【税理士が解説する】税理士とは何なのか

税理士

税理士に業務を依頼する人にとって、まずは「税理士」とは何かを知ることはしっかり知ることは大切です。

税理士といっても、さまざまで、全員が税理士試験を合格して税理士になっているわけではありません。

全体の45%程度が税理士試験の合格者ですが、税務署に23年以上勤めた人も税理士になることができ、このような税理士が約38%います。

その他に、公認会計士資格や弁護士資格を持っている人は、税理士として登録することもでき、これらの人は10%ちょっとです。

こんにちは。田中将太郎公認会計士・税理士事務所です。今回は、税理士とは何かを解説します。

所要時間: 4分

次の4つのステップで「税理士」について説明します。

  1. 税理士とは

    税理士とはどのような仕事を行う人かを説明します。

  2. 税理士になる方法

    税理士になる方法は大きく3つあり、それぞれについて説明します。

  3. 税理士の登録者数

    税理士がどれくらいいるのかを説明します。

  4. 税理士の未来

    今後、税理士業界がどうなるかを説明します。

税理士とは

税理士とは、税金の申告・申請、税務書類の作成、税務相談、税に関する不服審査手続き等を行う人です。

税理士は、税理士法1条で次のように定義されています。
”第一条 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。”

主な業務は次の3つがあります。

  1. 税務代理(税理士法2条1項1号)
  2. 税務書類の作成(税理士法2条1項2号)
  3. 税務相談(税理士法2条1項3号)
税理士

1.税務代理(税理士法2条1項1号)

税務代理とは、税理士が税務署の調査に対して立ち合いをして、主張または陳述することです。

税理士と税務顧問契約をしている場合、追加で1時間あたり数万円の報酬を支払うことで、税務調査時に税理士に立ち合いを頼める場合あります。

税理士法2条1項1号では、次のように定義されています。

税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二章の規定に係る申告、申請及び審査請求を除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)

税理士法2条1項1号

2.税務書類の作成(税理士法2条1項2号)

税務書類の作成とは、税務申告書を作成する業務です。

通常の税務顧問契約は、こちらの業務がメインとなります。

税理士法2条1項2号では、次のように定義されています。

税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十四条第一項において同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)

税理士法2条1項2号

3.税務相談(税理士法2条1項3号)

税務相談とは、税務申告書の作成に伴い、依頼者の相談に応じる業務です。

税務顧問契約のメイン業務である税務書類の作成に付随する業務です。

税理士法2条1項3号では、次のように定義されています。

税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号イからヘまでに掲げる事項及び地方税(特別法人事業税を含む。以下同じ。)に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)

税理士法2条1項3号

税理士になる方法

税理士になっている人は、主に以下の3つに分けられます。

  1. 税理士試験合格者
  2. 試験免除者(学位または国税従事による)
  3. 公認会計士有資格者、弁護士有資格

なお、1.税理士試験合格者、2.試験免除者(学位または国税従事による)に関しては、会計に関する事務(貸借対照表勘定及び損益計算書を設けて経理する事務)などに従事した期間が通算して2年以上あることを追加の要件とされています。

札幌 税理士

なお、税理士になれる人を税理士法上は次のように定めています。

「税理士となる資格を有する者」としては、公認会計士、弁護士、税理士試験に合格し2年以上の実務経験を持つ者、23年以上税務署に勤務した国税従事者があり、税理士名簿への登録を受けることによって「税理士」となり、税務をおこなうことができる。

税理士法3条1項

1.税理士試験合格者

税理士試験合格者は、税理士試験試験に合格した人です。その後、税理士として登録するために2年間の実務経験を積む必要があります。

税理士試験は、会計の2科目(簿記論、財務諸表論)と税法の3科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税のうち3科目を選択)に合格する必要があります。

なお、所得税法又は法人税法のいずれか1科目は必ず選択する必要があります。税理士試験は科目合格制をとっており、受験者は一度に5科目を受験する必要はなく、1科目ずつ受験することが可能です。

合格基準点は各科目とも満点の60パ-セントです。合格科目が会計学に属する科目2科目及び税法に属する科目3科目の合計5科目に達したとき合格者となります。

2.試験免除者(学位または国税従事による)

試験免除者は、税理士試験を合格していない人で、以下のような要件を満たす人で構成されます。             

①大学院で一定の科目を修了した人

大学院で法学等なら税法科目、経済・商学ならば会計科目について、博士課程又は修士課程を修了した者は、会計科目又は税法科目の一部免除又は全部免除される。(税理士試験は難易度が高いため、この大学院による試験免除を目指す人も多いです)

