交際費とは?損金算入の800万円ルールと1人1万円基準を税理士が解説【2026年最新】

交際費は、税務上は原則として全額が損金不算入(経費にできない)とされる特殊な費用です。ただし、資本金1億円以下の中小法人であれば「年800万円までの全額損金算入」と「接待飲食費の50%損金算入」のいずれか有利な方を選択でき、実務上は多くの中小企業で交際費のほぼ全額を損金にできます。さらに2024年4月1日以後に支出した1人当たり1万円以下の飲食費は、要件を満たせばそもそも交際費から除外され、全額損金算入が可能です。
この記事では、公認会計士・税理士が、交際費の定義から損金算入ルール(有利判定シミュレーション付き)、交際費にならない費用との境界、仕訳・勘定科目、税務調査で否認されやすいポイント、個人事業主の取扱いまで、国税庁タックスアンサーおよび租税特別措置法の原文(一次情報)に基づいて解説します。
なお、この損金不算入制度は租税特別措置法上の時限措置であり、現行制度は2027年(令和9年)3月31日までの間に開始する事業年度が適用対象です(租税特別措置法61条の4第1項)。
交際費とは|税務上の定義と範囲
税務上の「交際費等」は、国税庁タックスアンサーNo.5265で次のように定義されています。
「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。」(出典:国税庁タックスアンサーNo.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算)
ポイントは3つあります。
- 相手は「事業に関係のある者」:得意先・仕入先に限らず、株主、金融機関、業界関係者など事業に関係する相手への支出が広く含まれます。
- 行為は「接待・供応・慰安・贈答など」:会食やゴルフ接待だけでなく、お中元・お歳暮などの贈答品、慶弔費(取引先向け)も交際費に含まれます。
- 会計上の勘定科目名では判定されない:帳簿上「会議費」や「雑費」で処理していても、実態が接待等であれば税務上は交際費として扱われます。逆に「交際費」で処理していても、税務上の交際費に該当しない費用は損金不算入の対象になりません。
つまり交際費の判定は「科目名」ではなく「支出の実態」で行われます。この点が、後述する税務調査での指摘につながりやすい理由です。
交際費の損金算入ルール|中小法人は「年800万円」か「接待飲食費50%」の有利選択
交際費等は原則として全額が損金不算入ですが、法人の規模(期末の資本金の額または出資金の額)に応じて、次の3区分の措置が設けられています(出典:国税庁タックスアンサーNo.5265)。
| 法人区分(期末資本金) | 損金算入できる金額 |
|---|---|
| 1億円以下の中小法人(※) | 次のいずれか有利な方を選択 ①年800万円(定額控除限度額)まで全額 ②接待飲食費×50% |
| 1億円超〜100億円以下 | 接待飲食費×50%のみ |
| 100億円超 | 全額損金不算入(算入できる金額なし) |
※資本金1億円以下でも、資本金5億円以上の大法人の100%子法人等(法人税法66条5項2号・3号に規定する法人)や一定の通算法人は中小法人の定額控除を使えず、「接待飲食費×50%」のみの適用となります。ホールディングス傘下の子会社は該当しやすいので注意してください。
「接待飲食費」とは
接待飲食費とは、交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用で、専ら自社の役員・従業員またはその親族に対する接待等のために支出するもの(いわゆる社内飲食費)を除いたものをいいます。取引先とのゴルフプレー代や贈答品は「飲食費」ではないため、50%損金算入の対象にはなりません。
定額控除限度額は「800万円×事業年度の月数÷12」
年800万円の定額控除限度額は、正確には「800万円にその事業年度の月数を乗じ、12で除して計算した金額」です。設立初年度や決算期変更で事業年度が12か月に満たない場合は月数按分されます(例:6か月決算なら400万円)。また、この定額控除は、確定申告書に交際費等の損金算入に関する明細書(法人税申告書の別表)を添付した場合に限り適用されます(租税特別措置法61条の4第7項)。
有利判定シミュレーション(資本金1億円以下の中小法人・12か月決算)
| 交際費等の総額 | うち接待飲食費 | ①800万円定額控除 での損金算入額 | ②接待飲食費50% での損金算入額 | 有利な選択 |
|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 300万円 | 500万円(全額) | 150万円 | ①定額控除 |
| 1,000万円 | 700万円 | 800万円 | 350万円 | ①定額控除 |
| 2,000万円 | 1,800万円 | 800万円 | 900万円 | ②飲食費50% |
| 3,000万円 | 2,600万円 | 800万円 | 1,300万円 | ②飲食費50% |
判定の分岐点はシンプルで、接待飲食費が1,600万円を超えると「②接待飲食費×50%」の方が有利になります(1,600万円×50%=800万円)。交際費の年間総額が800万円以下の会社であれば、①の定額控除で全額損金算入できるため、有利判定に悩む必要はありません。
