税理士・公認会計士が教える「会社設立」【失敗しないためのコツを解説】

こんにちは。田中将太郎公認会計士事務所です。

最近は、多くの方から会社設立について相談されるので、記事でまとめておくことにします。

・「個人事業主と会社のどちらにするか悩む」
・「会社設立をしてみたいけど、何から始めたらよいか分からない」
・「お得に会社を設立したい」
・「会社の設立を相談したいけど誰にしたらいいかわからない」
・「会社設立後に有利になるようなポイントを知りたい」

というようなニーズを持っている方は、ぜひ一読してみてください。

この記事は、2022年2月8日に更新しています。

所要時間: 8分

ここからは次の3つのステップで解説していきます。まずは目次を見てみて、自分に必要なパートから読み進めてください。

  1. 会社設立の基礎知識

    会社設立前に知識を得ておくことは非常に重要です。無駄な時間とお金を節約して効率的に設立手続きを行えます。そして、会社設立後も有利にビジネスを進めていく時にも役立ちます。会社設立を専門家に依頼すべきかについてもここで解説します。

  2. 会社設立の流れ

    会社設立をどのようなステップで進めていくかを解説します。一つ一つのステップをゆっくり確認しながら読み進めてもらえれば、自分でも会社を設立できるようになります。

  3. 会社設立後にすべきこと

    会社設立登記後にも必要な手続があることをご存じでしょうか?税務署への会社設立申請などのやらばければいけないことについて解説します。創業だからこそ得られる助成金や資金調達のメリットについても説明します。

会社設立の基礎知識

基礎知識

まず、会社設立を行う上での基礎知識を身に着けておきましょう。事前にしっかりと知識を身に着けておけば、会社設立のメリットを最大限に活用できますし、設立後も有利にビジネスを行っていくことができます。

会社設立のメリット

皆さんの中には、「費用をかけてまで、会社設立を行うメリットって何?」という疑問を持つ方もいると思います。そこで、個人事業主と比較した際の会社設立のメリットを解説します。

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キリン

メリットは、大きく分けて「事業の信用力アップ」と「税務メリット」の2点です。

事業の信用力がアップ

会社(法人)の場合は、登記や決算公告の義務などがあることから、一般的に取引相手から信頼が得られやすいと言えます。会社を設立すると税務や会計などのの面倒な問題を扱う必要がありますが、それと引き換えにビジネスを有利に進めるための信用力を高めることができます。

信用力が上がることで、金融機関からの借入も楽になります。一般的に、個人事業主と法人では、貸付限度額や金利水準などに違いがありますので、より大きい金額を低金利でと考えた場合は、法人の方が有利な場合が多いです。

企業向けの補助金やベンチャーキャピタル(VC)などの投資家からの出資を受けられるチャンスが広がることから、資金調達の幅も広がります。

税務メリット

会社を設立すると、いわゆる節税に役立つ場合があります。厳密に言うと、個人事業主の方が有利な場合もあるので、ここでは一般的な会社設立による税務上のメリットを言及するにとどめます。

メリット内容
税率が下がる可能性あり税率は、ビジネスが大きくなると個人事業主よりも法人の方が有利になります。法人では、法人税・地方税率は30%程度で大きく変化しませんが、個人事業主は、累進課税により所得税・住民税率が50%超になる可能性があります。
費用になる範囲が増える法人の場合には、個人では税務上経費にならない寄付金や保険料などを経費計上することができます。また、本人や家族の給料を経費とすることができます。
欠損金を10年間繰り越し会社が赤字になった時に発生する「欠損金」を翌年以降に繰り越すことができます。そのため、翌年以降に黒字になったとしても、過去の赤字分だけ税金が減額されます。青色申告が前提として10年間繰り越すことができます。
最初2年間は消費税が免除資本金1,000万円未満の場合だけですが、会社設立後2年間は消費税が免除されます。3年目以降も免除される場合がありますが、消費税法の細かい話なので、ここでは説明しません。
会社設立による税務メリット

会社設立に必要な費用

会社設立のメリットを見てきましたが、いったい会社設立にどれくらい費用がかかるのでしょうか?

