「インボイス制度の実施に関連した注意事例」を公表

こんにちは。田中将太郎公認会計士・税理士事務所です。

今回はインボイス制度に関する最新情報をお届けします。

公正取引委員会は5月17日、「インボイス制度の実施に関連した注意事例」を公表しました。

2023年10月1日よりインボイス制度が始まります。多くの事業者がインボイス制度に向けて準備をしていることと思います。

この流れの中で、一定の事業者は、免税事業者との取引条件を見直す向きがあります。つまり、免税事業者に対して、取引価格を消費税10%分だけ引き下げるよう要求するものです。

この点、免税事業者からの仕入れも経過措置期間中は一定の範囲で仕入税額控除が認められます。消費税10%相当額を取引価格から引き下げることを一方的に取引相手に通告する場合、独占禁止法違反につながるおそれのある事例が散見され、公正取引委員会が複数の発注事業者に注意を行ったというのです。

8割控除の経過措置を踏まえて価格設定することが求められる

公正取引委員会等はインボイス制度に関連して、免税事業者とその取引先の発注事業者との間における取引条件の見直しなどにつき、独占禁止法や下請法上問題となり得る行為の考え方等を示し、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を公表しました。

同Q&Aでは、取引価格の引下げについて、免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除が制限される分について、双方が協議し納得して取引価格を設定すれば、その価格が引き下げられても独占禁止法上問題にならないとしています。

インボイス制度の特例として、インボイス制度後3年間は、免税事業者からの仕入れでも仕入税額相当額の8割、その後の3年間は5割を控除できる経過措置が設定されています。

このような一定の範囲で仕入税額控除を認める経過措置があるにもかかわらず、消費税10%相当額を取引価格から引き下げることを一方的に通告することは、「仕入税額控除が制限される分」を超え取引価格を引き下げることとなり、独占禁止法や下請法上問題となるおそれがあるとの見解が示されました。

さらに気をつけないといけない点としては、仕入税額控除が制限されずに経過措置が適用されない部分である消費税相当額の20%又は50%に抑えて取引価格を引き下げる場合でも、それが一方的な通告の場合は、独占禁止法や下請法上問題となるおそれがあります。双方が協議し納得したうえでの取引価格の設定されることが、独占禁止法や下請法の観点で重要となります。

独占禁止法上又は下請法上の考え方

取引上優越した地位にある事業者が、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、取引先の免税事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合に、消費税相当額を取引価格から引き下げるなどと一方的に通告することは、独占禁止法上問題となるおそれがある。

また、下請法上の親事業者が、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、取引先の免税事業者である下請事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合に、消費税相当額を取引価格から引き下げるなどと一方的に通告することは、下請法上問題となるおそれがある。

独占禁止法等を意識した取引先との交渉が求められる

上述したように取引価格を消費税10%相当額分だけ一方的に引き下げを要求することは、独占禁止法等に違反する恐れがあります。そのため、取引先との取引価格の交渉については、両者の協議のもと、慎重に決定する必要があります。

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
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