交際費にならない費用|1人1万円以下の飲食費・会議費・福利厚生費との境界
「社外の関係者との飲食・贈答=すべて交際費」ではありません。次の費用は税務上の交際費等から除かれ、それぞれの科目で全額損金算入できます(出典:国税庁タックスアンサーNo.5265)。
1. 1人当たり1万円以下の飲食費(2024年4月1日以後の支出分)
取引先など社外の事業関係者との飲食費のうち、支出額を参加者数で割った金額が1人当たり10,000円以下のものは、交際費等から除外されます。この基準金額は令和6年度税制改正で引き上げられたもので、2024年(令和6年)3月31日以前に支出した飲食費については旧基準の5,000円以下が適用されます。
ただし、この除外を受けるには次の事項を記載した書類の保存が要件です。
- 飲食等のあった年月日
- 参加した得意先・仕入先など事業関係者の氏名または名称、およびその関係
- 参加者の数
- 費用の額、飲食店等の名称および所在地
- その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項
注意点が2つあります。第一に、専ら自社の役員・従業員やその親族との飲食(社内飲食費)にはこの1万円基準は適用されません。第二に、1万円以下かどうかの判定は、自社が採用している消費税の経理方式(税抜経理か税込経理か)で算定した金額で行います。税抜経理の会社なら税抜金額で、税込経理の会社なら税込金額で判定するため、同じ会食でも会社によって結論が変わり得ます。
1万円以下の飲食費と会議費の区分・記録の残し方など実務の詳細は、1人1万円以下の飲食費と会議費の区分の実務はこちらの記事で解説しています。
2. 会議費
会議に関連して、茶菓・弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用は交際費等に含まれません。社内会議だけでなく、取引先との商談・打合せに伴う通常の飲食も対象です。
3. 福利厚生費
専ら従業員の慰安のために行われる運動会・演芸会・旅行等のために通常要する費用は福利厚生費であり、交際費等から除かれます。忘年会・新年会などの社内行事の飲食費も、従業員におおむね一律に供与される通常の飲食であれば福利厚生費です。逆に、特定の役員・従業員だけで行う飲み会は福利厚生費にならず、社内飲食費として交際費に該当します(出典:国税庁タックスアンサーNo.5261 交際費等と福利厚生費との区分)。
4. 広告宣伝費
カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいなどを贈与するために通常要する費用は、交際費ではなく広告宣伝費です。また、不特定多数の一般消費者に対する景品の交付や試飲・試食のような宣伝的効果を意図した支出も広告宣伝費に区分されます(出典:国税庁タックスアンサーNo.5260 交際費等と広告宣伝費との区分)。
5. 取材費
出版物や放送番組の編集のために行われる座談会や、記事収集・取材のために通常要する費用も交際費等から除かれます。
6. 給与(役員・従業員の私的な費用)
事業と関係のない役員・従業員の私的な飲食代を法人が負担した場合は、交際費ではなくその人への給与(役員の場合は役員給与)として取り扱われます。給与とされると本人に所得税が課され、役員の場合は法人側でも損金算入が認められないケースがあるため、私的支出の混入は最も避けるべきパターンです。
交際費の仕訳と勘定科目
会計上の勘定科目は「交際費」または「接待交際費」を使うのが一般的です。前述のとおり税務上の交際費該当性は実態で判定されますが、日々の記帳の段階で「交際費」「会議費」「福利厚生費」を正しく区分しておくと、決算時の集計と申告書(交際費等の損金算入に関する明細書)の作成が正確かつスムーズになります。
仕訳例1:1人1万円以下の取引先との会食(交際費から除外)
取引先2名・自社2名の計4名で会食し、36,000円(1人9,000円)を法人カードで支払った場合。1人当たり1万円以下のため、書類保存要件を満たせば交際費等から除外できます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 会議費 | 36,000円 | 未払金 | 36,000円 |
仕訳例2:1人1万円超の接待(交際費・接待飲食費)
取引先3名・自社2名の計5名で接待し、65,000円(1人13,000円)を支払った場合。1万円を超えるため交際費等に該当します。社外関係者との飲食なので「接待飲食費」となり、中小法人でなければ50%損金算入の対象です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 接待交際費 | 65,000円 | 未払金 | 65,000円 |
摘要欄に「参加者」を残すのが実務の要点
1万円基準の書類保存要件(年月日・相手先の氏名と関係・参加人数・金額・店名)は、レシートに手書きメモを添える、会計ソフトの摘要欄・タグに記録するなどの方法で満たします。飲食業など業種特有の経理処理と合わせて整理したい方は、飲食業の会計・経理処理の解説記事も参考にしてください。
