税理士が教える飲食費の経費計上・節税対策(交際費、会議費、福利厚生費)
こんにちは。田中将太郎公認会計士・税理士事務所です。今回は、経営者にぜひ知って頂きたい「飲食費の経費計上方法」の解説です。
経営者は、多くの人と様々なシチュエーションで飲食を行う機会が多いと思います。
社内での懇親会、取引先とのランチ、取引先との飲み会など、色々とあると思います。ここでかかった経費をどのように会計・税務上処理してよいか困っている経営者も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、飲食費をどのように経費計上し、どのような証憑を準備すべきかを解説していきます。
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4つのステップで飲食費の経費計上について解説します。
- 飲食費の会計上・税務上の処理の概要
まずは、飲食費の処理の考え方を説明します。
- 従業員の慰安(接待)のための飲食費
従業員の慰安(接待)のために支出する飲食費の取り扱いについて説明します。
- 会議を行う際の飲食費
会議を行う際に通常必要となる飲食費の取り扱いについて説明します。
- 取引先を接待するための支出
取引先への接待のために必要となる飲食費の取り扱いについて説明します。
飲食費の会計上・税務上の処理の概要
飲食費がかかった場合にどのように会計・税務上処理すべきかを判断するには、「誰と何の目的でいくらで」その飲食を行ったかに明確にする必要があります。
また、「会計上どの勘定科目で処理すべきか」と「税務上損金算入できるか」は必ずしも1対1で紐づいていないので、注意してください。
その理由は、会計と税務でそもそもの趣旨が異なるからです。
・会計の趣旨: 会社の経済活動の実態を最も適切に会計上の数値に落とし込むこと
・税務の趣旨: 一定の規定に基づき平等に課税を行うこと
飲食費の主な会計上の勘定科目
飲食費は、主に大きく3つの目的に分けることができます。
- 従業員の慰安(接待)のための飲食費
- 会議を行う際の飲食費
- 取引先を接待するための支出
1.従業員の慰安(接待)のための飲食費
「従業員の慰安(接待)のための飲食費」を考察する際のポイントは、その慰安(接待)が「従業員におおむね一律」に提供されるものか否かの判断です。
飲食が「従業員におおむね一律」に提供される場合
創立記念日や忘年会などの社内行事などの従業員全体に提供されるような行事における飲食費がこれに該当します。
このような場合は、その飲食費を次のように処理します。
- 会計上: 「福利厚生費」として計上
- 税務上: 損金算入できる
飲食が「従業員におおむね一律」には提供されない場合
その飲食が、「社内の業務や行事にかかわる場合」、または、「従業員の私事に関わる場合」かによって異なります。
社内の業務や行事にかかわる場合
たとえば、「役員だけの食事会」や「特定プロジェクトでの限られたメンバーによる飲食」などがこれに該当します。
このような場合は、「社内飲食費」として扱われ、次のように処理します。
- 会計上: 「交際費」(社内飲食費)として計上
- 税務上: 「交際費」の規定に従う(原則は損金不算入)
こちらは「交際費」として処理されてしまうため、原則は損金不算入となります(中小企業の場合は、800万円まで損金算入できます)ので、気を付けてください。
従業員の私事(プライベート)に関わる場合
これは、たとえば、従業員が合コンなどに行った際の支出を会社が負担した場合です。これは、事業活動のための経費ではなく、従業員個人のプライベートな支出です。
そのため、この支出は従業員の「給与」(役員の場合は役員報酬)として処理します。
- 会計上: 「給与」(または「役員報酬」)として計上
- 税務上: 従業員の「給与」場合は損金算入できます。しかし、「役員報酬」の場合は、事前に金額が決まっていない場合は損金不算入です。
なお、「給与」となれば損金算入できますが、従業員は所得税がかかってきますので要注意です。
2.会議を行う際の飲食費
会議を行う際の通常の範囲内で提供される飲食にかかる費用は、「会議費」として処理されます。これは社内の人のみでも、社外の取引先がいる場合でも、両方とも「会議費」となります。
たとえば、「会議費」となる費用は、会議時に提供されるお茶代やお弁当代などが該当します。
ただし、お酒や高級な食事などは通常の会議では提供されないものは該当しませんので注意してください。
- 会計上: 「会議費」として計上
- 税務上: 損金算入できる
3.取引先を接待するための支出
「1人あたり5,000円以下」の場合
取引先への接待の飲食費のうち、「1人あたり5,000円以下」の支出について税務上の「交際費」の額から除くことができます。
つまり、多くの場合、この支出を会計上は「会議費」として処理します。もちろん会計上は「交際費」としても大丈夫ですが、税務上と会計上で「交際費」の額が異なってくることになるため、便宜的に「会議費」として処理することが一般的です。
- 会計上: 「会議費」として計上 ※「交際費」またはその他適切な勘定で計上可能
- 税務上: 「交際費」の額から除外し、損金算入できる
「1人あたり5,000円以下」の支出を「会議費」とする要件
1人あたり5,000円以下の取引先への接待費は、本来「交際費」とすべきですが、税務上の優遇として「会議費」とすることが認められています。
そのため、以下のような情報を適切な書類等で保存している必要があります。それができていない場合は、通常どおり「交際費」として税務上処理しなければいけません。
- イ 飲食等のあった年月日
- ロ 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
- ハ 飲食等に参加した者の数
- ニ その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称及び所在地(店舗がない等の理由で名称又は所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名又は名称、住所等)
- ホ その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
国税庁ホームページ「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
なお、この5,000円以下の基準値が、令和6年度税制改正大綱によって、「1万円以下」に引き上げられることになりました。これは、令和6年4月1日以後に支出する飲食費に適用される予定です。
1人あたり5,000円超の交際費
取引先への接待のための飲食費のうち、「1人あたり5,000円超」の支出は、会計上および税務上、ともに「交際費」として扱われます。
- 会計上: 「交際費」(社内飲食費)として計上
- 税務上: 「交際費」の規定に従う(原則は損金不算入)
まとめ
これまで、飲食費を以下の3つの目的に分けて、それぞれどのように会計上および税務上処理すべきかを説明してきました。
- 従業員の慰安(接待)のための飲食費
- 会議を行う際の飲食費
- 取引先を接待するための支出
それぞれの飲食費を会計、税務上、どのように処理するかを理解しておくことで、節税対策や税務調査対策にも役立ちます。
交際費の税務上の処理
交際費は原則は全額損金不算入です。しかし、「中小企業は800万円まで損金算入できる」などの、会社の規模に応じた特例があります。
この交際費の税務上の処理について、次の記事を参考にしてください。