インフルエンサーへの報酬は源泉徴収が必要なのか
こんにちは。田中将太郎公認会計士・税理士事務所です。
最近では、主にSNS上で大きな影響力をもつインフルエンサーが増えています。そんなインフルエンサーに自社製品やサービスを使用した感想を投稿してもらうなど、企業のPRを依頼する会社も増えているのではないでしょうか。弊社でもインフルエンサーへの報酬に源泉徴収が必要なのかお問い合わせをいただくことが増えてきました。
そこで、インフルエンサーの報酬に源泉徴収が必要か、について配信していきます。
所要時間: 3分
- 源泉徴収が必要な報酬についての解説
源泉徴収が必要な報酬の具体例についてご説明します。
- インフルエンサーへの報酬の具体的な検証
インフルエンサーへの報酬が源泉徴収の対象になるのかを具体的に検証します。
- まとめ
最後に、例外的な取り扱いについても言及しつつ最終的なまとめを示します。
源泉徴収が必要な報酬とは
源泉徴収が必要な報酬は、国税が「源泉徴収が必要な報酬・料金等」として限定列挙しています。代表例としては次のようなものになります。
- 原稿料や講演料など
- 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
- 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
- ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
- プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
- 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
参考:国税『No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは』
インフルエンサーへの報酬に該当する源泉徴収はどれにあたるのか
インフルエンサーの報酬は前述した①「原稿料」②「広告宣伝のための賞金」③「モデルに対する報酬」のいずれかにあたる可能性があります。そこで、それぞれの項目について、具体的に検討していきます。
「原稿料」
原稿料は、記事や文学作品などの原稿の執筆に対する報酬を指します。原稿料は著作権などの知的財産権に基づく報酬であり、執筆者が自身の著作物を提供することによって得られる収入になります。つまり、執筆者から出版社等(報酬の支払者)に寄稿された原稿への対価として支払われるもので、その原稿内容は出版社等が書籍等で販売します。
一方、インフルエンサーへの報酬は、SNSへ投稿することへの対価となります。企業等へ文章等を提出するものではなく、企業が文章等を受領したという事実に基づかないため、インフルエンサーのSNS投稿の報酬は源泉徴収の対象となる「原稿料」には該当しません。
「広告宣伝のための賞金」
広告宣伝のための賞金は、商品やサービスのプロモーションの一環として支払われる報酬です。ただし、源泉徴収の対象となるのは、賞として支払われるもの、つまり、賞金品に限定されているのに対するものになります。
インフルエンサーへの報酬は、「広告宣伝のため」に該当しても、賞金品の性質を有しない場合は「広告宣伝のための賞金」には該当しません。
「モデルに対する報酬」
モデルに対する報酬は、雑誌、広告その他の”印刷物”にその容姿を掲載させて受け取る報酬が源泉徴収の対象となります。
そのため、インフルエンサーがSNSに投稿した自身の写真を使用して、企業がチラシ広告等として印刷しない限りは、インフルエンサーへの報酬は、源泉徴収の対象となる「モデルに対する報酬」に該当しません。
まとめ
上述の通り、インフルエンサーのSNS投稿に対する報酬は、源泉徴収の対象のいずれにも該当しないことになりますが、依頼内容によっては、源泉徴収の対象となる報酬もあります。
例えば、インフルエンサーに自社商品のPRとして新商品の“デザイン”を依頼し、その対価として報酬を支払った場合は「デザインに対する報酬」として該当し、源泉徴収の対象となります。そのため、個別の判断については、顧問税理士にご相談ください。
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