法人化すべきかどうかの判断ポイントとそのメリットを徹底解説:法人化を成功させるために知っておくべき重要なポイント

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個人事業主として事業を始めた多くの人が一度は直面する悩み――「法人化すべきかどうか」。

これは単なる税金の話だけではなく、経営の持続性や資金調達、事業拡大の可能性に大きな影響を与える問題です。

しかし、法人化を無計画に行うことはリスクを伴います。

場合によっては税金や運営コストが増え、結果的に個人事業主時代よりも経営が圧迫されるケースも少なくありません。

本記事では、法人化を検討する際に押さえておくべきメリットや最適なタイミングについて、プロフェッショナルとしての視点から解説していきます。

またYoutube動画でも詳しく解説していますので、ご覧ください。

法人化のメリットを徹底解説

法人化には様々なメリットがありますが、特に注目すべきポイントは「税金対策」と「経費の計上方法」です。

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

メリット1:法人税率と所得税率の差を利用

法人化の大きなメリットの一つは、法人税率と所得税率の差を利用して節税ができることです。

まず、法人が支払うべき法人税や住民税を加味した実効税率は、およそ25~33%です。

法人の場合、利益が増えても税率は大きく変動しないため、利益が安定している企業には特に有利な税制となります。

一方で、個人事業主は累進課税制度が適用され、所得が増えるごとに税率が急激に上がっていきます。

例えば、所得が600万円を超える個人事業主の場合、所得税率が法人税率と同等かそれ以上になり、法人化した方が税制上有利になります。

これは、法人化を検討する重要な分岐点です。

個人事業主は、所得税に加えて約10%の住民税や事業税も支払わなければなりません。

したがって、課税所得が600万円を超えると税負担が急増し、法人化による節税効果が顕著に現れます。

以下のように、個人事業主と法人での税率を比較してみましょう。

  • 課税所得が600万円以下:所得税率は15~20%、法人化のメリットは小さい。
  • 課税所得が600万円以上:所得税率が法人税率を超えるため、法人化による節税効果が大きくなる。

つまり、個人事業主として600万円以上の所得を得る場合には、法人化することで税率が低くなり、節税メリットを最大限に享受することができます。

メリット2:法人だから落とせる経費がある

法人化のもう一つの大きなメリットは、法人特有の経費計上の自由度です。

個人事業主では認められない経費を法人では計上できるため、節税効果が期待できます。

親族に役員報酬を支払うことで経費にできる

個人事業主の場合、親族に対して給与を支払うことは「専従者給与」として認められていますが、事業に専念している場合に限られます。

しかし、法人の場合は、非常勤役員として親族に役員報酬を支払うことが可能です。

これにより、家族が他の仕事を持っていても、報酬を経費として計上でき、節税効果が生まれます。

生命保険料を経費にできる

個人事業主は生命保険料を「所得控除」として控除できますが、その上限は数万円に設定されています。

これに対して法人は、上限なく生命保険料を経費計上できるため、数百万円単位での保険料を全額経費にすることも可能です。

特に高額な保険料を支払う必要がある場合には、この差が非常に大きな節税効果をもたらします。

自分に出張手当を出すことができる

個人事業主が出張する際、出張手当を自分に支払うことは認められていません。

しかし、法人では出張手当規程を設けることで、出張手当を支給し、それを法人の経費として計上することができます。

さらに、この手当は個人側で非課税となるため、法人と個人双方にメリットが生じます。

メリット3:2年間は消費税が免税になる

法人化後の大きなメリットとして、設立後2年間の消費税免税制度があります。

法人設立直後から2事業年度は原則として消費税が免除されるため、個人事業主時代に支払っていた消費税を軽減することができます。

特に消費税の課税事業者として運営している個人事業主にとって、この免税期間のメリットは非常に大きいです。

ただし、ここで注意が必要なのが、2023年から施行されたインボイス制度の影響です。

多くの企業が課税事業者を選択している現状では、免税事業者であることが取引に不利になる可能性もあります。

しかし、法人化後に免税事業者でありながらも「2割特例」を適用すれば、売上高の2%を納税することで簡易的に消費税を計算し、負担を軽減できます。

法人化を検討すべきタイミングとは?

では、法人化を進めるべき最適なタイミングとはいつなのでしょうか。

以下の要素を総合的に判断し、法人化を検討すべきです。

1. 課税所得が600万円を超えた時

  • 法人税率と所得税率が逆転する600万円以上の所得を得ている場合、法人化による税制メリットが大きくなります。

2. 法人のみが計上できる経費が発生する時

  • 生命保険料や親族に対する役員報酬など、法人でしか認められない経費を多く活用できるタイミングが重要です。

3. 消費税の課税事業者になった時

  • 消費税免税期間の2年間を活用できるタイミングで法人化すると、節税効果が高まります。

4. 国民健康保険を削減したい時

  • 法人化すると、役員報酬に応じて社会保険に切り替えることができ、結果的に国民健康保険の負担を削減できます。

法人化のデメリットにも注意が必要

法人化には大きなメリットがある一方で、無計画な法人化は逆効果になることがあります。

特に、運営コストが増加することや、経理や税務の複雑さが増すことがデメリットとなり得ます。

たとえば、法人化すると税理士に支払う報酬が増える可能性があり、決算書類や法人税の申告も複雑になります。

また、法人化後に利益が予想以上に減少した場合には、法人としての維持コストが個人事業主時代よりも高くなることがあります。

法人化を検討する際は、税金や経費だけでなく、全体的な事業の運営コストや負担も考慮する必要があります。

そのため、最終的な決断は専門家との相談を通じて行うことが推奨されます。

まとめ:法人化を成功させるために

法人化は、多くの節税メリットを享受できる一方で、適切なタイミングと計画が重要です。

特に、課税所得600万円を超える事業規模に成長した際には、法人化を検討する絶好のタイミングとなります。

しかし、法人化後も節税を最大限に活用するためには、適切な節税施策を実行し続ける必要があります。

そのため、税理士などの専門家と継続的に相談しながら、経営を進めていくことが重要です。

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
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