ふるさと納税の確定申告の基礎と節税メリット【田中将太郎公認会計士・税理士事務所】
「ふるさと納税」とは、地方自治体への寄付を通じて、その地域の振興や活性化を目指す制度です。
ふるさと納税を行うと、その寄付額に応じて所得税や住民税から一定の額が控除されるという税制上のメリットが得られます。
そこで、所得税や住民税の節税術の一つとしてよく活用される「ふるさと納税」制度とその確定申告の方法について解説していきたいと思います。
所要時間: 3分
- ふるさと納税の制度概要
まずは、ふるさと納税の制度概要について簡単に説明します。
- 確定申告でのふるさと納税の取り扱い:
次に、確定申告を行う際の納税での取り扱いを説明します。
- ワンストップ特例制度
最後に、確定申告を行わずに寄付金控除を受けるための方法を解説します。
ふるさと納税の制度概要
ふるさと納税は、地方創生を支援するため、全国の地方自治体への寄付を促進することを目的として作られた制度です。このふるさと納税を行うことで、寄付者は、税制上のメリットとして、 寄付金額に応じて、所得税と住民税の一部控除を受けることができます。
1. 制度の目的
地方創生を支援するために、全国の地方自治体への寄付を促進します。
地域資源の活用や地域課題の解決を通じて、各地の魅力の再発見や地域への愛着を深めます。
2. 寄付の対象
全国の都道府県や市区町村が寄付を受け付けています。
各自治体は、寄付の使途を明示しており、寄付者は特定のプロジェクトや目的を選んで寄付することができます。
3. 税制上のメリット(控除)
寄付した金額に応じて、翌年の所得税や住民税から一定の金額が控除されます。
控除の上限は、寄付者の所得や他の控除額によって異なりますが、大まかには所得税・住民税合計の額から2,000円を引いた金額までが控除の上限となります。
4. 返礼品
多くの自治体は、寄付者に対して返礼品を提供しています。この返礼品の取得価額が2,000円を超える場合、その超過分は寄付額から差し引かれ、その差し引いた額が控除の対象となります。
5. 申告方法
ふるさと納税の控除を受けるためには、確定申告が必要です。寄付を行った自治体から「寄付金受領証明書」を受け取り、これを税務署に提出します。
6. 制度の問題点や課題
返礼品の競争が激化し、本来の地域振興の目的が希薄になっているとの批判もあります。
寄付先の選定が返礼品を主眼に置いて行われることが多いため、実際の地域への貢献とのギャップが生じているとの意見も存在しています。
以上が、ふるさと納税の制度概要です。この制度を利用する際は、寄付先の選定に際して、返礼品だけでなく、その自治体の取り組みやプロジェクトの内容なども考慮すると、より意義深い寄付となるでしょう。
確定申告でのふるさと納税の取り扱い
寄付金としての所得税や住民税からの控除額は、その超過分は寄付額から差し引かれ、その差し引いた額が控除の対象となります。
例えば、10,000円の寄付で3,000円の返礼品を受け取った場合、寄付金額は10,000円 – 2,000円 = 8,000円として扱われます。
控除額の計算方法
ふるさと納税の寄付額によって控除される額は、所得税と住民税で異なります。またそれぞれの控除額には上限額額があり、所得の大きさによって異なるため、ふるさと納税の金額は慎重に検討するようにしてください。
所得税からの控除額
所得税からの控除 = (ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」
所得税からの控除額は、上記(1)の計算式で決まります。
なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限です。
住民税からの控除額
【住民税からの控除①】
住民税からの控除(基本分) = (ふるさと納税額-2,000円)×10%
住民税からの控除の基本分は、上記(2)の計算式で決まります。
なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
【住民税からの控除②】
住民税からの控除の特例分は、以下のAとBの2種類あります。
