予定納税の減額申請、7月15日期限|税理士が解説【払いすぎ防止】

公開 2026.07.08 約7分で読めます 筆者:田中将太郎(公認会計士・税理士)

税務署から届いた「予定納税」の通知書を、そのまま何も考えずに払っていませんか。予定納税は前年の実績をもとに計算される所得税の前払い制度のため、今年の所得が前年より下がっている個人事業主は、必要以上の金額を前払いしてしまう可能性があります。結論から言うと、7月15日までに「予定納税額の減額申請書」を提出すれば、この払いすぎを未然に防ぐことができます。手続きに罰則はなく、最終的な税額も確定申告で精算されるため、知っているかどうかだけで手元に残る現金が変わります。本記事では、予定納税の仕組み、減額申請でいくら手元に残せるかの試算、申請の手順と期限、実務上の注意点を公認会計士・税理士が解説します。

予定納税とは?前年実績ベースの「前払い」の仕組み

予定納税とは、今年分の所得税の一部を前もって納付する制度です。確定申告で計算される税額とは異なり、前年分の申告納税額(予定納税基準額)をもとに機械的に金額が決まる点が特徴です。つまり、今年の所得が前年より落ち込んでいても、通知される金額そのものには反映されません。

対象になるのは、予定納税基準額が15万円以上の人です。今年新たに開業した方や、前年の所得税額が15万円未満だった方には、そもそも予定納税の通知書は届きません。通知が来ていない方は、今年は対象外と考えて差し支えありません。

対象者になる条件と納付額の計算方法

項目内容
対象になる人予定納税基準額が15万円以上の人
金額の決め方前年分の申告納税額(予定納税基準額)がそのまま基準。今年の状況は反映されない
納める回数・額基準額の3分の1ずつを年2回
第1期の納期限7月1日〜7月31日
第2期の納期限11月1日〜11月30日

例えば、前年の申告納税額が90万円だった個人事業主は、第1期・第2期それぞれ30万円、合計60万円を前払いすることになります。今年の所得が前年より大きく落ち込んでいても、この金額が自動的に調整されることはありません。

減額申請でいくら手元に残せるか(試算例)

今年の所得税の見積額が、通知された予定納税基準額より少なくなりそうな場合に利用できるのが「予定納税額の減額申請」です。具体的には、以下のようなケースが対象になりやすいとされています。

  • 業況不振で今年の所得が前年より明らかに減りそう(取引先離脱・単価下落など)
  • 廃業・休業・失業した、またはする予定
  • 災害・盗難・横領で事業用資産などに損害を受けた
  • 医療費控除・社会保険料控除・扶養控除・配偶者控除などが前年より増える
  • 小規模企業共済やiDeCoの掛金(所得控除)を今年から増やした、または始めた

前年の申告納税額90万円、今年の所得税見積額30万円という個人事業主を例に試算すると、次のようになります。

項目減額申請しない場合減額申請する場合
計算のベース前年基準額90万円今年の見積額30万円
第1期(7月)30万円10万円
第2期(11月)30万円10万円
年内に前払いする合計60万円20万円
年内に手元に残せる現金+40万円

最終的に納める税額そのものは確定申告で精算されるため変わりません。変わるのは「いつ手元に現金が残るか」というキャッシュフローです。仕入れや運転資金として今使えるお金を、来年の還付時期まで塩漬けにせずに済む点が、減額申請の実質的なメリットです。

申請の手順と2つの期限【表】

申請の種類提出期間
第1期分+第2期分をまとめて減額7月1日〜7月15日
第2期分のみ減額11月1日〜11月15日

提出期限が土曜・日曜・祝日にあたる場合は、翌開庁日まで延長されます(2026年の場合、7月15日は水曜日のため繰下げはなく、第2期分のみの期限11月15日は日曜日のため翌開庁日の11月16日(月)が実際の期限になります)。7月15日を過ぎてしまうと第1期分は通知どおりの満額を納付するしかなく、間に合うのは11月15日までに申請する第2期分のみの減額に限られます。

