小規模企業共済を最大限に活用する方法:税理士が解説する節税のメリットと注意点

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小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の経営者にとって非常に有効な節税対策の一つです。

しかし、その制度の特性を正しく理解せずに利用すると、思わぬ損失を被ることもあります。

本記事では、小規模企業共済の基本的な仕組みや活用のメリット、さらには注意すべきポイントについて税理士の視点から詳しく解説します。ぜひ、正しい知識を身につけ、最大限に活用してください。

またYoutube動画でも詳しく解説していますので、ご覧ください。

小規模企業共済とは?基本を押さえよう

小規模企業共済の概要

小規模企業共済は、中小企業や個人事業主のための退職金制度です。加入者は毎月一定額を積み立て、退職時にまとまった資金を受け取ることができます。この制度の特徴は、以下の2点に集約されます。

掛金の全額が所得控除の対象

毎月積み立てる掛金は所得控除として申告可能です。その結果、所得税や住民税が軽減されます。

退職金としての優遇税制

退職時に受け取る一時金は、退職所得控除や一時所得として課税されるため、通常よりも低い税負担で済みます。

小規模企業共済のメリット

1. 所得税・住民税の軽減効果

小規模企業共済の最大の魅力は、掛金全額が所得控除の対象となる点です。所得税は累進課税であり、所得が高いほど税率が高くなります。したがって、課税所得が高い人ほど節税効果が大きくなります。

【シミュレーション】年収2,000万円の経営者Aさんの場合

課税所得:1,800万円(給与所得控除後)
掛金:年間84万円(最大額)
税率:所得税33%+住民税10%=43%
節税額:84万円 × 43% = 36万円

20年間積み立てた場合、合計の節税額は720万円を超えます。このように、高所得者ほど大きな節税メリットを享受できます。

2. 退職金としての優遇税制

積み立てた資金を取り崩す際は、「退職所得控除」や「一時所得」として課税されます。この仕組みにより、退職時の税負担を軽減できます。

退職所得の場合、退職所得控除が適用されるほか、課税額が1/2に軽減されます。これにより、現役時代に高い税率で控除を受け、退職時に低い税率で課税されるため、節税効果がさらに大きくなります。

注意点:小規模企業共済で損をするケース

小規模企業共済は誰にでも適した制度ではありません。特に以下のようなケースでは、思わぬ損失を招くことがあります。

1. 所得が低い場合

所得が低いと、所得税率も低いため、掛金を積み立てた際の節税効果が小さくなります。また、退職時に取り崩す際の税率が高くなると、節税どころか損失を被る可能性があります。

【シミュレーション】年収600万円の経営者Bさんの場合

課税所得:323万円(給与所得控除後)
税率:所得税10%+住民税10%=20%
節税額:84万円 × 20% = 16.8万円

20年間積み立てた場合の節税総額は336万円となりますが、退職時に税率が20%以上になると、取り崩し時に多額の税金が発生し、損失につながる可能性があります。

2. 社会保険料の負担増

法人経営者の場合、小規模企業共済の掛金を積み立てるために役員報酬を増額すると、所得税や住民税だけでなく、社会保険料も増加します。社会保険料は個人負担と法人負担を合わせると約30%に達するため、掛金以上の負担増となる可能性があります。

法人経営者が注意すべきポイント

法人経営者が小規模企業共済を活用する際は、以下の点に注意する必要があります。

1. 役員報酬の増額に伴う社会保険料の増加

役員報酬を増額して掛金を積み立てると、社会保険料が増える可能性があります。たとえば、84万円の報酬増額により、30%(25.2万円)の社会保険料が発生します。この場合、節税効果より負担増が上回り、結果的に損をすることになります。

2. 金融機関からの借入金を活用している場合

金融機関からの借入金を元手に役員報酬を増額し、共済掛金を積み立てると、借入金の金利負担が節税効果を相殺する可能性があります。このような状況では、小規模企業共済を利用する前に、借入金の返済を優先する方が得策です。

小規模企業共済を効果的に活用するための戦略

1. 少額から始める

小規模企業共済は月額1,000円から加入可能です。最初は少額から始め、所得の増加に応じて掛金を増やすのが効果的です。

2. 社会保険料の上限を超えるタイミングで掛金を増やす

社会保険料には上限があります。以下の報酬額を超えると、それ以上の社会保険料は発生しません。

健康保険料:月額136万円以上
厚生年金:月額67万円以上

これらのラインを超えた後に掛金を増やすことで、社会保険料の負担を抑えながら節税効果を最大化できます。

3. 長期的な視点でプランを立てる

小規模企業共済の効果は、短期的な節税ではなく、退職金としての資金計画を含めた長期的な視野で判断することが重要です。

小規模企業共済の加入条件と注意事項

加入条件

以下の条件を満たす個人事業主または中小企業の経営者が対象です。

従業員数

建設業・製造業:20人以下
サービス業・小売業:5人以下

事業規模の拡大によって従業員数が条件を超える場合でも、加入中の共済は継続可能です。そのため、早めに加入しておくことをおすすめします。

注意事項

掛金を途中で引き出す場合、大幅な減額が発生します。そのため、無理のない金額で加入し、資金繰りに影響を及ぼさないよう注意してください。

まとめ:税理士の視点から見る小規模企業共済の最適活用法

小規模企業共済は、適切に活用すれば大きな節税効果を得られる制度です。

しかし、所得や社会保険料の負担状況を無視して利用すると、損をするリスクがあります。以下のポイントを押さえ、長期的な視野で計画を立てましょう。

  • 少額から始め、柔軟に掛金を調整する。
  • 社会保険料の増加を避けるタイミングで掛金を増やす。
  • 退職時の税率を考慮してシミュレーションを行う。

税理士として、皆さまが小規模企業共済を最大限に活用できるよう、シミュレーションやアドバイスを提供しています。具体的なご相談や不明点があれば、お気軽にお問い合わせください。皆さまの事業成功を全力でサポートいたします!

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
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