合同会社とは【公認会計士・税理士が徹底解説】
こんにちは。田中将太郎公認会計士・税理士事務所です。
合同会社は、2006年の会社法改正に伴い新設された新しい会社形態です。最近は、この「合同会社」も一般的になってきました。
会社設立を検討している方で、「合同会社」にするか、株式会社にするか悩んでいる方も多いと思います。
本記事の解説をもとに今後の会社設立の参考にして頂ければ嬉しいです。
所要時間: 5分
次の4ステップで合同会社について説明します。
- 合同会社とは
合同会社とは何かの基礎を説明します。
- 合同会社の3つの特徴
合同会社の主な特徴を解説します。
- 合同会社のメリット
株式会社と比較した場合の合同会社のメリットを解説します。
- 合同会社のデメリット
株式会社と比較した場合の合同会社のデメリットを解説します。
合同会社とは
会社設立をする際に、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つの形態から選ぶことができます。最もメジャーなのが株式会社ですが、最近では、合同会社も人気になってきています。
合同会社は、2006年5月1日に改正された会社法によって新設された会社形態です。アメリカのLLC (Limited Liability Company) をモデルとして導入されたので、日本版LLCとも言われています。
日本全国の会社数
2019年時点での会社数の合計は、約270万社です。そのうちほとんどが株式会社です。会社数全体に占める合同会社数は少ないですが、直近の新規設立では、合同会社が人気になってきています。2019年の会社設立総数が12万社あり、そのうち87,000社が株式会社ですが、合同会社も約30,000社あり全体の4分の1を占めています。
合同会社の新設数の推移
合同会社の新設数は、2010年の新規設立が約7,000社だったのに対し、2019年は約30,000社と約4倍になってきています。今後も合同会社の設立数が伸びていくと予想されます。
関連記事:「数字で見る会社設立【会社設立数編】株式会社と合同会社を公認会計士・税理士が徹底比較」
合同会社の3つの特徴
人気がアップしてきている合同会社ですが、どのような特徴があるのでしょうか。
大きく分けて3つの特徴があります。
01.所有と経営の一致
合同会社の出資者のことを「社員」と呼びます。社員は、出資者であると共に、経営者でもあります。つまり、出資者と経営者が同一であり、所有と経営が一致しています。
この点、株式会社とは大きく異なります。株式会社は、会社の最高意思決定機関(株主総会)の株主と会社の業務を執行する代表取締役や取締役会は分離している「所有と経営が分離」されています。
経営者を外から雇い入れることが多い海外と比較して、同族経営が多く、経営者と株主の分離がなされていないことが多い日本的経営において、合同会社は経営実態を反映しやすい会社形態といえるかもしれません。
02.有限責任社員
出資者全員が有限責任社員、つまり自分が出資した分だけ会社に対して責任を負い、会社が倒産した場合でも出資した以上には会社の負債の弁済する義務がない社員です。
社員の種類は主に3種類で、「代表社員」、「業務執行社員」、「社員」です。
代表社員
業務を執行する社員は、原則として会社を代表します。
しかし、定款または定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から会社を代表する代表社員を定めることが可能です。
代表社員は、株式会社での代表取締役であり株主に相当します。さらに、定款に定めることによって、代表社員から法人の代表者である会長、社長、理事長などのポジションを別途定めることもできます。
法人が代表社員になる場合は、法人は職務執行者を置く必要があります。これは、業務執行社員とは異なります。
業務執行社員
社員は、原則として業務を執行しますが、定款の定めを置くことで、業務を執行する業務執行社員を限定することができます。
社員(上記以外)
定款の定めによって、業務執行社員を限定した場合は、それ以外の社員は、株式会社でいう株主に相当する立場になります。
03.社員1人1議決権が原則
株式会社の場合、議決権の割合は株式の保有割合(出資の割合)によって決まります。
もし100%の株式を保有している株主がいる場合には、この株主の意思次第で会社の経営方針が決まる、というわけです。
しかし、合同会社の場合には出資の割合に関わらず、議決権は1人1票が原則です。すなわち出資金額の大小に関わらず、すべての社員が会社の運営に平等に関与できる、というわけです。
