インフルエンサー報酬から源泉徴収をすべきか?公認会計士・税理士が詳しく解説

こんにちは、田中将太郎公認会計士・税理士事務所です。

近年、SNSを活用して商品やサービスを発信する「インフルエンサー」の活躍が注目を集めています。

それに伴い、企業がインフルエンサーに報酬を支払う機会も増えていますが、「インフルエンサーに支払う報酬は源泉徴収の対象になるのか?」というご相談を多くいただいています。

本記事では、「インフルエンサー報酬の源泉徴収」について詳しく解説します。

企業の税務担当者や個人事業主としてインフルエンサーと契約を結ぶ方にとって、この記事は正しい税務知識を得るための重要な参考資料となるでしょう。

1. 源泉徴収とは?基本的な仕組みをおさらい

源泉徴収とは?

源泉徴収とは、報酬や給与を支払う際に、支払者が一定額の税金を差し引いて税務署に納める仕組みです。

この制度は、個人の所得税を効率的に徴収するために導入されており、支払者には法律で源泉徴収を行う義務が課せられています。

源泉徴収の対象となる報酬は、「源泉徴収の必要な報酬・料金等」として法律で明記されています。具体的には次のようなものが該当します。

  • 原稿料や講演料
  • 弁護士、公認会計士、司法書士など特定資格者に支払う報酬
  • モデルや芸能出演者に対する報酬
  • 広告宣伝のための賞金
  • 契約金や出演料など

では、インフルエンサーに支払う報酬がこれらに該当するのか、次章で詳しく見ていきましょう。

2. インフルエンサー報酬は源泉徴収の対象?具体的な分類を解説

インフルエンサーへの報酬が源泉徴収の対象となるかどうかは、その報酬の性質によって異なります。以下に具体例を挙げて検討します。

原稿料の場合

「原稿料」は、執筆した原稿や記事に対して支払われる報酬です。出版社やウェブメディアが記事を採用し、それに対する対価として支払われます。

一方、インフルエンサーのSNS投稿は、執筆された文章が企業に納品される形ではなく、インフルエンサー自身のアカウント上で発信されるものです。

この点から、インフルエンサーへの報酬は「原稿料」として源泉徴収の対象には該当しません。

広告宣伝のための賞金の場合

「広告宣伝のための賞金」は、プロモーションの一環として提供される賞金や賞品が該当します。

ただし、これが源泉徴収の対象となるのは、賞品や賞金として提供されるものに限定されます。

インフルエンサーがSNS投稿の対価として受け取る報酬は、賞金品ではなく、通常の契約報酬として支払われるケースが多いため、この分類には該当しない場合がほとんどです。

モデル報酬の場合

「モデル報酬」とは、広告や雑誌などの印刷物にモデルの容姿を掲載する際に支払われる報酬を指します。これには写真や動画の使用料が含まれる場合もあります。

インフルエンサーの報酬が「モデル報酬」とみなされるのは、SNS投稿に使用した写真や動画が企業の広告印刷物として使用される場合です。

そうでない限り、インフルエンサーへの通常の投稿報酬はこのカテゴリーには該当しません。

3. 源泉徴収が必要になるケースと注意点

上記で説明した通り、多くの場合、インフルエンサーへのSNS投稿報酬は源泉徴収の対象外となります。ただし、以下のケースでは源泉徴収が必要になる可能性があるため注意が必要です。

1. デザインやイラストの提供

インフルエンサーがSNS投稿以外に、デザインやイラストを制作し、それを納品する場合、その報酬は「デザインに対する報酬」として源泉徴収が必要です。

2. テレビCMやイベント出演料

テレビCMや企業イベントに出演する場合、その出演料は「芸能出演料」として源泉徴収の対象です。

3. 高額な一時金の受領

高額な契約金や特別報酬が一時的に支払われる場合、税務上の契約金として取り扱われ、源泉徴収が必要になる場合があります。

4. 法人インフルエンサーとの契約で変わる処理方法

インフルエンサーが法人を設立している場合、報酬は法人所得として処理されます。この場合、法人に対する報酬支払いは源泉徴収の対象外です。

ただし、インフルエンサーが個人事業主として活動している場合は、報酬の性質に応じて源泉徴収が必要になる場合があります。

法人化しているかどうかは契約時に確認し、契約書に明記しておくと安心です。

5. まとめ:迷ったときの相談先

インフルエンサーの報酬が源泉徴収の対象になるかどうかは、その契約内容や報酬の性質によって異なります。以下のポイントを押さえておきましょう。

  • SNS投稿の対価としての報酬は通常、源泉徴収の対象外。
  • デザインや出演料などの報酬は源泉徴収が必要な場合がある。
  • 法人化しているインフルエンサーには源泉徴収は不要。

税務処理に迷った場合は、契約内容を詳しく確認し、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。

当事務所では、企業の税務相談を専門とし、インフルエンサーとの契約に関する税務リスクのアドバイスを行っています。気軽にご相談ください。

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
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