倒産防止共済(経営セーフティ共済)のメリットと効果的な活用方法

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倒産防止共済(経営セーフティ共済)のメリットと効果的な活用方法

倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、うまく活用することで法人にとって非常にメリットのある節税施策になりますが、使い方を間違えると大きく損してしまう可能性もあります。

そこで、本記事では、倒産防止共済(経営セーフティ共済)のうまい使い方について解説していきます。

またYoutube動画でも詳しく解説していますので、ご覧ください。

1. 倒産防止共済とは何か?

倒産防止共済、正式には「中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)」は、中小企業や個人事業主が経営上のリスクを軽減し、取引先の倒産に伴う連鎖倒産や経営の悪化を防ぐための制度です。

この制度は、中小企業者が自らの経営を守るために予防的な手段として利用されるもので、万が一の事態が起こった際に非常に有用です。

倒産防止共済に加入することで、事前に積み立てを行い、取引先が倒産した際に、迅速に資金を確保することができます。

特に中小企業は、1社や2社の主要取引先が倒産するだけで大きな打撃を受けることがあり、これを未然に防ぐための保険的な役割を果たしています。

2. 倒産防止共済の具体的な仕組み

倒産防止共済は、最大で800万円までの積立を行うことが可能です。

そして、取引先が倒産した場合やその他の理由で経営が悪化した場合には、その積立金の最大10倍、すなわち8,000万円まで無担保・無保証で借入が可能です。

これは、中小企業が急な資金繰りに困った際に、即座に資金を確保できるための強力な手段となります。

借入れの際の手続きも簡素化されており、通常の銀行融資とは異なり、倒産防止共済による借入れは、よりスムーズかつ迅速に行われるのが特徴です。

これは、突然の経営危機に直面した際に大きな助けとなるだけでなく、事業の継続性を保つために極めて重要です。

3. 節税効果としての倒産防止共済

倒産防止共済の最大の魅力の一つは、税務上の節税効果があることです。掛金を拠出した場合、その金額は全額損金算入され、法人税の課税所得を圧縮することができます。

例えば、年間最大で240万円まで掛金を拠出できるため、その年の利益を圧縮し、結果として法人税の負担を軽減することが可能です。

具体的には、法人税率33%の企業であれば、最大で約80万円(=掛金240万円×法人税率33%)の節税効果が期待できます。

このように、倒産防止共済は将来的なリスクヘッジとして活用できるだけでなく、短期的にも利益を圧縮し、税負担を減らすためのツールとしても非常に効果的です。

4. 掛金の取り崩しと税務上の注意点

しかし、倒産防止共済の掛金を取り崩す際には注意が必要です。

将来的に積み立てた掛金を引き出す場合、その引き出し額は益金として計上されるため、その年度において課税対象となります。

そのため、取り崩しのタイミングによっては、思わぬ税負担が発生する可能性があります。

このような場合、役員退職金の支給など、大きな費用を同じ年度に計上することで、益金の増加を相殺し、税負担を抑えることが可能です。

このように、倒産防止共済を最大限に活用するためには、取り崩すタイミングや、その際の費用の計上方法を慎重に計画する必要があります。

5. 倒産防止共済の活用タイミング

倒産防止共済は、掛金の拠出時期を戦略的に選ぶことが重要です。

特に、中小企業の場合、利益が800万円を超える部分については法人税率が33%に引き上げられるため、利益が800万円を超えた年度に掛金を拠出することで、より大きな節税効果を得ることができます。

例えば、利益が800万円以下の年度では法人税率が25%であるのに対し、利益が800万円を超える部分については33%の税率が適用されます。

そのため、倒産防止共済の掛金を利益が800万円を超えた範囲で拠出することにより、節税効果を最大化することができるのです。

逆に、利益が少ない年度に無計画に掛金を拠出してしまうと、将来的に掛金を取り崩す際に余分な税負担が発生する可能性があるため、注意が必要です。

節税対策として倒産防止共済を活用する際は、税理士などの専門家と相談しながら、拠出のタイミングを計画的に選定することが重要です。

6. 倒産防止共済を活用したリスクマネジメント

倒産防止共済は、取引先の倒産リスクを軽減するための制度として、リスクマネジメントの一環としても非常に有用です。

特に、中小企業は大手企業に比べて経営基盤が脆弱な場合が多く、1社でも主要取引先が倒産すると、大きな打撃を受けることがあります。

このようなリスクに対処するために、倒産防止共済を活用することは、経営の安定化を図る上で非常に効果的です。

また、倒産防止共済は、積み立てた掛金を流動資産として活用することができるため、企業のキャッシュフローの安定化にも寄与します。

これは、急な資金ニーズが発生した際にも柔軟に対応できる財務戦略の一環として活用されるべきです。

7. 倒産防止共済の計画的な運用とプロのサポート

倒産防止共済を最大限に活用するためには、企業の財務状況や今後の経営計画を踏まえた上で、計画的に運用することが重要です。

無計画に掛金を拠出してしまうと、逆に税負担が増加する可能性があるため、注意が必要です。また、取り崩しのタイミングや、退職金などの費用を計上する際の戦略も重要です。

倒産防止共済を活用する際は、税理士や経営コンサルタントなどの専門家と相談しながら、最適なタイミングと金額を計画的に設定することが求められます。

税務面だけでなく、資金繰りやキャッシュフローの安定化を図るためにも、専門家のアドバイスを受けることが企業の長期的な成功に繋がるでしょう。

8. まとめ:倒産防止共済の賢い活用法

倒産防止共済は、経営の安定化を図るための強力なツールであり、同時に節税効果を得ることができる制度です。

しかし、その効果を最大化するためには、税務や財務に関する十分な知識と計画的な運用が必要です。

税理士などの専門家と連携し、倒産防止共済を賢く活用することで、企業のリスクを最小限に抑えつつ、利益を最大化することが可能です。

このように、倒産防止共済はリスクマネジメントと節税効果の両方を提供する優れた制度ですが、その効果を十分に引き出すためには専門家の助言を受けながら、計画的に運用することが重要です。

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
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