②税務署に勤務して一定要件を満たした人

・税務署等に10年以上勤務し一定の要件を満たした者は税法科目を免除
・税務署等に23年以上勤務し一定の要件を満たした者は税法・会計科目全て免除

3.公認会計士、弁護士有資格者

公認会計士や弁護士の資格を有している人は、税理士登録することができます。

海外では、税理士という資格はなく、税金に関する問題解決は、公認会計士や弁護士が行うことが一般的です。日本は、税理士という資格があるため、公認会計士や弁護士も税理士登録ができるようになっています。

税理士の登録者数

2019年の税理士登録者数は、78,795人です。公認会計士が約4万人なので、税理士は公認会計士の2倍の人数がいます。

毎年順調に増えており、直近10年間で約10%増えています。

【2010年以降の税理士登録者数の推移】

税理士登録者数
2010年72,039人
2011年72,635人
2012年73,725人
2013年74,501人
2014年75,146人
2015年75,643人
2016年76,493人
2017年77,327人
2018年78,028人
2019年78,795人
税理士登録者数の推移(「税理士界第1388号」より)

出自別の税理士登録者数

税理士は、「税理士試験合格者」が最も多く45%を占めます。次いで、人数が多いのが、税務署出身などの「試験免除者」で38%を占めます。

【2019年末時点の出自別税理士登録者数】

出自税理士登録者数割合
税理士試験合格者35,108人45%
試験免除者29,730人38%
公認会計士・弁護士資格保有者10,834人14%
その他3,123人4%
出自別の税理士登録者数(「税理士界第1388号」より)

最近は、「試験免除者」が税理士になるケースが非常に増えています。

2019年は新規登録者数は、2,693人でしたが、半数以上の1,411人が「試験免除者」でした。

【2019年末時点の出自別の新規登録者数】

出自税理士登録者数割合
税理士試験合格者756人28%
試験免除者1,411人52%
公認会計士・弁護士資格保有者525人19%
その他1人0%
出自別の新規税理士登録者数(「税理士界第1388号」より)

男女別の税理士登録者数

男性の税理士が66,889人に対して、女性の税理者は11,906人です。男性の税理士の割合は85%となっており、女性の税理士がとても少数派であることがわかります。

都道府県別の税理士登録者数

最も税理士が多いのが、当然ながら東京で23,388人となっています。次いで、大阪8,755人、愛知5,369人と続きます。

【2019年末時点の都道府県別の税理士登録者数】

都道府県税理士数都道府県税理士数都道府県税理士数
北海道1,848山梨304岡山760
青森276富山462広島1,567
岩手268石川605山口461
宮城923福井341徳島286
秋田239岐阜1,108香川541
山形284静岡1,792愛媛585
福島503愛知5,369高知222
茨城852三重776福岡2,777
栃木766滋賀520佐賀237
群馬846京都1,937長崎313
埼玉3,232大阪8,755熊本898
新潟811兵庫2,861大分445
長野908奈良546宮崎320
千葉2,524和歌山355鹿児島534
東京23,388鳥取168沖縄439
神奈川4,651島根192合計78,795
都道府県別の税理士登録者数(「税理士界第1388号」より)

税理士名簿の管理

税理士名簿の登録は、日本税理士会連合会が行っています。そのため、税理士事務所は、登録の申請書類等をその事務所が属する地区の税理士会に提出します。

地区の税理士会は、以下のよう地域ごとにあります。

地区の税理士会対象地域
東京税理士会東京
東京地方税理士会神奈川・山梨
千葉県税理士会千葉
関東信越税理士会埼玉・茨城・栃木
群馬・長野・新潟
近畿税理士会大阪・京都・兵庫
奈良・和歌山・滋賀
北海道税理士会北海道
東北税理士会宮城・岩手・福島
秋田・青森・山形
名古屋税理士会愛知(名古屋市・北名古屋市・半田市・常滑市・東海市 ・大府市・知多市・豊明市・日進市・清須市・西春日井郡 ・愛知郡・知多郡) ・岐阜
東海税理士会愛知(名古屋税理士会区域を除く)
静岡・三重
北陸税理士会石川・福井・富山
中国税理士会広島・山口・岡山
鳥取・島根
四国税理士会香川・愛媛・徳島
高知
九州北部税理士会福岡・佐賀・長崎
南九州税理士会熊本・大分・鹿児島
宮崎
沖縄税理士会沖縄
地区の税理士会(「国税庁のホームページ」より)

