社会保険とは①厚生年金保険

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社会保険は適用事業所では入会必須のものではありますが、実際のところどのような仕組みでどのように金額が決定しているのでしょうか。
今回は、厚生年金保険にフォーカスして解説していきます。

所要時間: 3分

  1. 社会保険の概要

    社会保険の概要を解説します。

  2. 厚生年金の適用要件

    厚生年金の適用要件を解説します。

  3. 保険料の計算方法

    保険料がどのように計算されるのか、具体的に解説します。

  4. 二か所以上の適用事業所に雇用されている場合

    二か所以上の適用事業所に雇用されている場合を解説します。

社会保険の概要

社会保険は主に以下の5つ存在します。

  • 厚生年金保険
  • 健康保険
  • 介護保険(40~65歳)
  • 雇用保険
  • 労災保険

今回は厚生年金保険について解説していきます。

厚生年金保険

従業員や公務員が年金として受け取ることができる公的年金です。

後述する「適用事業所」に所属していない20歳以上の国民は全員「国民年金保険」に加入することが義務付けられています。

なお、厚生年金保険加入者は国民年金保険と厚生年金保険の両方に加入していることになります。

厚生年金保険の適用要件

厚生年金の適用要件を以下のようにに分けて解説していきます。

・適用事業所
  ・強制適用事業所
  ・任意適用事業所
・被保険者

適用事業所

厚生年金保険に適用される事業所は以下の二種類が考えられます。

・強制適用事業所
・任意適用事業所

強制適用事業

厚生年金の適用事業所となるのは、法人、又は従業員が常時5人以上の個人(農林漁業、サービス業などを除く)です。

任意適用事業所

従業員の半数以上が厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所となることができます。

被保険者

厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず、厚生年金保険の被保険者となります。

雇用契約書の有無などとは関係なく、適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受ける使用関係であれば、適用の対象となります。

保険料の計算方法

保険料はどのように計算されるのでしょうか。

具体的に解説します。

厚生年金保険料

標準報酬月額(又は標準賞与額)×18.3%

※標準報酬月額、標準賞与額の求め方は、発生額の税引き前の総額から1,000円未満を切り捨てた金額を基に計算します。

標準報酬月額は以下の表で導出します。

社会保険料は事業所と雇用者で折半します。つまり、事業所が負担する金額と給与から控除される金額はそれぞれ以下のように計算します。

標準報酬月額(又は標準賞与額)×9.15%

厚生年金保険料は、年金事務所が公開している「保険料表」を参照することで簡易的に計算できます。

(厚生年金保険料額表:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/20200825.html)

子ども・子育て拠出金

「 子ども・子育て拠出金」とは、子育て支援のために充てられる税金のことです。

社会保険料と一緒に年金事務所(日本年金機構)が徴収していますが、この拠出金の実態は社会保険料ではなく、税金です。

徴収した拠出金は、児童手当や子育てと仕事の両立支援事業や子育て支援事業などに充てられています。

計算方法は以下の通りです。

標準報酬月額・標準賞与額×0.36%

※社会保険料とは異なり、事業所側が全額負担となります。

二か所以上の適用事業所に雇用されている場合

被保険者が同時に複数(2カ所以上)の適用事業所に使用(勤務)されることとなった場合、被保険者の届出により、主たる事業所を選択して管轄する年金事務所または保険者等を決定します。

主たる事業所によって保険料が変わることはありません。

保険証に表記される事業所名が主たる事業所になります。

事実発生から10日以内に被保険者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構へ提出することで適用されます。

以下に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」のテンプレートをダウンロードできるURLを添付しますのでご活用ください。
(URL:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/hihokensha/20140820-03.html)

保険料の計算方法について

各事業所で負担する保険料は以下の3段階で決定します。

  • 各適用事業所の報酬月額を合算し、標準月額報酬を決定
  • 決定した標準月額報酬から保険料が決定
  • 各事業所の報酬月額に基づき、決定した保険料を按分

例えば、主たる事業所から「200,000円/月」、従たる事業所から「300,000円/月」発生していたとすると、標準報酬月額は200,000+300,000=500,000円、厚生年金保険料は上記の表から91,500円となります。

この場合の按分方法は以下の通りです。

  • 主たる事業所での負担額:91,500 × 200,000 / 200,000 + 300,000 = 36,600円
  • 従たる事業所での負担額:91,500 × 300,000 / 200,000 + 300,000 = 54,900円

なお、1円未満の端数処理方法は、従業員の給与から控除する金額は切り上げ、事業所が負担する金額は切り捨てで計算します。

正確に確定した標準報酬月額および保険料額は、主たる事業所の所在地を管轄する事務センターから、それぞれの事業所へ通知されます。

しかし、端数処理で計算に多少のズレが生じることがあります。二か所以上の適用事業所に従事する従業員の社会保険料は、事業所で計算したとしても、その金額が正しいかどうかを年金事務所からの通知で確認してください。

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
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