、老人ホーム(都道府県知事へ届出がされている施設)に入居していた場合は自宅が賃貸に出していないときには適用を受けることができます。
特定事業用宅地等(事業を行っていた土地)
特定事業用宅地等とは、被相続人や被相続人と生計を一にしていた親族が事業(貸付事業を除く)に使っていた土地が該当します。
なお、土地を取得する人については、下記の要件が定められております。
- 事業継続要件・・・宅地等の上で営まれていた被相続人または相続人の事業の用に供されていた宅地等で、申告期限までその事業を営んでいること
- 保有継続要件・・・その宅地等を申告期限まで保有していること
貸付事業用宅地等(賃貸していた土地)
貸付事業用宅地等とは、相続開始の直前において、被相続人や同一生計親族が賃貸マンションやアパート、貸駐車場等の貸付事業のために使用していた宅地等のことです。
なお、土地を取得する人については、下記の要件が定められております。
- 貸付事業を相続税の申告期限までに続け、保有すること
- 同一生計親族が貸付事業を行っている場合は被相続人からその同一生計親族に土地・建物の地代・家賃を支払っていないこと
※相続開始前3年以内に不動産貸付業を始めた土地が貸付事業用宅地等の特例の対象外となります。
ただし、相続開始前3年前よりも以前から事業的規模で貸付事業をおこなっていた場合は、3年以内に不動産貸付業に使い始めた土地であっても貸付事業用宅地等の特例を適用することができます。
ここでいう「事業的規模」とは、所得税の不動産所得に係る事業的規模の判定基準と同等の5棟10室基準が想定されているようです。
小規模宅地等の特例の申告要件等
小規模宅地等の特例の適用を受けるためには申告期限までに遺産分割協議が成立し、申告期限までに一定の書類を添付した申告書を提出した場合に適用が受けられます。
なお、申告期限までに遺産分割協議が成立しなかった場合はに、「申告期限後3年以内の分割見込協議書」を事前に提出しておくことで遺産分割が成立した後に「更正の請求」をすることで特例の適用が受けられます。
また添付書類の主なものは下記の通りです。
- マイナンバーカード(マイナンバーがない場合は住民票写しまたは通知カードの写し等でも代用できます。)
- 法定相続情報一覧図の写し
- 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
- すべての相続人の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
小規模宅地等の特例の限度面積と減額割合
小規模宅地等の特例の限度面積と減額割合は下記表の通りとなります。
なお、限度面積を超えた土地の場合は全部が対象外ということではなく限度面積部分までが減額の対象となります。
小規模宅地等の特例と相続時精算課税制度
相続時精算課税制度を利用して贈与した土地に対して小規模宅地等の特例を適用することはできません。
小規模宅地等の特例を適用するには、土地を相続又は遺贈により取得している必要があります。相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合、相続又は遺贈で取得したのではなく、贈与によって土地を取得したことになりますので、小規模宅地等の特例の対象外となります。
相続時精算課税制度で土地を贈与した場合には、小規模宅地等の特例が適用されなかったり等、効果的な相続税対策をおこなうには、相続に関するあらゆる規定を十分に理解している必要があるでしょう。
まとめ
相続税の小規模宅地等の特例について、その概要を解説しました。
小規模宅地等の特例は節税効果が大きく、積極的に活用したい制度ですが、小規模宅地等の特例は、間違えが許されません。
「もっと有利に小規模宅地等の特例を使えたのに!」と申告後に思っても後から修正ができないという非常に怖い特例でもあるのです。
したがって、小規模宅地等の特例を適用する場合には専門の税理士に依頼してしまったほうが良いでしょう。
また、近年の改正により、税法の裏をかくような手法はできなくなっていますので、計画的に相続税対策を進めることが重要です。
申告時の手続きも複雑なので、悩んだらすぐに税理士に相談することをおすすめします。