税理士が教える「基礎控除」【3分で完全攻略】
個人で確定申告される方ほとんどすべてが適用対象となる非常に重要な所得控除です。また2020年(令和2年)から控除額が見直されていますので、変更点についてしっかり確認しましょう。
こんにちは。田中将太郎公認会計士・税理士事務所です。年末調整や確定申告をされる予定の方は、まずはこの最も基本的な所得控除である「基礎控除」をマスターしてください。
所要時間: 3分
次の3ステップで「基礎控除」について解説をします。
- 所得控除とは
「基礎控除」は「所得控除」の一種です。まずは「所得控除」とは何かを説明します。
- 基礎控除とは
「基礎控除」の内容を説明します。2020年(令和2年)に見直しがあったので、その内容についても解説します。
- 年末調整に必要となる書類
経営者の方は、従業員に「基礎控除」を適用する際に、年末調整で行うことになります。そこで「基礎控除」に必要な年末調整書類について説明します。
所得控除とは
「基礎控除」の説明に入る前に、そもそも「所得控除」とは何かを説明しておきます。
所得税は、所得に課される税金ですので、基本的には所得水準に応じて税金が決定されます。しかし、「所得控除」は、納税者の属性や状況に応じて、税額を調整することを目的としています。
たとえば、同じ所得金額の納税者であっても、「扶養家族の人数」、「病気による医療費負担」、「災害による影響」など、個々の事情を加味して税負担を調整することになっています。
所得控除は、一定の要件に該当する場合に、所得の合計金額から一定の金額を差し引くことができる制度ですので、適切な所得控除を行うことで、支払う税金の金額を減らすことができるため、とても重要な制度です。
つまり、税金額所得税額は、「(収入-経費-所得控除)×税率」で求められますので、所得控除が大きければ大きいほど、支払う税金が少なくなります。
これが「所得控除」であり、本記事で紹介する「基礎控除」のほかに、以外にも、「配偶者控除」「扶養控除」「医療費控除」「生命保険控除」など、全部で15種類あります。
税額控除ではない点に注意
「所得控除」の話をすると「税額控除」と混同される方が多くいますので、「所得控除」と「税額控除」の違いについて説明しておきます。
「所得控除」と「税額控除」の両方とも税金の金額を減らす制度ですが、両者は”差し引かれるタイミング”が異なりますので注意してください。
所得控除は、「直接所得の額から差し引かれるもの」のに対して、税額控除は、「税額(=所得×税率)から差し引くもの」です。
まとめると、以下のような式で表すことができます。
所得税=(収入金額-経費-所得控除)×税率-税額控除
税額から直接差し引かれる税額控除は、所得控除よりも節税インパクトが大きいことが特徴です。
税額控除も複数あり、最も有名なのが「住宅ローン控除」ではないでしょうか。そのほかにも、「寄付金特別控除」や「外国税額控除」も税額控除です。
所得控除の種類
参考までに15種類の「所得控除」を以下に列挙しておきます。「基礎控除」がどのような所得控除の仲間なのかを大枠で把握しておいてください。
- 基礎控除
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- 勤労学生控除
- ひとり親控除
基礎控除とは
それでは、いよいよ本題の「基礎控除」について説明していきます。
「基礎控除」とは、所得税や住民税の金額を計算をする際に、納税者の所得から一律で差し引かれる所得控除の1つです。
15種類ある「所得控除」は、原則として納税者本人の事情に沿って「適用されるか否か」「控除額はいくらか」が変わりますが、「基礎控除」の場合は、他の「所得控除」と異なり、原則として納税者全員に誰でも無条件一律に適用される「所得控除」でした。そのため、基礎控除は原則として個人事業主でも給与所得者(サラリーマンなど)も同じように一律に適用されます。
しかし、2020年(令和2年)からその「基礎控除」が見直され、納税者に応じた所得に応じて控除金額が変動することになりました。
納税者本人の合計所得金額が、2,400万円超かつ2,450万円以下の場合には、32万円、2,450万円超かつ2,500万円以下の場合は16万円、2,500万円を超えると「基礎控除」は適用されなったのです。
高額所得者の人にとっては悲しい改正ですね…
また、2020年(令和2年)から基礎控除が一律に引き上げられることになりました。これまで一律38万円であった控除額が引き上げられベースが48万円となりました(所得税38万円→48万円、住民税33万円→43万円)。
一方で、所得が上がるにつれて控除額が減り、合計所得金額が2,500万円超の人には適用されないこととなったのです。
基礎控除額(所得税)
合計所得が2,400万円を超える納税者は、その所得額が上がるにつれて基礎控除額が減っていきます。2,500万円を超えるとゼロになります。悲しいですね…
個人の合計所得金額 | 控除額(2020年以降) |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
基礎控除額(住民税)
所得税だけでなく、住民税額の計算の際にも「基礎控除」が適用されるので、以下で住民税の基礎控除額を記載しておきます。こちらも所得税額と同じように合計所得が2,400万円を超えると段階的に控除額が減り、2,500万円を超えるとゼロになります。
個人の合計所得金額 | 控除額(2020年以降) |
---|---|
2,400万円以下 | 43万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 29万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 15万円 |
2,500万円超 | 0円 |
年末調整に必要となる書類
「基礎控除」に所得要件が設置されたことにより、年末調整で基礎控除を行うためには、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という書類を従業員に記載してもらうことが必要になりました。
とても長い名前の書面ですね…
2020年(令和2年)より元々の「給与所得者の配偶者控除等申告書」に、新たな「給与所得者の基礎控除申告書」「所得金額調整控除申告書」が統合され、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」として、1枚の様式になりました。
「基礎控除」は、給与所得者のほぼ全員が関係するため、配偶者がいなくても提出しなければならない書類が増えることになります。
2020年(令和2年)分の用紙のサンプルを貼っておきます。国税庁のホームページからダウンロードできますので、皆さんは最新版をそちらから入手してください。
まとめ
いかがでしょうか。これまで最も単純で一律に適用されてきた「基礎控除」が、所得要件が加わり複雑になってしまいましたね。節税対策には「所得控除」が必須ですので、ぜひ「基礎控除」をきっかけに他の「所得控除」についても理解を深めていってください。