税理士が教える「交際費」の使い方

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交際費

交際費は、起業家や経営者が知っておくべき最も重要な勘定科目の1つです。節税にも非常に役立つ勘定科目です。

こんにちは。田中将太郎公認会計士・税理士事務所です。今回は、「交際費」の税務上の処理について解説します。

所要時間: 3分

交際費について、2ステップで解説していきます。

  1. 「交際費」とは

    税務上、どのような費用が「交際費」になるのかを説明します。

  2. 「交際費」の損金算入

    交際費を損金算入(必要経費に)できる場合とそうでない場合について解説します。

「交際費」とは

交際費とは、社内外の関係者に対して、飲食や贈答品を提供した際に生じる支出です。

国税庁では以下のような定義をしています。

”交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。

国税庁ホームページ

税務上の「交際費」の範囲

社内外の人に飲食や贈答品を提供した場合は、基本的には「交際費」となりますが、例外的に以下の場合は、「交際費」としないことができます。

  1. 「福利厚生費」にあたる場合
  2. 取引先への接待で1人あたり5,000円以下の飲食費
  3. 「広告宣伝費」にあたる場合
  4. 「会議費」にあたる場合
  5. 「取材費」にあたる場合
  6. 「給与」にあたる場合

1.「福利厚生費」にあたる場合

これは、国税庁が以下のように定義する場合です。

”専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用”

具体的には、忘年会や懇親会などの「従業員におおむね一律に」提供される飲食や行事にかかる費用です。

そのため、役員だけの飲食会や特定の人だけの打ち上げなどは、「福利厚生費」ではなく「交際費(社内飲食費)」として処理する必要があります。

参考:国税庁ホームページ「交際費等と福利厚生費との区分」

2.取引先への接待で1人あたり5,000円以下の飲食費

取引先への接待で1人あたり5,000円以下の飲食費」も税務上の「交際費」から除外することができます。

この支出は、多くの場合は、会計上「会議費」として計上することが多いです。

国税庁は次のように定義しています。

”飲食その他これに類する行為(以下「飲食等」といいます。)のために要する費用(専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用”

国税庁ホームページ

参考:国税庁ホームページ「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」

つまり、取引先への接待交際費であっても、1人あたり5,000円以下の支出であれば、「交際費」とせずに、常に税務上の必要経費として損金算入してよいということです。

しかし、これは特例なので、次の事項を記載した書類を必ず保存する必要があります。

  • 飲食等のあった年月日
  • 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
  • 飲食等に参加した者の数
  • その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称及び所在地(店舗がない等の理由で名称又は所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名又は名称、住所等)
  • その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項

なお、この規定は、社内の人と飲食をする「社内飲食費」には適用されませんので注意してください。

3.「広告宣伝費」にあたる場合

取引先などに贈答品を送る場合も、基本的に「交際費」に該当します。しかし、その支出が「広告宣伝費」に該当するような場合は、「交際費」ではなく、「広告宣伝費」として処理してください。

たとえば、カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を取引先などに贈与する場合は、「交際費」ではなく、「広告宣伝費」として税務上も必要経費として計上(損金算入)できます。

参考:国税庁ホームページ「交際費等と広告宣伝費との区分」

4.「会議費」にあたる場合

会議を目的とする支出の場合は、その場で飲食等を提供した場合でも、「交際費」とする必要はなく、「会議費」として計上してください。

国税庁では次のような支出を例示しています。

”会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用”

国税庁ホームページ

5.「取材費」にあたる場合

取材を行う際の座談会やその他情報収集に通常要するような飲食費も「交際費」とはせずに、「取材費」などの適切な科目として処理し、税務上も必要経費に計上(損金算入)できます。

国税庁では次のような支出を例示しています。

”新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用”

国税庁ホームページ

6.「給与」にあたる場合

社内の従業員等のための飲食であっても、「福利厚生費」にも「交際費」にも該当しない場合もあります。それは、従業員のプライベートな飲食代(例えば個人の合コン代など)です。このような場合は、従業員への「給与」として計上します。

この場合は、法人では税務上は必要経費に計上(損金算入)できますが、個人では通常の給与と同じように所得税が課されます。

なお、役員のプライベートな支出については、「役員報酬」となります。役員報酬は、毎月定額であることが求められる等の厳しい税務上の規制はあるので、注意してください。

関連記事:3分でわかる「役員報酬」のすべて

「交際費」の損金算入

交際費

「交際費」は、税務上は、原則的には、全額が損金不算入(必要経費にできない)というように規定されています。

しかし、「交際費」はビジネスを運営する上で無くてはならない支出でもあるので、例外的に中小企業の場合には一部の「交際費」を損金算入(必要経費に計上)できる制度を設けています。

法人の規模に応じて次の3段階で設定されています。

  1. 資本金が100億円超の法人
  2. 資本金が1億円超(100億円以下)の法人
  3. 資本金が1億円以下の法人

1.資本金が100億円超の法人

資本金が100億円を超える会社は、すべての税務上の「交際費」を必要経費に計上できません(全額損金不算入)

2.資本金が1億円超(100億円以下)の法人

資本金が1億円超(100億円以下)の会社は、「交際費」に含まれる飲食費の部分の半額(50%)のみを必要経費に計上(損金算入)することができます。

なお、「交際費」のうち、「社内飲食費」や「贈答費」に該当する場合は、この規定は適用されず必要経費にできません(損金不算入)

国税庁では、損金算入額を以下のように定義しています。

”交際費等の額のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)の50%に相当する金額を超える部分の金額”

国税庁ホームページ

3.資本金が1億円以下の法人

資本金が1億円以下の中小企業の場合は、さらに優遇を受けることができ、上記で説明した「資本金が1億円超(100億円以下)の法人」の特例制度かもう一つの制度のうち、より有利な方を選択して適用することができます。

そのもう一つの制度とは、税務上の「交際費」のうち800万円までを全額必要経費に計上(損金算入)できるというものです。

小規模な会社の場合は、交際費は800万円もあれば十分な場合が多いので、基本的には交際費を必要経費に計上(損金算入)できるということになります。

なお、「交際費」の額が800万円を超えるような会社は、「取引先との飲食費の半額」と800万円のより大きい金額を必要経費に計上(損金算入)することができます。

まとめ

「交際費」について理解は深まりましたでしょうか?

ビジネスを成長されるためには、「交際費」が不可欠な場合が多い一方、余分な税金は払いたくないですよね。しっかりと「交際費の損金不算入制度」を理解して、必要な書類をそろえて、不必要な支出を交際費としないような工夫をしてください。

ハードルが高い部分でもあるので、税理士や公認会計士などの専門家とよく議論して、この「交際費」を攻略してください。

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
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