主にかかる費用は3つで、合計で約24万円です。

  1. 定款認証手数料:5万円
  2. 印紙代:4万円
  3. 登録免許税:15万円(または資本金×7%のいずれか低い方)
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パンダ

ここにセリフを入れるここで重要なことは、印紙代と登録免許税のコストを減らすことができることです。

紙の定款でなく、電子定款にすることで印紙代が0円になります。

地方自治体の制度を使うことで、登録免許税は半額(7.5万円)にできる可能性があります。(各地方自治体によって制度の有無、内容に違いがあるので注意してください。)

その結果、合計で約12.5万円(当初の約24万円)に半減します。創業期に無駄なコストをかけないためにも、しっかりと制度を理解して会社設立を行うことが大切です。

本当に株式会社でいいの?会社には種類がある!

会社といえば、「株式会社」をイメージする人がほとんどだと思いますが、会社には「株式会社」の他に、「合同会社」「合名会社」「合資会社」「一般社団法人」「一般財団法人」などがあります。

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キリン

しかし、一般的なビジネスを行う上で検討すべきなのは、「株式会社」と「合同会社」の2つです。

「株式会社」のメリット

「株式会社」は誰もが知っている法人形態です。そのため、合同会社よりも信頼性が高く、一般の消費者に商品やサービスを提供する場合は、株式会社の方が向いていると言われます。また、ベンチャーキャピタルからの出資や将来的な株式上場を視野に入れている場合も、株式会社の方がよいでしょう。

「合同会社」のメリット

「合同会社」は、簡単にいうと低コスト、かつ、管理が簡単です。合同会社の会社設立費用は、株式会社に比べて約10万円安く、官報などによる決算公告義務がありません。

「合同会社」なんて聞いたことがないと不安に思う方もいるかもしれませんが、外資系企業の日本法人で合同会社形態をとっている会社は多いです。例として、AmazonやGoogleの日本法人は、合同会社です。

もし、後から「合同会社」から「株式会社」に変更したい場合は、約10万円のコストで簡単に変更できます。最初から「株式会社」を作る場合と「合同会社」から変更する場合でほとんどコストが変わらないので、とりあえず会社を作りたいという人は「合同会社」でも十分でしょう。

関連記事:「数字で見る会社設立【会社設立数編】株式会社と合同会社を公認会計士・税理士が徹底比較」

関連記事:「合同会社とは【公認会計士・税理士が徹底解説】」

会社設立は誰に頼む?専門家について知ろう!

会社設立は、税理士、公認会計士、司法書士、行政書士、社会保険労務士といった色々な仕業の先生にお願いすることができます。そこで、どの仕業に会社設立を依頼した方が良いか解説します。

実は会社設立の手続き自体は、それほど難しいものではないため、どの仕業が行っても大きな差はでないと思います。そのため、専門家選びで考えるべき点は、

  • どのくらいコストがかかるのか?
  • 会社設立後にどのようなメリットを得られるか?

の2点です。

会社設立は、会社設立後もサポートしてもらえる信頼できる専門家を見つける良い機会なので、事業開始後のことも考えて専門家選びをするとよいです。

専門家のコストについて

会社設立後に何ら専門家の利用を検討していないのであれば、司法書士にお願いすると5~6万円以下くらいで会社設立単体では比較的安くてスムーズに登記手続を代行してもらえます。

一方で、会社設立後も専門家に税務や社会保険などのサポートをしてほしい場合には、他の仕業の専門家にお願いした方が、トータルでコストが低くなる場合があります。

たとえば、税理士や公認会計士の場合は、会社設立後の会計処理や決算、確定申告などがすべてセットになっているケースがあり、実質的に会社設立のコストが無料なんてこともあります。

会社設立後のメリットについて

それでは、会社設立後にどのような専門家のサポートが必要になるのでしょうか?

まずは、社会保険・厚生年金・雇用保険です。会社の代表者や従業員は、これらの保険に入らなければいけないため、自分で年金事務所に行って手続きをするのが面倒という方は、社会保険労務士に頼むと便利です。

多くの経営者が苦労するのが会計や税務です。会社設立後は毎年、官報などによる決算公示が必要になるため、従業員に経理のプロフェッショナルがいないベンチャー企業にとって、公認会計士による会計サポートはとても便利です。

資金調達や助成金の獲得を予定している場合は、しっかりとした決算書が前提なので、早い段階から会計処理を確立しておく必要があります。

また、会社の場合は個人事業主に比べて税務が複雑で、税務署による税務調査が入るリスクが非常に高くなります。税務署から罰則を受けないためにも、会社設立時点からの税理士や公認会計士の税務サポートは必須だと言えます。