手続きは次の3ステップです。

  • ①今年の所得を見積もる:1〜6月の実績と下半期の見込みから、今年の事業所得と所得税を試算します(損益計算書ベース)。
  • ②「予定納税額の減額申請書」を作成する:国税庁サイトからダウンロード、またはe-Taxで作成し、見積額の根拠となる損益計算書などを添付します。
  • ③期限までに所轄税務署へ提出する:書面・e-Taxのいずれでも提出できます。

見積もりは完璧な精度までは求められません。1〜6月の実績をもとにした現実的な試算で十分とされています。

よくある盲点と注意点

減額申請そのものにペナルティはありませんが、注意すべき点が3つあります。

1. 不合理に低い見積もりは過少申告加算税の対象になり得る

減額申請は「合理的な根拠のある見積り」が前提です。実績から見て明らかに不合理な低い金額で申請し、確定申告で大きく上振れした場合は、過少申告加算税の対象になる可能性があります。低く見積もれば得、という発想は避け、その時点での現実的な見積りを心がける必要があります。

2. 基礎控除の引き上げは見積額の計算に反映できない

税制改正で基礎控除が引き上げられた場合でも、そのメリットを減額申請の見積額計算にそのまま反映することはできません。令和8年度改正の基礎控除引き上げは施行日が令和8年12月1日で、7月・11月の減額申請期限より後になるためです。減額申請で考慮できるのは、業況不振や控除の増加といった個別の事情に限られます。基礎控除引き上げによる減税効果は、確定申告の際にあらためて精算されます。

3. 定額減税による自動調整は継続しない

過去に実施された定額減税による予定納税額の自動的な減額調整は、その年限りの措置です。制度が継続しているという前提で通知額を見てしまわないよう注意が必要です。

まとめ

予定納税は前年の実績をもとにした前払い制度のため、今年の所得が下がっている個人事業主ほど、払いすぎが発生しやすくなります。減額申請を行えば、最終的な税額を変えずに、手元に残せる現金を増やすことができます。手続きに罰則はなく、7月15日までに書類を1枚提出するだけで完了します。自分のケースが対象になるか判断に迷う場合は、早めに税理士や所轄の税務署に相談することをおすすめします。

個人事業主の税負担や資金繰りの見直しは、法人化のタイミングと合わせて検討すると効果が大きくなるケースもあります。あわせてマイクロ法人で節税は本当?失敗する人の共通点もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 予定納税の通知が届いていない場合はどうすればいいですか?

通知が届いていない方は、前年の所得税額が15万円未満か、今年新たに開業した方など、そもそも予定納税の対象外である可能性が高いため、原則として対応は不要です。

Q2. 減額申請をしたのに承認されなかった場合はどうなりますか?

提出した見積りの根拠が不十分などの理由で承認されない場合、通知どおりの金額を納付することになります。見積りの根拠資料(損益計算書など)を整理したうえで申請することが重要です。

Q3. 7月15日に間に合わなかった場合、打つ手はありませんか?

第1期分は満額の納付が必要になりますが、11月15日までに申請すれば第2期分のみを減額することは可能です。今年の所得が下がっている方は、次の期限に向けて早めに見積もりの準備を進めることをおすすめします。

この内容はYouTube動画でも解説しています。あわせてご覧ください。
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予定納税の減額申請は、今年の所得の見積もりや必要書類の判断に専門的な知識が必要です。ご自身での判断に迷う場合は、無料相談・お問い合わせからご相談ください。

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この記事の内容は、YouTube『たなSHOW』の動画でも解説しています。あわせてご覧ください。

出典・参考情報(国税庁)

※本記事の試算例は、前年の申告納税額90万円・今年の所得税見積額30万円という設定に基づく簡略シミュレーションです。実際の金額は個々の所得状況により異なります。ご自身のケースについては税理士にご確認ください。本記事の数値・期限・出典は、国税庁の一次情報に基づき公開前に確認しています。

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