「受動喫煙防止対策助成金」で賢く喫煙環境を整備しよう(2026/1/31締切)

法改正により、多くの企業で対応が求められる受動喫煙対策。特に喫煙所の設置や改修には、費用面で頭を抱えている事業主の方もいらっしゃるかもしれません。
ご安心ください! 職場での受動喫煙防止対策を進める中小企業事業主を支援するため、「受動喫煙防止対策助成金」が用意されています。
この助成金を活用すれば、喫煙専用室の設置・改修にかかる費用の一部を国がサポートしてくれます。
本記事では、この助成金の目的から、気になる補助金額、対象となる事業者、具体的な補助対象事業・経費、そして申請から受給までの流れ、さらには申請時の注意点まで、詳しく解説します。
クリーンな職場環境を実現し、従業員の健康を守るために、この助成金を賢く活用しませんか? ぜひ最後までお読みいただき、貴社の受動喫煙対策にお役立てください。
受動喫煙防止対策助成金
目的
健康増進法の改正により、2020年4月から原則屋内禁煙が義務化されました。職場での受動喫煙防止対策を進める事業者の方々を支援するため、「受動喫煙防止対策助成金」が用意されています。
この助成金は、中小企業事業主が受動喫煙防止のための施設設備を整備する費用の一部を支援することで、事業場における受動喫煙防止対策を推進することを目的としています。
具体的には、屋内の事業場で喫煙が可能な場所を、喫煙専用室などに限定し、労働者の受動喫煙を防止することを趣旨としています。
補助金額、補助率
上限額:100万円
助成率:
- 主たる産業分類が飲食店の事業者: 助成対象経費の2/3
- それ以外の事業者: 助成対象経費の1/2
留意事項:
喫煙室等の単位面積当たりの助成対象経費の上限額は60万円/㎡です。これを超える場合、合理的な理由が認められない限り、上限額までしか助成金が交付されません。
例えば、飲食店以外の事業場で3㎡の喫煙専用室設置に300万円かかる場合、助成対象経費は180万円(3㎡×60万円/㎡)までしか認められず、助成額は180万円×1/2=90万円となります。
補助対象者
以下のすべての要件を満たす中小企業事業主が対象です。
(1)労働者災害補償保険の適用を受ける事業者
以下のいずれかの中小企業事業主の要件に該当する。
- 小売業、飲食店、配達飲食サービス業:常時雇用する労働者数50人以下または資本金5,000万円以下
- 物品賃貸業、宿泊業、娯楽業、医療・福祉、複合サービス業など:常時雇用する労働者数100人以下または資本金5,000万円以下
- 卸売業:常時雇用する労働者数100人以下または資本金1億円以下農業、林業、漁業、建設業、製造業、運輸業、金融業、保険業など(その他の業種):常時雇用する労働者数300人以下または資本金3億円以下
- ※労働者数か資本金等のどちらか一方の条件を満たせば中小企業事業主となります。
- ※個人経営や法律に基づき設置された団体で資本金等の定めがない場合は、労働者数で判断します。
- ※複数の事業場を持つ場合、企業全体の資本金または労働者数の合計が中小企業要件を満たせば、各事業場が対象となります。
(2)事業場内において、措置を講じた区域以外を禁煙とする事業者
ただし、宿泊施設の客室など健康増進法の適用除外の場所は、全面禁煙とすることは交付の条件として求められません。
(3)健康増進法で定める「既存特定飲食提供施設」を営む事業者
以下の3つの要件をすべて満たす施設が該当します
- 2020年4月1日時点で現に存在する飲食店。
- 資本金5,000万円以下。
- 客席面積100㎡以下。
補助対象事業
助成の対象となる措置
以下のいずれか、またはそれらの組み合わせです。
(1)喫煙専用室の設置・改修 (既存特定飲食提供施設)
喫煙以外の目的(飲食、休憩など)での使用は認められません。原則として、椅子(座る用途)、灰皿用テーブル、たばこ自販機、清掃用具以外の設置も認められません。
(2)指定たばこ専用喫煙室の設置・改修 (既存特定飲食提供施設)
指定たばこ(加熱式たばこ)のみ喫煙が認められ、飲食も可能です。紙巻たばこの喫煙は認められません。
いずれの措置も、以下の技術的基準に適合する必要があります
- 出入口における風速が0.2m/秒以上。扉を完全に開放した状態でこの基準を満たす必要があります。
- 煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井などによって区画されていること。
- 煙を屋外または外部の場所に排気すること。
その他の対象となるケース
過去にこの助成金を受けたことのない事業場であれば、既存の喫煙室を要件に合うように改修する場合も対象です。
複数の喫煙室を同時に申請すれば、すべて助成対象となりますが、上限額は1事業場あたり100万円です。
従業員専用や顧客専用の喫煙室も対象です。
補助対象経費
喫煙専用室等の設置・改修にかかる以下の費用が対象となります。
- 工費: 電気工事、建築工事、配管工事などに係る人件費、材料費、運搬費、設計費(喫煙専用室等の性能に直接寄与する部分)、管理費など。
- 設備費:換気装置、空気清浄装置、人感センサー、ガラリ、給気扇、差圧式吸気口など。
- 備品費:喫煙区域と非喫煙区域を隔てるためのパーティション、ドア、エアカーテン、照明機器、灰皿、出入口に取り付けるのれん(喫煙室等に据え付けて使用するものに限る)など。
- 機械装置費:消防法等の他法令で設置が義務づけられている機械装置など。