もっとも定款で異なる定めを置くことで議決権割合を変更することができますが、定款の変更には原則として社員全員の同意が必要です。
そういった点から、先述のとおり合同会社は家族経営や個人事業などを行うことを目的として設立・運営されるのが通常だといえるのです。
合同会社のメリット
合同会社のメリットは大きく3つあります。
- 設立にかかるコストが低い
- 利益の配分を自由に決められる
- 決算公告の義務がない
設立コストが低い
合同会社の最大のメリットは、会社設立コストの低さです。
株式会社の設立コストが一般的に25万円程度に対して、合同会社は10万円程度で設立できます。
大きな違いが、会社設立の登記に必要になる「登録免許税」です。株式会社が最低でも15万円かかるのに対して、合同会社の最低額は6万円です。
さらに、株式会社設立の際には、会社の法律ともいえる「定款」の認証が必要となり、1件につき定款認証手数料が5万円、印紙代が4万円(電子定款であれば印紙代は不要)かかります。しかし、合同会社では定款認証が不要のためこの費用はかかりません。
費用項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
定款認証手数料 | 5万円 | 0円 |
司法書士手数料 | 5~8万円 | 5~6万円 |
合計 | 25~28万円 | 10~11万円 |
利益の配分を自由に決められる
合同会社の場合は、出資比率に関係なく利益配分を自由に決めることができます。株式会社の場合は、株式持ち分比率に応じて利益分配がされるのに対して、合同会社は出資比率に関係なく自由に利益配分が可能となります。
合同会社を複数人で設立した場合には、出資比率が異なっていたとしても、全員に同額の利益を分配するなどの自由な利益分配が認められています。
決算公告の義務がない
合同会社の場合は、毎年の決算公告の義務がありません。株式会社では、定時株主総会後に速やかに決算公告をすることが法律で義務付けられています。決算広告を官報などで行う場合は、官報などでの公告コストもかかってきます。もし、決算公告を怠った場合は、会社法 第九百七十六条により100万円以下の過料に処するとされています。
合同会社のデメリット
合同会社のデメリットは、以下の3つです。
- 株式会社よりも信頼されにくい場合がある
- 社員の退社等による会社の資本金の減少リスクがある
- 内部統制を構築しにくい
株式会社よりも信頼されにくい場合がある
合同会社は、2006年の会社法改正でできた新しい法人形態であるため、認知度が低く、株式会社と比べて信頼性を得にくいというリスクがあります。
最近は、ビジネスを行っている人の中では、合同会社はかなり一般的になってきているので、B2B取引で合同会社だから取引上不利になることは少ないかもしれません。有名外資系企業のApple、Google、Amazonなどの日本法人は合同会社だったりするので、合同会社=信頼性が低いということにはなりません。
しかし、一般消費者向けに商品・サービスの提供を行うB2C取引においては、もしかすると消費者から「合同会社って怪しそう…」というイメージを持たれてしますリスクもゼロではありません。
自分がどのような事業を行うかによって検討が必要です。
社員の退社等による会社の資本金の減少リスクがある
出資者と経営者が同じであることから、経営の意見対立などで社員が退社する際には出資金の払戻しを請求されることもあります。 なお、払戻しの限度額については、会社法において一定の規制が設けられてはいますが、社員の退社によって資本金が減少するリスクがあることは覚えておきましょう。
内部統制を構築しにくい
合同会社は、所有と経営が一致しており、かつ、社員間で自由に利益配分や議決権割合、業務執行社員の選定等を行えてしまいます。経営者としては、意思決定の自由度がありよいですが、社員が複数人いたり、企業規模が大きくなってくるとその自由度の高さゆえに、内部統制が構築しにくいというデメリットもあります。
内部統制が脆弱である場合は、外部の投資家から投資を受けにくかったり、そもそも合同会社には投資をしないベンチャーキャピタルも多いので、将来的な外部の投資家の誘致計画も視野にいれながら会社形態を検討する必要があります。
まとめ
合同会社には、メリットとデメリットが混在していることが分かったと思います。今後、会社設立を行う上で、メリットとデメリットをよく比較考慮した上で、会社形態を決定されることをオススメします。