地区税理士会の支部

地区の税理士会はさらに細かく支部に分かれています。参考までに北海道会の支部を紹介します。

支部対象地区住所
札幌中支部札幌市(中央区)〒064-0823
札幌市中央区北3条西20丁目2番28号 北海道税理士会館内2階
札幌西支部札幌市(中央区、西区、手稲区)〒064-0823
札幌市中央区北3条西20丁目2番28号
北海道税理士会館内2階
札幌北支部札幌市(北区、東区)・石狩市・新篠津村・当別町〒064-0823
札幌市中央区北3条西20丁目2番28号
北海道税理士会館内2階
札幌東支部札幌市(白石区、厚別区)・江別市〒064-0823
札幌市中央区北3条西20丁目2番28号
北海道税理士会館内2階
札幌南支部札幌市(豊平区、南区、清田区)・恵庭市・北広島市・千歳市〒064-0823
札幌市中央区北3条西20丁目2番28号
北海道税理士会館内2階
小樽支部小樽市・余市町・仁木町・古平町・積丹町・ニセコ町・喜茂別町・京極町・倶知安町・岩内町・共和町・蘭越町・寿都町・黒松内町・赤井川村・真狩村・留寿都村・神恵内村・泊村・島牧村〒047-0024 小樽市花園4丁目
22番21号 小樽公園BLD
函館支部函館市・北斗市・江差町・上ノ国町・厚沢部町・乙部町・奥尻町・せたな町・今金町・七飯町・松前町・福島町・八雲町・長万部町・森町・鹿部町・木古内町・知内町〒040-0013 函館市千代台町3番8号
旭川支部旭川市・稚内市・深川市・留萌市・富良野市・名寄市・士別市・浜頓別町・中頓別町・枝幸町・利尻町・利尻富士町・礼文町・遠別町・天塩町・幌延町・豊富町・妹背牛町・秩父別町・雨竜町・北竜町・沼田町・幌加内町・増毛町・小平町・苫前町・羽幌町・鷹栖町・当麻町・比布町・愛別町・上川町・東川町・美瑛町・東神楽町・上富良野町・中富良野町・南富良野町・和寒町・剣淵町・下川町・美深町・中川町・猿払村・初山別村・占冠村・音威子府村〒070-0035 旭川市5条通5丁目左10号
旭川建設業会館2階
釧路支部釧路市・根室市・釧路町・白糠町・標茶町・弟子屈町・厚岸町・浜中町・別海町・標津町・中標津町・羅臼町・鶴居村〒085-0847 釧路市大町1丁目1番1号 道東経済センタービル2階
帯広支部帯広市・芽室町・音更町・広尾町・本別町・士幌町・上士幌町・鹿追町・新得町・清水町・大樹町・幕別町・足寄町・陸別町・池田町・豊頃町・浦幌町・中札内村・更別村〒080-0016 帯広市西6条南6丁目3 ソネビル2階
岩見沢支部岩見沢市・夕張市・美唄市・三笠市・南幌町・由仁町・長沼町・栗山町・月形町・浦臼町〒068-0835 岩見沢市緑ヶ丘5丁目143番地34
飯田枢税理士事務所内
滝川支部滝川市・芦別市・赤平市・砂川市・歌志内市・奈井江町・上砂川町・新十津川町〒073-0025 滝川市流通団地1丁目1番7号
鈴木勝夫税理士事務所
北見支部北見市・網走市・紋別市・大空町・訓子府町・置戸町・佐呂間町・美幌町・津別町・斜里町・清里町・小清水町・遠軽町・湧別町・滝上町・興部町・雄武町・西興部村〒093-0006 網走市南6条東4丁目4番地の6
税理士法人北翔会計内
室蘭支部室蘭市・登別市・伊達市・壮瞥町・豊浦町・洞爺湖町〒050-0083 室蘭市東町2丁目16-9 グランドール東町
苫小牧支部苫小牧市・白老町・浦河町・厚真町・日高町・平取町・新冠町・様似町・えりも町・安平町・むかわ町・新ひだか町〒053-0018 苫小牧市旭町1丁目2-13 苫小牧税理士会館
地区税理士会の支部(「国税庁のホームページ」より)

税理士の未来

札幌の税理士

残念ながら「税理士」という仕事は将来的には、AIに駆逐される仕事の上位に挙げられます。

近い将来は、経理の仕事の99%はAIに代替されますし、それに伴い税理士の仕事も90%以上がAIに代替されます。

国税庁もAIを活用したチャットボットで税務相談窓口を運営しようとしていますし、税務署の税務調査自体もAIに取って代わられるのは時間の問題でしょう。

まとめ

いかがでしょうか。税理士の仕事内容や競争の激化、将来的には真っ先にAIに駆逐されてしまうリスクがある仕事であることが分かったと思います。

今後の税理士という仕事は、これまでの規制業種の枠組みを超えて高い付加価値を提供することが求められていきます。

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
 プロフィール詳細へ
友だち追加
                                                       

この記事をSNSでシェア・保存