③年末調整って必要?(税額計算編)
全3回に分けて年末調整について解説を行っております。
今回は第三弾として、「税額計算編」を解説していきます。
第一弾「①年末調整って必要?(概要編)」、第二弾「②年末調整って必要?(所得控除編)」をご覧いただいていない方は、先ずはそちらからご確認ください!
所要時間: 5分
- 年税額の計算方法
年税額(その年の給与に対して正しく算出した所得税額)の計算方法をご説明します。
- 過不足の精算と源泉徴収簿の作成
年税額を計算し、過不足が生じた場合の処理及び源泉徴収簿の作成についてご説明します。
- 源泉所得税の納付
源泉所得税納付時の精算についてご説明します。
年税額の計算方法
年税額を算出するために、以下の計算を行います。
1.課税所得金額の計算
課税給与所得金額は、次の算式で計算します。
給与所得控除後の金額(調整控除額)-所得控除額の合計額=課税給与所得金額
2.年税額の計算
①算出所得税額は、次の算式で計算します。
課税給与所得金額(千円未満切り捨て)×税率-控除額=算出所得税額
※実際の計算では、所得税の速算表を使用します。(国税庁参考リンク:No.2260 所得税の税率)
②年調所得税額は、次の算式で計算します。
算出所得税額-住宅ローン控除額=年調所得税額
③年調年税額は、次の算式で計算します。
年調所得税額×10.21%=年調年税額(百円未満切り捨て)
※平成25年から令和19年までの申告においては、所得税と復興特別所得税(原則、その年分の基準所得税額の2.1%)を合わせて申告及び納付します。
過不足の精算と源泉徴収簿、源泉徴収票の作成
過不足が生じた場合の処理、及び必要書類の作成が必要です。
過不足が生じた場合
年末調整の結果、超過額が生じた場合には、従業員にその超過額を還付しなければいけません。 もしくは、不足額が生じた場合には、従業員から不足額を徴収しなければいけません。
通常、過不足税額の精算は、年末調整が行われる12月支給給与にて行いますが、状況に応じて1月以降に繰り延べることもできます。
源泉徴収簿の作成
事業者が月々の給与に係る所得税の源泉徴収や年末調整を正確にかつ効率的に行うために、各従業員の必要情報を記録しておく帳簿が必要になります。
そのため、可能な限り「給与所得・退職所得に対する所得税源泉徴収簿」の作成を行いましょう。
ただ、源泉徴収簿は法令で定められたものではないので、毎月の源泉徴収の記録などが把握でき、年末調整のために使用できるものであれば給与台帳等での代用も可能です。 また、書類の作成を行った場合は、7年間の保管が必要になります。
源泉徴収票の作成
事業者は、年末調整の計算によって確定した所得税額や、控除金額などを記載した源泉徴収票を作成し、従業員本人に交付をしましょう。
源泉徴収票は必ず書面で交付しなければなりません。
ただし、一定の要件の下、電子交付することもできます。(国税庁参照リンク:給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A)
源泉所得税の納付
年末調整による還付額または不足額は、年末調整をした月の「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」に記載します。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請を行っている事業者は、年末調整を12月に行った場合は、7月~12月の所得税徴収高計算書に過不足額を記載し、年末調整を1月に行った場合は、1月から6月の所得税徴収高計算書に過不足額を記載します。
最後に
次のような場合には、年末調整のやり直しが可能です。
年末調整のやり直しができるのは、翌年1月末日までとなりますが、正しく所得税を計算するためにも修正がある場合には必ず修正を行うようにしましょう。
①年末調整後に給与の追加支払いがあった場合
②年末調整後に扶養親族等の数が異動した場合
③年末調整後に配偶者等の所得の見積額に差額が生じた場合
④年末調整後に保険料の支払いがあった場合
⑤年末調整後に給与所得者から住宅借入金特別控除申告書の提出があった場合