資本金を設定する前に知っておくべきこと

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資本金の設定

昔は、株式会社をつくるのに資本金は最低でも1,000万円の資本金が必要でした。しかし、今では1円でも会社を作れるようになり、多くの人にとって会社設立のハードルが大きく下がりました。

今回は、会社設立時や増資の際に、資本金をいくらに設定したらよいかについて解説します。

所要時間: 5分.

3つのステップで資本金を設定する前に知っておくべきことを解説します。

  1. 資本金の設定で考えるべきこと

    まずは、資本金が何かを知り、資本金を設定する際に検討すべき事項を説明します。

  2. 税務上で”お得な”資本金の額

    資本金の額は、支払う税金に大きく影響しますので、税務上で”お得”になる資本金の設定ラインを説明します。

  3. 資本金設定の裏技

    税務上で”お得な”資本金を設定したいけれど、自己資本が大きくて信頼性のある会社にしたい、というようなニーズにこたえます。

資本金の設定で考えるべきこと

資本金の設定を考える際に検討すべきことは、2つです。

  1. 会社の信頼性
  2. 税務上の優遇

つまり、資本金を大きく設定すればするほど、会社の社会的信頼が高まりますが、税務上の優遇は減ります。

これから会社の信頼性と税務上の優遇について、詳しく説明していきます。

会社の信頼性

資本金が大きいほど信頼性が高まり、それによって取引先との関係を築きやすかったり、銀行などからの資金調達がしやすくなります。

取引先との関係が築きやすくなる?

多くの会社は、新しい会社と取引を始めるにあたって、その取引先が財務的に安定しているかを確認し、貸倒リスクを評価します。貸倒リスクが高いということは、その取引先に何かを売った場合に、代金を回収できない可能性が高いことを意味します。

資本金の額は、貸倒リスクを評価する一つの指標となるので、取引先からの信頼を勝ち取るためにも、資本金の額の設定は気をつけなければいけません。

それでは、取引先との関係を築くためにどれくらいの資本金を設定しておいた方がよいのでしょうか。

あくまでも目安ですが、直近1年間で想定する運転資金(又は売上高)の2~3か月分は最低でも資本金として設定しておくべきです。

事業を始めて最初の1か月分の仕入を行う資金があり、その後1~2か月間は思ったように売上が上がらなくても自己資金で持ちこたえられるというような金額イメージです。

金融機関から資金調達がしやすくなる?

資本金が大きいと銀行などの金融機関から資金調達をできる額が大きくなる傾向にあります。それは、金融機関が融資額を決定する際に、負債比率を気にするからです。

負債比率(%)=負債÷自己資本×100

負債比率とは、自己資本に対して何倍の負債があるかを確かめる指標です。

銀行からの融資を受ける場合、事業の属性や成長性にもよりますが、この負債比率が10倍を超えるような融資を獲得しようとするのは現実的ではありません。事業を始めてすぐにどれくらいの融資を受ける必要があるかによって、資本金の額をじっくり検討しましょう。

税務上の優遇

税務上の優遇

資本金が高いほど会社の信頼性を高めることができますが、税務上は、資本金が低い方が有利です。

資本金の額は、会社法上や税法上で会社の規模を決める重要な指標となります。もし会社が、中小企業や小規模事業者と認められると、多くの税務上の優遇を受けることができます。

