令和6年度補正予算「IT導入補助金」について

令和6年12月、令和6年度補正予算が成立しました。

中小企業・小規模事業者に関する令和6年度補正予算では、ポイントとして5つの重点的項目が掲載されています。

  1. 持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援
  2. 価格転嫁対策の強化
  3. 資金繰り支援、経営改善・事業再生・再チャレンジ支援
  4. 中小企業・小規模事業者活性化
  5. 災害からの復旧・復興

今回は「1.持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援」に含まれる「IT導入補助金」に着目します。

「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」については、こちらの記事で解説しています。

IT導入補助金

本補助金は、中小企業や小規模事業者等がITツール導入によって生産性向上を支援することが目的です。

この補助金には「通常枠」「複数社連携IT導入枠」「インボイス枠 インボイス対応類型」「インボイス枠 電子取引類型」「セキュリティ対策推進枠」の5つの枠が準備されています。事業総額の2分の1から補助され、最大で5分の4(450万円)まで補助されます。

補助の対象となるのは、IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用となっています。自社とIT導入支援事業者がタッグを組んで事業を行う点が、特徴となる補助金です。

IT導入支援事業者とは

ITツールの導入により生産性の向上を目指す中小企業・小規模事業者等と共に事業を実施するパートナーとして、中小企業・小規模事業者等に対するITツールの説明、導入、運用方法の相談等のサポート及び、補助金の交付申請や実績報告等の事務局に提出する各種申請・手続きのサポートを行う事業者であり、事務局に登録申請を行い、事務局及び外部審査委員会による審査の結果、採択された者を指します。

対象となる経費

ソフトウェア購入費、導入関連費のみです。

採択事例では「オンレインレッスン予約ツール」「ECサイト」「CADツール」「クラウド会計ツール」「電子カルテツール」などがあります。

申請の流れ

以下の通りです。

  1. IT導入支援事業者・ITツールの選定(契約ではありません)
  2. gBizIDプライムの取得
  3. IT導入支援事業者による「申請マイページ」招待
  4. 申請マイページの開設:申請者情報入力
  5. IT事業者ポータル:IT導入支援事業者による事業計画、ITツール情報の入力・申請内容確認
  6. 申請マイページ:ITツール情報の確認・事業計画の確認・宣誓
  7. 申請マイページ:申請者から事務局へ交付申請提出(交付申請完了)

審査のポイント

補助金の審査には加点項目(減点項目)があります。以下に項目を列挙しますので、得点を稼ぎましょう。

  1. 地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得していること。
  2. 交付申請時点で地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していること。
  3. 導入するITツールとしてクラウド製品を選定していること。
  4. 導入するITツールとして「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を選定していること。
  5. 導入するITツールとしてインボイス制度対応製品を選定していること。
  6. 補助金申請額150万円未満の申請者であって、事業計画期間において、以下の要件をすべて満たす3年の事業計画を策定し、実行していること。
    • 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。
    • 事業計画期間において、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上向上させること。
    • ※なお、上記に加え、事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+50円以上の水準にした場合、更なる加点を行う。
  7. 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+50円以上の水準にしていること。
  8. 「健康経営優良法人」に認定された事業者であること
  9. 「地域DX促進活動支援事業」における支援コミュニティ・コンソーシアムから支援を受けた事業者であること
  10. 介護保険法に基づくサービスを提供する事業所で、介護職員等特定処遇改善加算を取得しているものを運営している法人。
  11. 応募申請時点で、以下のいずれかに該当すること。
    • 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定(えるぼし1段階目~3段階目又はプラチナえるぼしのいずれかの認定)を受けている者
    • 次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定(くるみん、トライくるみん又はプラチナくるみんのいずれかの認定)を受けた者

申請の要件

公募要領には20項目ほど記載がありますが、主要な申請要件は以下になります。

(1)労働生産性を向上させる計画を策定し、実行すること。労働生産性を年+3.0%以上向上させること。

労働生産性とは、各補助金で定義は異なりますが、おおむね以下のとおりです。

  • 労働生産性=付加価値額÷(従業員数×年間の勤務時間平均)
  • 従業員数(正規雇用、契約社員、パート、アルバイトの合計人数)
  • 年間の勤務時間平均(全従業員の勤務時間を平均した1人当たりの勤務時間)

※付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費 

人件費=いわゆる「給料」に関するもの(賞与や役員報酬も含む)に加え、退職金や福利厚生費、法定福利費なども含まれます。

(2)IT導入支援事業者と確認を行ったうえで、生産性向上に係る情報(営業利益、人件費、減価償却費、従業員数及び就業時間、給与支給総額*、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)等)を事務局に報告すること。

(*)給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)をいう。

(3)「みらデジ経営チェック」を行うこと

(4)賃金引き上げ計画を策定し従業員に表明していること

現時点では公募時期は公開されておりません。申請方法は電子申請になる予想です。

税金による補助金なので多くの制約事項・提出書類がありますが、事業拡大に資する補助金であるといえます。

今から計画を練り、公募開始と同時に申請できるよう準備を進めていきましょう。弊所では事業着手前から補助金のサポートを行っていますので、お気軽にお問い合わせください。

※本記事は過去の公募要領を参考に作成しています。申請の際は最新の公募要領を確認するよう、お願いいたします。

(出典:中小企業庁

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
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