3分でわかる「役員報酬」のすべて【最強の節税は役員報酬と役員賞与から理解すべし】公認会計士・税理士が徹底解説

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会社設立をした後にまず決定する必要があるのが、「役員報酬」です。節税上も非常に重要な勘定科目ですので、本記事で解説していきます。

今回は、役員報酬について解説します。

※本記事は、2024年9月に更新しています。

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役員報酬についての次の4つの質問に答えていきます。

  1. 役員報酬とは?

    役員とはどのような人を指すのかに言及しながら、役員報酬の定義を説明します。

  2. 役員報酬を損金算入するには?

    税務上、役員報酬を損金算入するために必要な要件を説明します。

  3. 役員報酬を決めた後にすべきことは?

    役員報酬を決定した後の税務署などへの手続きを解説します。

  4. 期中でも役員報酬を変更できる?

    役員報酬は原則として期中に変更できませんが、例外として変更できる場合について説明します。

  5. 役員報酬の会計上の取り扱いは?

    役員報酬を会計上どのように計上すべてきかを説明します。

役員報酬

役員報酬は、多くの経営者が頭を悩ませている勘定科目の1つではないでしょうか。

会社設立後すぐに金額を決めなければいけない点でも、すべての経営者に理解してもらいたい勘定科目です。しっかりと押さえておかないと税務上、必要以上の税金がかかってしまうので要注意です。

「役員報酬」に注意が必要な理由は、一定の要件を満たさない限り、税務上損金算入が認められないからです。

損金算入って何?と思われた方もいらっしゃると思います。

損金算入とは、税務上で費用として計上することです。法人の場合は、収益と費用の差額である利益の約30%を税金として支払わなければいけないため、損金算入できることは税金対策としてとても重要です。

基礎的なことではなく、役員報酬と役員賞与を組み合わせて圧倒的に節税したいという方は、こちらのYoutube動画をご覧ください。

関連記事:マイクロ法人による社会保険料削減スキームとそのリスク

役員報酬とは?

まずは、役員報酬とは何かについてしっかり押さえておきましょう。

役員報酬は当然ながら「役員に与えられる報酬(経済的利益)」です。

役員とはどんな人?

それでは、「役員」とはどんな人を指すのでしょうか?主には、以下の7つのいずれかにあたる人です。

  • 取締役
  • 執行役
  • 会計参与
  • 監査役
  • 理事
  • 監事及び清算人
  • その他、法人の経営に従事している者、または、同族会社において一定の要件を満たす者
役員とは
役員の範囲

なお、法令で「役員の範囲」((法法2、法令7、71、法基通9-2-1))について具体的に定めていますので、こちらもご確認ください。

参考:国税庁ホームページ「No.5200 役員の範囲」

報酬(経済的利益)とは?

ここでいう報酬(経済的利益)は、役員に金銭で支払われる報酬だけではありません。金銭で支払われるのと同等の経済的利益をもたらすものは、基本的に「役員報酬」として扱われます。

たとえば、会社が役員に対して次のようなことをした場合です。

  • 何かしらの資産を無料で贈与した場合
  • 有料であっても世間の取引価格よりもかなり低い金額で販売した場合
  • 無利息で金銭を貸し付けた場合や貸付金の返済を免除した場合
  • 家賃を免除した場合や生命保険料を肩代わりした場合

(法法22、34、法令69、70、法基通9-2-9~11、9-2-24)

参考:国税庁ホームページ「No.5202 役員に対する経済的利益」

役員兼使用人の場合の取り扱い

肩書は役員であっても他の従業員と同様の仕事を兼務している場合ってありますよね。一部の役員に対して、従業員として働いていた分を「役員報酬」ではなく、他の従業員と同じ「給与」として支給することができます。

それは、役員が「使用人兼務役員」として認められる場合です。これは非常に便利な制度で、役員であっても「使用人として頑張って会社の利益を増やした分を期中や年度末などに臨時賞与として支給するよ!」ということができるようになるのです。

使用人兼務役員ってどんな人?

法令上の文言を借りると、「使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者」です。

つまり、部長や課長などの使用人としての肩書が必要で、日常的に使用人としての業務を行っている必要があるということです。

しかし、役員が、代表取締役などの「代表~」という肩書を持っていたり、副社長、専務、常務などの上位の役員としての肩書を持っている場合は、使用人兼役員になれません。

具体的には、法人税法施行令第71条で、次のように定義されています。

【使用人兼務役員になれない人】

  1. 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
  2. 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
  3. 合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
  4. 取締役(委員会設置会社の取締役に限ります。)、会計参与及び監査役並びに監事
  5. 同族会社の役員のうち所有割合によって判定した結果、一定の要件を満たす役員

(法法34、法令71)

1~4はわかりやすいと思いますが、5はなんだかわかりませんよね。同族会社とは、トップ3の株主の持ち株比率を合計するとその割合が50 %を超える会社なので、多くの中小企業がこれに当てはまると思います。簡単にいうと、大株主やその配偶者も使用人兼務役員になれないよ、という制度です。

参考:国税庁ホームページ「No.5205 役員のうち使用人兼務役員になれない人」

役員報酬を損金算入するには?

役員報酬を損金算入して税務上の費用に計上するには、一定の要件を満たさなければいけません。

つまり、次の3つの要件のいずれかを満たせば、損金算入できるわけです。

  1. 定期同額給与
  2. 事前確定届出給与
  3. 利益連動給与

なんだかパッ見ただけではイメージがわかず、複雑そうですよね。でも大丈夫です。簡単に説明するので、頑張ってついてきてください!