この特例分が住民税所得割額の2割を超えない場合は、下記Aの計算式で決まります。
下記Aにおける所得税の税率は、個人住民税の課税所得金額から人的控除差調整額を差し引いた金額により求めた所得税の税率であり、「所得税からの控除額」で算定された所得税の税率と異なる場合があります。
●計算方法A
住民税からの控除(特例分) = (ふるさと納税額 – 2,000円)×(100% – 10%(基本分) – 所得税の税率)
●計算方法B
住民税からの控除(特例分) = (住民税所得割額)×20%
特例分(Aで計算した場合の特例分)が住民税所得割額の2割を超える場合は、上記Bの計算式となります。
この場合、「所得税額からの控除」、住民税からの控除(基本分)及び住民税からの控除(特例分の3つの控除を合計しても(ふるさと納税額-2,000円)の全額が控除されず、実質負担額は2,000円を超えます。
確定申告書への記入方法
確定申告書を作成される場合は、確定申告書A又はB、および、所得税の計算書、所得税の控除に関する明細書に記入を行う必要があります。
確定申告書A(青色申告の方は確定申告書B)
「所得金額の計算」の部分に、寄付金額を記入します(返礼品の2,000円を超える部分は差し引く)。
出所:総務省ホームページ
所得税の計算書
「寄付金等の金額」の欄に、寄付金額を記入します。
「寄付金等の控除後の所得金額」の欄で、寄付金控除後の所得を計算し、記入します。
所得税の控除に関する明細書
「寄付金」の欄に、寄付した自治体名と寄付金額を記入します。
各自治体ごとに記入します。複数の自治体に寄付した場合は、それぞれの寄付金額を列挙します。
住民税への影響
ふるさと納税の寄付金による控除は、所得税だけでなく住民税にも影響します。ただし、住民税の控除は自動的に行われるので、市区町村への特別な手続きは不要です。翌年の住民税の通知書には控除が反映されています。
ふるさと納税のワンストップ制度(ワンストップ特例制度)
ふるさと納税のワンストップ制度(ワンストップ特例制度)は、日本のふるさと納税制度をより簡便に利用できるようにするための制度です。ふるさと納税は、寄付を通じて特定の地方自治体(ふるさと)に寄付金を支払い、その地域の振興や地域への貢献を行うことができる制度で、その寄付金の一部を所得税や住民税の控除として受けることができます。
ワンストップ制度は、寄付者がふるさと納税を行う際に、手続きを簡略化し、効率的に行えるようにするための制度です。具体的な特徴は以下の通りです:
なお、ふるさと納税のワンストップ制度は、寄付者にとって手続きが簡単で便利な制度として評価されています。しかし、具体的なルールや制度の詳細は変更されることがあるため、最新の情報を自治体や税務署から確認することが重要です。
一元管理
ワンストップ制度では、複数の自治体にふるさと納税を寄付する場合でも、ひとつの窓口で手続きを行うことができます。これにより、複数の自治体に個別に手続きをする必要がなくなり、寄付者の負担を軽減します。
簡易寄付証明書
寄付者は、ワンストップ制度を利用すると、ふるさと納税をした際の寄付証明書を自動的に受け取ることができます。これにより、所得税や住民税の控除を受ける際に必要な書類を容易に取得できます。
オンライン申請
ワンストップ制度では、インターネットを通じて寄付申し込みや手続きを行うことができる場合もあります。これにより、寄付者は自宅から簡単にふるさと納税を行うことができます。
税額控除
ワンストップ制度を利用してふるさと納税を行った場合、所得税や住民税の控除を受けることができます。ただし、控除の上限額や条件は法律に基づいて設定されており、寄付の種類や金額によって異なります。
まとめ
本記事を通じて、ふるさと納税の理解が深まりましたでしょうか。
田中国際会計事務所および田中将太郎公認会計士・税理士事務所では、法人や個人事業主のクライアント向けに会計、税務顧問サービスを提供しております。弊社のサービスにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせページからご連絡ください。