税務調査で交際費が否認されやすい5つのパターン
交際費は税務調査で確認されやすい項目の一つです。実務上、指摘につながりやすい典型パターンを押さえておきましょう。詳しい調査対応は税務調査の流れと対応方法の解説記事をご覧ください。
1. 参加者の記録がない「1万円以下の飲食費」
1万円基準は書類保存が適用要件です。レシートだけで参加者の氏名・関係・人数の記録がない場合、除外が認められず交際費等に含められる可能性があります。金額が正しくても記録がなければ要件を満たさない、という点が見落とされがちです。
2. 社内飲食費への1万円基準の誤適用
1万円基準の対象は社外の事業関係者との飲食費です。役員・従業員だけの飲食を1人1万円以下だからと会議費処理していると、社内飲食費として交際費への振替を指摘されます。
3. 私的な飲食・家族との食事の混入
事業関連性のない私的な飲食代は交際費にすらならず、役員給与と認定されるおそれがあります。この場合、法人側で損金不算入となり得るうえ、本人への源泉所得税の問題も生じ、影響が二重になります。
4. 特定メンバーだけの「福利厚生費」
福利厚生費と認められるのは従業員におおむね一律に供与される行事・飲食です。役員だけの慰労会、特定部署の一部メンバーだけの飲み会は、社内飲食費(交際費)に区分されます。
5. 情報提供料・紹介料の交際費認定
取引先の従業員などに支払う謝礼・紹介料は、あらかじめ締結された契約に基づく正当な対価といえない場合、交際費等に含まれると指摘されることがあります。紹介手数料を経費処理する場合は、契約書と役務内容の記録を整えておくことが重要です。
個人事業主の交際費|上限はないが事業関連性が必須
法人の交際費損金不算入制度は法人税(租税特別措置法)の制度であり、個人事業主には年800万円のような損金算入の上限はありません。事業の遂行上必要な交際費は、金額の多寡にかかわらず必要経費に算入できます。
ただし、必要経費と認められるのは「総収入金額を得るために直接要した費用」および「その年に生じた販売費・一般管理費その他業務上の費用」に限られます(所得税法37条)。また、事業と私生活の両方に関わる支出(家事関連費)は、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分に限り必要経費にできます(出典:国税庁タックスアンサーNo.2210 やさしい必要経費の知識)。
上限がない分、個人事業主の交際費は「本当に事業に必要な支出か」が問われやすく、税務調査でも事業関連性の説明を求められます。誰と・何の目的で会ったのかを記録に残す習慣が、法人以上に重要です。
交際費に関するFAQ|まとめと専門家への相談
Q1. 1人当たりちょうど10,000円の飲食費は交際費になりますか?
なりません。基準は「10,000円以下」なので、1人当たりちょうど1万円までは書類保存要件を満たせば交際費等から除外できます。10,001円以上になると全額が交際費等に該当します(1万円を超えた部分だけが交際費になるのではない点に注意してください)。
Q2. 1万円以下かどうかは税込・税抜どちらで判定しますか?
自社が採用している消費税の経理方式によります。税抜経理方式なら税抜金額、税込経理方式なら税込金額で判定します(国税庁タックスアンサーNo.5265の注記)。
Q3. ゴルフ接待や贈答品も「接待飲食費50%」の対象になりますか?
なりません。50%損金算入の対象となる接待飲食費は「飲食その他これに類する行為のために要する費用」に限られるため、ゴルフのプレー代やお中元・お歳暮などの贈答品は対象外です(交際費等としての取扱いとなり、中小法人であれば800万円の定額控除の枠内で損金算入します)。
Q4. 交際費の損金算入制度はいつまで使えますか?
現行の制度は、租税特別措置法61条の4により2027年(令和9年)3月31日までの間に開始する事業年度に適用されます。過去の改正では期限の延長が繰り返されてきましたが、その後の取扱いは今後の税制改正によるため、断定はできません。決算・申告の際は最新の法令を確認してください。
Q5. 決算間際に交際費の有利判定だけ相談できますか?
可能ですが、有利判定(800万円 vs 接待飲食費50%)は帳簿上の交際費・接待飲食費・会議費の区分が正確であることが前提です。期中の記帳段階から区分を整えておく方が、結果として節税額も精度も高くなります。
まとめ
- 交際費は原則全額損金不算入。ただし中小法人(資本金1億円以下・大法人の100%子会社等を除く)は「年800万円」か「接待飲食費50%」の有利選択が可能
- 2024年4月1日以後に支出した1人1万円以下の社外飲食費は、書類保存要件を満たせば交際費等から除外
- 会議費・福利厚生費・広告宣伝費との区分は科目名でなく実態で判定され、税務調査でも確認されやすい
- 個人事業主に金額上限はないが、事業関連性と記録がより強く求められる
- 現行制度の適用は2027年3月31日までに開始する事業年度まで(以後は税制改正の動向次第)
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