定期同額給与とは?

簡単に言うと、報酬額を毎月同じ額に設定してくださいということです。
えっずっと同額なの?と思われた方、安心してください。

1年ごとに毎月の報酬額を変更できる

それぞれの役員の1年間の月間報酬額を新しい事業年度が始まってから3か月以内に決める必要があります。

そんなに難しいことではないですね。

役員報酬は事業年度開始時から3ヶ月以内に決める

原則として役員報酬は会社設立日・事業開始日から3ヶ月以内に決めなければなりません。

株式会社の場合は、会社設立日、または、事業年度開始日から3か月以内に株主総会を開催して、役員報酬の金額を決めてください。

役員が複数いる場合は、株主総会で1人1人の役員の個別の役員報酬金額を決めずに総額を決めるだけでも大丈夫です。株主総会の後に、取締役会で、役員報酬総額のうち、どの役員にいくらの役員報酬を支払うかを決定しても大乗です。

つまり、役員報酬について変更ができるのは年1回の上記の期間だけということになります。もし、それ以降に役員報酬を増やした場合、増額分は損金として認められないので注意してください。

なお、

事前確定届出給与とは?

これは、役員報酬のうち、要は、役員への賞与(ボーナス)に関する制度です。法人税法上、役員への賞与は原則として損金算入ができません(税務上は費用として計上できない)。

しかし、例外として、新しい事業年度が始まった時点で、事前に賞与の金額を決めておくことで、損金算入を行うことができます

それでは、事前に決めて置く場合、いつ決めればいいのでしょうか?

それは、株主総会決議から1ヶ月を経過する日、または、会計期間開始日から4ヶ月を経過する日、いずれかの早い日までに事前確定届出給与の届出を出さなければいけません。期日を過ぎてしまうと損金に算入することができなくなるので注意しておきましょう。

この事前確定届出給与という制度は、経営者にとってはとても不便な制度ですね。今年は会社で利益がたくさん出た!と浮かれながらも、それに応じて自分や役員の賞与は増やせないんです…

利益連動給与とは?

利益連動給与とは、その名の通り、利益に連動して報酬が発生するようにできる制度です。

これを使えば、利益が出た時に、役員への賞与をだせる!と喜んだ方、残念ながら、まだ喜ぶのは早いです…

この制度は、基本的には、有価証券報告書を提出しているような「上場企業」に限られる制度なのです。上場会社の場合は、監査法人が財務諸表監査を行って、利益の額が正しいことを担保しているため、その利益に連動して役員報酬が決定されていれば、役員報酬額は妥当であると判断できるのです。

そのため、非上場企業の場合は、①定期同額給与か②事前確定届出給与のいずれかしか使えません。つまり、役員の月間報酬も賞与も事前に決めておかなければいけないのです。

役員報酬を決めた後にどうすればいいの?

基本的には、役員報酬は、事前に確定しておかなければいけないことは分かったと思います。それでは、事前に確定した後に、どんな申請が必要なのかを解説します。

申請

税務署に申請する!

①定期同額給与としての毎月の役員報酬については、税務署に申請する必要はありません。

毎月同額を役員に対して報酬として支出しておくだけで大丈夫です。

しかし、②事前確定届出給与(役員賞与)は、必ず税務署に事前に申請しましょう!

申請の時期は、株主総会から1か月以内、または事業年度開始から4か月以内のいずれか早い日です。国税庁のホームページからフォーマットが取得できますので、事前に記載して持っていくとよいと思います。

年金事務所への申請も忘れずに!

当然ですが、役員報酬は、役員の健康保険や厚生年金保険にも影響するので、報酬額は年金事務所へも申請しましょう。

期中でも役員報酬を変更できる場合がある?

原則として、役員報酬を変更できないことはもうお分かりだと思います。

しかし、会社の業績が振るわずどうしても役員報酬を下げたいという場合はありますよね?そのようなニーズにこたえるために、例外的に役員報酬を減額できる制度があります。

それは、「業績悪化改定事由」に当てはまる場合(法人税基本通達9-2-13)です。

「業績悪化改定事由」とは?

「業績悪化改定事由」とは、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」と定義されます。経営悪化により、役員給与を減額せざるを得ないような状況なので、財務諸表の経営数値がきわめて悪化したことや倒産の危機に瀕したことに加え、経営状況の悪化に伴う利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じていることも含まれます。

役員報酬を減額できる例

具体的な「業績悪化改定事由」として、国税庁では以下のような例を挙げています。

  • 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  • 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  • 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

コロナウイルス(COVID-19)による業績悪化は、ほとんどが「業績悪化改定事由」にあたる可能性があります。しかし、「業績悪化改定事由」は、それぞれの会社の個別事由によるので、実際に該当するかの判断は、公認会計士や税理士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。

役員報酬の会計上の取り扱いは?

役員報酬は、会計上は「販売費及び一般管理費(販管費)」に計上されます。

従業員の給与や賞与とは明確に分けて計上する必要があります。

関連記事:「販売費及び一般管理費(販管費)とは【田中将太郎公認会計士・税理士事務所】

まとめ

いかがでしたでしょうか?

会社設立や会社経営上、役員報酬がいかに重要かがわかったと思います。

税金対策をする上での基礎となる部分ですので、役員報酬については慎重に処理してください。

田中国際会計事務所(東京)、田中将太郎公認会計士・税理士事務所(北海道札幌市)に、会計顧問、税務顧問をご相談したい方は、こちら

その他の勘定科目や資本金の設定については、関連記事をご参照ください。

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田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
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