- 特別に認められる場合:建物の増設費用(喫煙専用室等の設置に必要な場合)、既存施設の解体・移設に係る経費(受動喫煙防止に直接資すると認められる合理的な場合)、空気調和設備(エアコン等)(設置の必要性が認められる場合)、要件確認のための測定費用。
補助対象外経費
以下の費用は助成対象外です
- デザイン料(外観や内装など、受動喫煙防止に直接寄与しない部分)。
- 申請書作成費用、見積書作成費用、申請代行費用(社会保険労務士への報酬など)。
- 喫煙区域内を区切るためのパーティション、ドア、エアカーテン(受動喫煙防止効果に寄与しないもの)。
- 消耗品(機械装置等の購入時に付属しているものを除く)。
- 映像機器、音響機器、絵画、観葉植物、本棚、机、椅子(固定式も含む)。
- 喫煙専用室の出入口前に設ける部屋(いわゆる前室)に係る費用。
- 建築基準法、消防法等の他法令で義務づけられている手続きに係る費用(手数料を含む)、土地の取得に係る費用。
- リース(レンタル)契約による費用。
- 助成事業完了日を超えて支払いが続く分割払い。
- 申請事業者以外が支払った費用(親会社などが代理で支払った場合など)。
- 実際に行われなかった工事の費用(見積もり額を支払った場合でも対象外)。
交付申請に必要な書類
申請時には、以下の書類を正副2部提出します:
- 受動喫煙防止対策助成金交付申請書
- 受動喫煙の防止に係る事業計画
- 交付要件等確認申立書
- 措置を講じる場所の工事前の写真(申請日から3か月以内に撮影したもの)。
- 設置を予定している喫煙室や換気装置の場所など、助成事業の詳細を確認できる資料(設計図面、設備仕様書など)。
- 講じる措置が要件を満たして設計されていることが確認できる資料(風速計算、排気方法など)。
- 事業場の室内とそれに準ずる環境で、措置を講じる区域以外での喫煙を禁止する旨を説明する書類。
- 講じる措置に関する施工業者からの見積書の写し(2業者以上必要)。同等の構造・性能のものを比較してください。
- 事業開始の特例に係る申請書(交付決定前に契約、支払などを行う場合のみ、事前の承認が必要)。
- その他都道府県労働局長が必要と認める書類(既存特定飲食提供施設であることを確認できる資料、振込先情報、賃借している場合の貸主の承諾書など)。
申請スケジュール
- 提出書類準備: 助成金制度を把握し、必要な資料を準備します。
- 交付申請: 申請書類(正副2部)を、事業実施年度の1月31日までに所轄の都道府県労働局に提出します。
- 審査・交付決定: 助成金の交付が適当と認められると、「受動喫煙防止対策助成金交付決定通知書」が発行されます。書類提出から通知までおおむね1か月以内が目安です。
- 工事の発注・施工: 原則として、交付決定通知書を受領してから工事に着手してください。交付決定前の工事着手や契約、支払いは原則として助成対象外です(特例承認を除く)。
- 工事費用の支払い: 助成事業の完了日までに、費用の全額を支払う必要があります。
- 事業実績報告: 交付決定の際に指定された期日までに、報告書類(正副2部)を労働局に提出します。事業は年度内(3月31日)までに完了している必要があります。
- 交付額確定通知書受領: 実績報告が適当と認められると、「交付額確定通知書」が発行されます。
- 請求書提出: 所定の請求書を労働局に提出します。
- 助成金受領: 指定口座に助成金が振り込まれます。
注意点
- 厳格な運用: この助成金は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の対象であり、厳格な運用が求められます。交付要綱等をよく読み、制度の内容を理解してから申請してください.
- 不正行為: 偽りやその他の不正行為により助成金の交付を受けた場合、または交付決定の内容や条件に違反した場合は、助成金の返還を求められることがあります。また、罰則が科される可能性もあります.
- 予算の限り: 受付は原則申請順であり、申請額が予算額に到達した場合、申請受付が締め切られる予定です。お早めに申し込みましょう。
- 相談窓口: 不明な点があれば、所轄の都道府県労働局や、厚生労働省の相談支援・周知啓発業務の相談ダイヤル(050-3537-0777)に相談できます。
- 内容変更: 交付決定後に事業内容に変更が生じる場合は、事前に「交付決定内容変更承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。無断で変更すると、助成が受けられない場合があります。
- 長期報告: 助成金を受領した後、設置した設備の運用状況や帳簿・書類の保存状況について、交付額確定の際に指示されたとおり、おおむね1年ごとに5年間報告が必要です。
- 財産処分の制限: 助成金で取得した喫煙専用室等は、事業完了日の属する年度の終了後5年間を経過するまで、労働局長の承認を受けずに、交付目的に反する使用、撤廃、譲渡などをすることはできません。無断で処分した場合は、助成金の返還を命じられることがあります。
- 消費税: 助成対象経費には消費税が含まれており、消費税の確定申告時に仕入控除した消費税等相当額のうち補助金充当額について、後日返還を求められる場合があります(仕入控除税額が0円の場合も報告が必要)。
この助成金をうまく活用して、受動喫煙のないクリーンな職場環境を実現しましょう!
弊所では補助金のサポートを行っていますので、共に計画を練り、申請締切までに申請できるよう準備を進めていきましょう。お気軽にお問い合わせください。