もし、設立する会社が許認可事業(建設業、人材派遣、運送業、飲食業など)を行う場合は、その許認可申請のために行政書士にサポートをお願いする必要があるかもしれません。

会社設立を専門家に依頼する前に、将来の自分の会社が「何をするのか」「どんなサポート」が必要なのかをじっくりと考えることが大切です。

会社設立の流れ

会社設立の流れ

会社設立の基礎はなんとなく理解できたと思います。次は、いよいよ実際に会社を設立する流れについて解説していきます。複雑に思えるかもしれませんが、一つずつゆっくり見ていけば大丈夫です。早速見てみましょう。

まずは、会社設立の準備から、設立後の手続きまでの流れを大まかに掴んでいきます。

①下準備

会社設立をスムーズに行うために必要なものを準備しましょう。場合によっては1か月程度かかる場合があります。

②定款作成と認証

定款をしっかり作らないと会社設立後に無駄な時間とお金をかけることになるので慎重につくりましょう。電子定款を選択すると会社設立コストが抑えられます。

③資本金の設定・払い込み

会社設立後の軍資金となる部分です。制度上は1円でも大丈夫ですが、現実的ではありません。将来的に納める税金の額にも影響するので大切です。

④設立登記申請書、添付書類の作成

書類が多くかなり面倒です。まずは書類の全体像を把握してください。

⑤設立登記申請

いよいよ必要書類を持って法務局に行きます。当日は印紙代がかかります。

⑥設立登記後の各種行政などへの手続き

登記が完了してもまだ必要な手続はあります。税務署、役所、年金事務所で手続をしましょう。

下準備

まずは、必要なものを準備します。スムーズに会社を設立するには、ここが一番大切です。

会社の代表印(必須)
マイナンバーカード(あると便利。自分で電子定款申請を行う場合は必須。)
認定特定創業支援の認定書(あると登録免許税が半額になります。)

定款作成

定款とは、法人の目的・組織・活動・構成員・業務執行などに関する基本規約・基本規則です。

定款作成で重要なことは、

  1. 「絶対的記載事項」はすべて記載する
  2. 「紙の定款」または「電子定款」の選択をする

定款を作成した後は、近くの「公証人役場」に連絡してください。公証人役場に訪問する前にメールで作成した定款のワードやPDFを送っておくと不備がある場合に教えてくれます。

自分で定款の認証をお願いする場合は、定款と一緒に「実質的支配者になるべき者の申告書」を提出する必要があります。

定款が完成したら、

  • 代表者の実印
  • 印鑑証明書
  • 身分証明書(運転免許証など)

を持って「公証人役場」を訪問します。この際に、定款認証料(5万円)とその他手数料(約2千円)がかかります。

絶対的記載事項って何?

「絶対的記載事項」は、定款に必ず記載しなければいけない事項です。もし記載されていないと、定款として認められません。

・事業目的
・商号
・本店所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所
・発行可能株式総数

電子定款にすると4万円安くなる!

紙の定款認証には収入印紙代として4万円が必要ですが、電子定款では0円です。

電子定款の認証を行う場合には、法務局の登記・供託オンライン申請システムを利用し、自分のパソコンに接続したカードリーダーからマイナンバーカードを読み込ませることで簡単に手続ができます。

資本金の設定・払い込み

資本金の払い込み方法は、「金銭出資」と「現物出資」の2パターン。多くの場合は、「金銭出資」だと思うので、ここでは「金銭出資」のみを説明します。

「現物出資」の場合には、出資する現物の時価評価やその評価証明が必要になる場合があり、弁護士や公認会計士に依頼する必要があるので注意してください。

資本金はいくらに設定する?

資本金は制度上は1円でもよいことになっていますが、会社の信用力にも影響しますので、よく考えてから設定しましょう。設立費用を含む会社の初期コストは、資本金から支払えるので、資本金の額は初期コストを超えるように設定しておくとよいです。

迷ったら資本金は1,000万円未満に設定しましょう。理由は以下の4つのメリットを受けることができ、お得だからです。

理由メリット
①消費税が免税資本金1,000万円未満は消費税が2年間免税ですので、かなりお得です。しかし、資本金が1,000万円以上の場合は、この特例は適用されません。
②住民税が低い資本金1,000万円以下の場合は、1,000万円超と比べて住民税が数万円お得になります。
③登録免許税が低い資本金2,143万円未満の場合は、登録免許税は15万円で固定です。資本金が2,143万円以上になると会社設立時の登録免許税が「資本金×7%」の規定を受けて高くなります。
④中小法人の特例資本金1億円以下の場合「中小法人」扱いになるため、多くの税務上の特例が受けられかなりお得です。
資本金の金額による税務メリット

