『年収の壁』がなくなる?
2023年10月より、国の新たな取り組みとして「年収の壁」に対応した施策がスタートしました。
今回はその取り組み内容について解説していきます。
これまで「年収の壁」にお困りだった方、必見です!
所要時間: 3分
- 年収の壁とは
年収の壁とは何か説明します。
- 年収の壁の種類
年収の壁の種類を説明します。
- 年収の壁への取り組み
年収の壁に対応した取り組みについて説明します。
年収の壁とは
通常、厚生年金保険および健康保険において、会社員の配偶者などで一定の収入がない場合、被扶養者(第3号被保険者)として扱われ、社会保険料の負担が発生しません。
しかし、この被扶養者の収入が一定の水準を超えると、社会保険料の負担が生じ、その結果手取り収入が減少します。
このボーダーラインが「年収の壁」と呼ばれます。
年収の壁の種類
年収の壁は、主に「住民税の壁」「所得税の壁」「社会保険の壁」「配偶者控除の壁」の4つに分かれます。
今回は、「社会保険の壁」について説明していきます。
社会保険の壁は、「106万円の壁」と「130万円の壁」について
130万円の壁
「130万円の壁」とは、パートなどで働く配偶者が扶養から外れ、年収が130万円以上になると、社会保険料と年金を支払う必要があり、その結果として手取り収入が減ってしまう状況を指します。
扶養から外れた場合は、健康保険は国民健康保険もしくは勤務先の健康保険に加入し、年金は自身で国民年金保険料を支払うか、勤務先の厚生年金への加入を行うことになります。
従業員数が101名以上の企業に勤めている場合は、下記で説明する「106万円の壁」に該当しますが、多くの中小企業では従業員数が100名以下です。
そのため、先ずは「130万円の壁」を意識すると良いでしょう。
106万円の壁
「106万円の壁」とは、以下の要件すべてに当てはまる場合、扶養から外れて厚生年金・健康保険に加入する必要があり、その結果として手取り収入が減ってしまう状況を指します。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が継続して2ヵ月超見込まれる
- 賃金が月額88,000円以上(年106万円以上)
- 学生ではない
- 従業員が101人以上(※令和6年10月に従業員51人以上の企業まで拡大予定)
年収の壁への取り組み
人手不足への対応が急務となる中で、短時間労働者が「年収の壁」を気にせず働くことができる環境づくりを支援するため、2023年10月より下記の取り組みがスタートしました。
「130万円の壁」の崩壊
「130万円の壁」を打破する施策として、パートやアルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなどして収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明すれば、引き続き被扶養者認定が可能となりました。
ただし、あくまでも「一時的な収入変動」がある場合のみの対応であり、長期的に労働時間が増加する場合は認められませんので注意が必要です。
勤務先に以下の書類を提出し、事業主がそれを受理することで引き続き被扶養者として認定されます。
▶被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書:厚生労働省HP参照
「106万円の壁」の崩壊
「106万円の壁」を打破する施策として、キャリアアップ助成金(社会保険適用事待遇改善コース)の新設、社会保険適用促進手当の支給が開始されました。
キャリアアップ助成金(企業への支援)
キャリアアップ助成金の新設により、パートやアルバイトで働く方が社会保険に加入する場合に、手取り収入の減少を気にせず働くことができるよう、手当等の支給により労働者の収入を増加させる取り組みを行う企業は、労働者1人当たり最大 50万円の支援を受けることができるようになりました。
キャリアアップ助成金は2つのメニューに分かれます。
(1)手当等支給メニュー
①賃金の15%以上を労働者に追加支給した場合、助成金20万円/人を支給(1年目)
②賃金の15%以上を労働者に追加支給した場合、助成金20万円/人を支給(2年目)
※3年目以降③の取り組みを行うことが前提
③賃金の18%以上を増額した場合、助成金10万円/人を支給(3年目)
※上記助成額は中小企業の場合。大企業の場合は3/4の額。
(2)労働時間延長メニュー
以下いずれの場合でも助成金30万円/人が支給されます。
①週所定労働時間の延長4時間以上
②週所定労働時間の延長3時間以上4時間未満かつ賃金の増額5%以上
③週所定労働時間の延長2時間以上3時間未満かつ賃金の増額10%以上
④週所定労働時間の延長1時間以上2時間未満賃金の増額15%以上
社会保険適用促進手当
社会保険適用促進手当とは、事業主が労働者の社会保険の加入に伴い、労働者の手取り収入を減らさないように支給する手当です。
給与や賞与とは別にこの手当を支給した場合、本人負担分の社会保険料相当額を上限として、保険料算定の基準となる標準報酬月額の算定対象となりません。
この手当の支給は、新たに社会保険の適用となった労働者であり、標準報酬月額が104,000円以下の方が対象になります。
また、最大2年間の措置となりますので注意が必要です。
まとめ
これまでは、もっと働きたくても「年収の壁」で労働時間を控えてきた方も多いと思います。
近年、物価上昇や円安などの問題もありますから、少しでも収入をアップさせたいという方も多いはずです。
これらの施策をうまく活用し、「働き損」とならないような働き方を選択してはいかがでしょうか。