税務上で”お得な”資本金の額

それでは、税法上の優遇が受けられる資本金の額のラインを具体的に解説します。

資本金の額節税できる内容
1,000万円未満2年間は消費税の納税義務が免除される免税事業者となる。
800万円以下の所得部分に対して法人事業税の軽減税率が適用されます。(資本金が1,000万円以上で複数の都道府県に跨いで事業所を有している場合は適用されない)
1,000万円以下資本金が1000万円超と比べて、法人住民税の均等割が、約10万円低くなります。
2,143万円未満会社設立時の登録免許税が低いです。2,143万円未満の場合は、会社設立時の登録免許税が15万円で一律ですが、2,143万円以上の場合は、資本金×7%となり15万円を超えます。
1億円以下資本金1億円以下の場合は、「中小法人」として扱われるため、法人税に対してさまざまな税制優遇が受けられます。
・法人税
たとえば、所得800万円以下の部分に対して軽減税率(15%または19%)が適用されたり、欠損金の繰越が可能です。
・法人住民税
資本金が1億円超の場合と比べて、法人割の住民税率が約3%低く、均等割も約30万円低くなります。
・法人事業税
資本金が1億円以下の場合、利益がでない限り法人事業税がかかってきません。しかし、資本金が1億円を超えると、外形標準課税の対象となるため、たとえ利益が出ていなくても、資本金×0.5%分だけ固定で法人税事業税がかかってきます。
10億円以下資本金が10億円を超える場合は、毎年の法人住民税の均等割の額が約170万円高くなります。
なお、資本金が50億円を超えるとさらに150万円ほど法人住民税の均等割が増えてきます。
資本金の額ごとの節税内容

このように資本金の額が、一定の金額を超えると税務負担が大きく変わることがわかります。資本金の額が、一円違うだけで、支払う税金の額が大きく変わってくるので、慎重に資本金を設定することをオススメします。

法人税、法人住民税の法人割・均等割や法人事業税など細かい話がでてきました。それぞれの税金については、関連記事:「経営者が知っておくべき法人の税金」で解説していますので、こちらもご一読ください。

関連記事:「経営者が知っておくべき法人の税金」

資本金設定の裏技

資本金剰余金の活用方法

これまで説明した通り、資本金が高い方が信頼性が高まりビジネスメリットがある一方、税務上のメリットを得るためには資本金を高く設定できないというジレンマにハマってしまいます。そこで抜け道として、資本剰余金を使う方法を説明します。

資本剰余金とは、株主からの出資分のうち、資本金以外を指します。資本剰余金は、資本準備金とその他資本剰余金に分類されます。

いったん細かい話は置いておいて、なぜ資本剰余金が抜け道として活用できるかを説明します。

さきほど、銀行から融資を受けるときに負債比率を意識してくださいとお伝えしました。負債比率は、負債÷自己資本ですから、負債比率を下げて銀行から融資を受けやすくするためには、自己資本を厚くする必要があります。

ここで、資本剰余金は、自己資本の一部ですから、資本金を増やす代わりに資本剰余金を増やすことで、税務上の優遇を受けながら会社の信頼性を高めることができるのです。

たとえば、資本金を900万円とし、資本剰余金を500万円としておけば、自己資本は1,400万円となり1,000万円以上になりますが、資本金単体だと1,000万円未満なので、会社設立後の2年間は、消費税は免税となるのです。

このように資本剰余金をうまく使えば、税務上の資本金のハードルにとらわれず、会社に出資をすることができます。なお、税務上、資本金剰余金が資本金のハードルの例外となるかは、税務項目ごとに異なるので、念のため事前に専門家に確認しましょう。

利益剰余金も重要?

自己資本を厚くする方法として、もう一つ利益剰余金があります。自己資本には、資本金、資本剰余金に加えて、利益剰余金も含まれます。

自己資本 = 資本金 +資本剰余金 + 利益剰余金

利益剰余金とは、会社が積み上げてきた利益の累積額のことです。この利益剰余金を増やせば、自己資本が大きくなり会社の信頼性を高めることができます。

急成長ビジネスの場合は、利益剰余金が増えてすぐに自己資本が大きくなるので、あまり資本金や資本金剰余金にこだわる必要はない場合もあります。自社のビジネスの特性に合わせて、資本金をどのぐらいに設定するかしっかり考えることをおすすめします。

田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

田中将太郎公認会計士事務所/税理士事務所 代表
北海道札幌市と東京を拠点し、個人事業主やスタートアップから大企業までを幅広く支援。 会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。無料相談は大歓迎。
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