関連記事:「会社設立時の資本金の設定【5分で完全攻略】」

資本金の払い込みの流れ

  1. 【振込】資本金を自分名義の口座に自分名義で振込みます。
  2. 【通帳のコピー】通帳の表紙、1ページ目、振込をしたページのコピーを取ります。(ネットバンキングの場合は、スクリーンショットでも大丈夫です。)
  3. 【払込証明書の作成】通帳のコピーと一緒に綴ります。
  4. 【押印】払込証明書の書類の継ぎ目に会社代表印を押印します。
  5. 【法人口座に入金】法人設立後、法人名義の口座を開設し、資本金を個人名義から法人名義へと移します。

設立登記申請書、添付書類の作成

登記申請書のフォーマットは、法務省のホームページで入手できます。

株式会社の場合と合同会社の場合で異なりますし、株式会社でも「取締役会設置会社」と「取締役会を設置しない会社」とで異なりますので注意してください。

「取締役会を設置しない会社」の場合に申請書に添付する書類は以下です。

  1. 定款
  2. 発起人の同意書
  3. 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
  4. 設立時取締役(及び設立時監査役)の就任承諾書
  5. 印鑑証明書
  6. 本人確認証明書
  7. 設立時取締役(及び設立時監査役)の調査報告書及びその附属書類
  8. 払込みを証する書面
  9. 資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書
  10. 委任状(※代理人に申請を依頼する場合のみ)

設立登記申請

設立登記申請は、法務局でできます。申請には登録免許税が15万円かかりますので、現金を持参して窓口で同額分の収入印紙を購入して申請書に貼ってください。法務局での処理には2~3週間かかる場合があるので、余裕をもって申請に行ってください。

会社設立後にすべきこと

会社設立後にすべきこと

法務局での会社設立手続が完了すると、電話がかかってきますので、また法務局に書類などを受け取りに行ってください。それで会社設立登記は完了ですが、まだいくつかやることがあります。

まだまだある事務手続き!

最低限やっておくべきことが次の5つです。絶対忘れずに手続をしましょう。

  • 「印鑑証明書」と「履歴事項全部証明書」を取得
  • 税務署への会社設立申請
  • 市町村への会社設立申請(住民税に関する申請)
  • 年金事務所での社会保険の手続き
  • 銀行口座の開設

資金調達を行おう!

銀行融資を受ける

ほとんどの銀行は、創業したばかりの企業向けの融資の制度を持っています。しかし、創業したからといって無条件で融資を受けられるわけではありません。しっかりとビジネスプランを練ってから銀行に相談に行くことをおすすめします。

政策金融公庫では、創業サポートと合わせて創業融資も提供しています。まずは、政策金融公庫の融資制度を調べてみることをオススメします。

参考:政策金融公庫ホームページ

補助金・助成金を獲得する

世の中には、色々な補助金、助成金がありますが、中には創業・ベンチャー企業向けだったり、創業3~5年以内だと通りやすい補助金・助成金があります。補助金・助成金の申請には、ビジネスプランを含むたくさんの書類を作成しなければならず、気が引けるかもしれませんが、できる限りチャレンジしてみましょう。どんな補助金や助成金があるか、獲得方法などについては専門家に相談してみてください。

ベンチャーキャピタルを活用する

ベンチャーキャピタルからの資金調達は、返済義務のある銀行融資と違い、返済義務のない資本金増強となるため、創業期にはありがたい手段です。しかし、出資の条件さえよければ事業を安定させることができるので、創業期に検討しておく重要な資金調達手段の一つです。

まとめ

まとめ

いかがでしょうか?会社設立の手続き、その直後に必要となることについて、大体あたまに入ったと思います。
会社設立は単なる書類上の手続でなく、設立のビジネスを左右するとても重要なプロセスなので慎重に進める必要があります。不安なことや曖昧なことがあれば、ぜひ専門家に相談してみてください。

田中国際会計事務所(田中将太郎公認会計士・税理士事務所)へご相談の方は、こちら

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田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
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