会社設立時の資本金の決め方【公認会計士・税理士が徹底解説】

資本金
会社設立時の資本金

会社設立の際に資本金をいくらにするか迷う起業家は多いと思います。

通常は、①運転資金・予算面、②税務上のメリット、③対外的な与信面を主に考慮して検討します。

一方で、世の中の会社が会社設立時にどれくらいの資本金を設定しているのかが気になる方もいると思います。

今回は、世の中の会社の会社設立時の資本金額の分布について解説します。

所要時間: 3分

会社設立時の資本金について次のステップで確認していきます。

  1. 会社設立時の一般的な資本金額決定のポイント

    一般的な資本金額の決定のポイントを整理します。

  2. 資本金額別の会社設立数

    資本金額別に会社設立数を確認します。

  3. 会社設立時の会社形態別の資本金の金額

    株式会社と合同会社に分けて会社設立時の資本金額の分布をみています。

会社設立時の一般的な資本金額決定のポイント

一般的には、次の3点を考慮して資本金を決めることが多いかと思います。

①運転資金面
②税務上のメリット
③対外的な与信面

①運転資金面

事業運営上は、会社設立費用に加え、3~6か月程度の運転資金の金額を目安として設定されることが一般的です。

事業の属性によって会社設立後のキャッシュフローのタイミングが異なると思いますので、設立前に公認会計士や税理士にご相談されるとベストです。

②税務上のメリット

資本金が、1000万円未満や1億円未満というハードルがあるので、まずは1000万円未満で資本金を検討しておくと良いです。

③対外的な与信面

資本金は事業運営上の原資となる金額なので、過度に少ないと倒産のリスクが高いとみなされます。

たとえば、資本金が10万円程度の場合、設立時の登録免許税も払うとほぼすべての資金がなくなってしますので、事業運営資金がなく倒産してしますのではないかと考えられます。

また銀行から融資を受ける場合に融資額や金利額を判断する1つの指標として、「負債比率」があります。

負債比率(%) = 負債 ÷ 自己資本 × 100

一般的には、この負債比率が低い方が融資しやすいと判断されます。たとえば、1000万円の融資を受ける場合、資本金が2000万円の会社ですと、負債比率は50%ですが、資本金が100万円の場合は、負債比率は1000%になります。資本金が2000万円で負債比率が50%の会社の方が銀行としても融資しやすいということになります。

関連記事:「会社設立時の資本金の設定【5分で完全攻略】

資本金額別の会社設立数

ここまでは、一般的な資本金設定の考え方について説明してきました。ここからは、世の中の会社が実際にいくらで資本金を設定しているのかを見ていきたいと思います。

2019年の新規会社設立は、12万社です。この12万社の設立時の資本金額の分布を見ていきます。

関連記事:「数字で見る会社設立【会社設立数編】株式会社と合同会社を公認会計士・税理士が徹底比較」

2019年の資本金額別の会社設立件数

最も多い資本金額は、100万円以上300万円未満であり、会社設立件数は40,000件を超えます。年間の会社設立件数が120,000件なので、3分の1以上が100万円以上300万円未満の範囲で資本金を設定しています。

次に多い資本金設定額が、100万円未満で会社設立数は約30,000件ですあり、会社設立数合計の約4分の1を占めます。

出所:会社標本調査

会社設立時の会社形態別の資本金の金額

会社全体での資本金額別の会社設立数を見てきました。次は、株式会社と合同会社に分けて、どれくらいの資本金がボリュームゾーンなのかを見ていきます。

株式会社の資本金額別の会社設立数

株式会社の場合は、資本金が100万円以上300万円未満が最も多く全体の約35%を占めます。2番目に多いのが、500万円以上1,000万円未満の資本金を設定する場合で全体の約25%を占めます。

資本金100万円未満と資本金300万円以上500万円未満が約15%で3番目に位置します。

株式会社の場合でも、資本金1000万円以上は、税制優遇が受けられなくなるため、極めて少ない割合となっています。

会社設立 資本金 合同会社
グラフ:資本金別の会社数の分布(合同会社)

出所:会社標本調査

合同会社の資本金額別の会社設立数

合同会社の場合は、資本金が少ない方がより人気となっています。

関連記事:「合同会社とは【公認会計士・税理士が徹底解説】」

最も多いのが資本金100万円未満です。約半数の合同会社が、資本金100万円未満です。

合同会社は、設立費用も10万円未満のため、スモールスタートをしたい起業家が多いことも関係していると推測できます。

2番目に多いのが、資本金100万円以上300万円未満で約30%を占めます。

資本金300万円以上は、全体の20%未満とかなり少ない割合となっており、資本金300万円以上が半数近くを占める株式会社とは対照的です。

会社設立 資本金 合同会社
グラフ:資本金別の会社数の分布(合同会社)

出所:会社標本調査

まとめ

資本金をいくらにすべきか迷わる起業家は多いと思います。一般的な資本金の決め方に加え、実際に多くのスタートアップ企業がいくらの資本金を設定しているかわかることで、資本金額の決定に役立つかと思います。

本記事のデータをもとに、新しく会社設立する際の資本金額の決定にお役立て頂ければ幸いです。

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田中将太郎 - Shotaro Tanaka

記事の筆者:田中将太郎

                       

(株)田中国際会計事務所 代表取締役
田中将太郎公認会計士事務所・税理士事務所 代表
東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市に拠点を置き、個人事業主やスタートアップ企業から大企業までを幅広く支援。会計・税務、創業支援に加え、経営戦略コンサルティングの知見を活かした”戦略税務”や売上を伸ばすための”戦略マーケティング”に強みを持つ。
経営のための”裏ワザ”情報は、LINE、note、Youtubeでも配信中。                        
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