黒字でも融資に落ちる決算書6つのサイン|銀行の見方と直し方を公認会計士が解説
「売上は右肩上がり、利益も黒字。それなのに、銀行からの回答は減額——あるいはゼロ回答」。融資の現場では、決して珍しくない光景です。社長の熱意や商品の良さは、そのままでは審査書類になりません。審査の重要な土台のひとつが、決算書です。
この記事は、これから銀行融資を申し込む経営者、そして「黒字なのに断られた」経験のある経営者が、自社の決算書が銀行にどう読まれているかを理解し、どこを直せば融資に通りやすくなるかを判断できるように書いています。融資審査で確認される決算書のサインを6つ、それぞれの「直し方」とセットで解説します。なお、本文の掲載順は編集上のものであり、リスクの大きさや直す順番を示すものではありません。実際にどのサインから手を付けるかは、税金・社会保険の滞納や直近の資金繰り危機の有無、返済能力・債務超過の程度、役員貸付金の金額と回収可能性などを個別に評価して決めます。公認会計士・税理士の田中将太郎が監修しています。
※本記事は2026年9月12日時点の情報に基づく一般的な解説です。融資の判断は金融機関・信用保証協会・会社の状況によって異なります。記事中の「10年」「月商1〜2ヶ月分」などの目安は法定基準ではなく実務上の経験則です。実行前に必ず顧問税理士・お取引金融機関にご確認ください。
前提:銀行は決算書を「複数期・格付け」で読む
大前提として、銀行の融資担当者はあなたの決算書を単年で見ません。多くの金融機関では過去2〜3期分の決算書と、それをもとにした行内格付けが審査の重要資料になります。ただし、対象期間や配点は金融機関・商品ごとに異なり、決算書の点数だけで融資の可否が決まるわけではありません。事業計画、将来キャッシュフロー、資金使途、経営改善計画、担保・保証なども合わせて総合的に評価されます。
かつて銀行の資産査定の実務を方向づけていた金融庁の「金融検査マニュアル」は令和元年(2019年)12月に廃止され、金融庁は廃止後の考え方を「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(令和元年12月)として公表しました。同文書は、マニュアル別表に基づいて定着した現状の債務者区分などの実務を否定せず、そこを出発点に金融機関ごとの創意工夫を認める立場を取ると同時に、将来キャッシュフローや事業の成長性・将来性、再生支援の可能性も勘案するよう求めています。つまり、決算書を基礎とした格付け・実態査定の実務はいまも生きている一方、決算書がすべてではないということです。近年はこの流れがさらに進み、金融庁はアクセスFSA第274号(令和8年6月)で、融資審査の段階で事業の実態や将来性を理解し、将来キャッシュフローの見通しを踏まえて返済可能性を評価する「事業性融資」の考え方を示しています。
とはいえ、事業の将来性を説明する土俵に上がるためにも、決算書の減点要因は少ないに越したことはありません。それでは、融資審査で確認される6つのサインを順に見ていきます。
【サイン1】売上自慢・利益なし——評価の中心は売上の大きさより利益
社長は面談でつい「今期は売上が過去最高でして」と話したくなります。売上の規模や成長性も事業性を示す材料にはなりますが、格付け上より重視されるのは利益、それも本業の稼ぐ力を示す営業利益・経常利益です。
極端に言えば、売上10億円で経常赤字の会社と、売上1億円で経常利益1,000万円の会社を並べると、格付け上は後者が上位に来ることが普通に起こります。銀行の関心は「貸したお金が、利益から返ってくるか」の一点だからです。特に2期連続の経常赤字は大きな減点要因です。
直し方:決算前に利益を圧縮しすぎないこと。節税と融資対策はしばしば逆方向です。融資を予定している期は、多少の税負担を受け入れてでも経常黒字を確保するほうが、資金調達力という意味では得になるケースが多くあります。
【サイン2】税金・社会保険の滞納——納税状況は審査の重大要素
融資審査では多くの場合、納税証明書の提出を求められます。税金・社会保険料の滞納は重大なマイナス要因であり、信用保証協会付き融資や日本政策金融公庫の融資を含む多くの制度で、完納や納税証明が求められます。ただし、扱いは制度・保証協会・滞納の状態(納税猶予や分納中かどうか等)によって異なります。たとえば東京信用保証協会の案内は、「税金を滞納し完納の見通しが見込めない」場合を取扱不可としており、滞納があるという事実だけで一律に門前払いにしているわけではありません。
直し方:基本は「滞納してから借りる」のではなく「滞納する前に借りる・相談する」。どうしても納付が難しいときは、放置せずに税務署・年金事務所へ納税猶予・分納の相談をし、約束どおり払っている実績を残してください。そのうえで、自社の状況で申込みが可能かどうかは、申込先の金融機関・保証協会と税務署・年金事務所に早めに確認することをおすすめします。審査上いちばん印象が悪いのは「黙っての滞納」です。
【サイン3】現預金が薄い——見栄えのために必要資金まで減らさない
銀行が資金繰りの安全度を測るシンプルな物差しが「現預金が月商の何ヶ月分あるか」です。統計上の基準ではなく実務上の経験則ですが、月商1ヶ月分を切ると危険水域と見られやすく、2ヶ月分あると審査の空気が変わる、というのが多くの実務家の感覚です。
ここでよくある失敗例を、1つの再現例に凝縮して紹介します。ある製造業の社長が、決算書をきれいに見せることだけを目的に、翌月以降の支払いに必要な運転資金まで取り崩して、決算日の1週間前に借入金500万円をまとめて繰り上げ返済したとします。期末の現預金は月商の半分以下に減少。この決算書で翌月に設備資金の融資を申し込むと、「この現預金の水準ですと、満額は難しいです」という答えが返ってくることがあり得ます。
借入残高は、勘定科目内訳明細書と返済予定表で銀行には見えています。決算書の見栄えだけを目的に、必要運転資金まで減らす返済や支払いの前倒しをするのは避けるべきです。資金繰りの安全度を自分で下げることになりかねません。
直し方:見栄え目的で手元資金を薄くしないこと。一方で、繰り上げ返済そのものが悪いわけではありません。借入残高や支払利息、返済負担を減らすメリットもあり、余剰資金と借入を両方持ち続ければ金利負担は続きます。繰り上げ返済の可否は、資金繰り予測、必要な手元資金、金利・手数料、借入期間、今後の支払い・投資などの資金需要を比較したうえで、金融機関とも相談して決めてください。
【サイン4】債務償還年数——「10年」の物差しで借りすぎを判定される
銀行が「この会社は借りすぎか」を判定する代表的な物差しが債務償還年数です。
本記事で用いる簡易債務償還年数 = 借入金の総額 ÷(税引後利益 + 減価償却費)
答えの意味は「いまの稼ぐ力で、借金を何年で返し切れるか」。実務上の目安は10年以内とされます。この式はあくまで自己採点用の簡易版であり、実際の計算方法には金融機関差があります。分子を借入金から現預金や正常運転資金を差し引いた額とする方式のほか、分母についても、税引後利益ではなく経常利益をベースに法人税等を差し引いて減価償却費を加える方式など、分子・分母の両方にバリエーションがあります。
もうひとつ重要な注意があります。分母(税引後利益 + 減価償却費)が0以下の場合、この式で年数を算出してはいけません。計算上はマイナスの年数が出て一見「10年以内」に収まっているように見えますが、それは良好という意味ではなく、現在の収益力では返済原資をそもそも生み出せていない要注意の状態です。赤字の会社は、年数の計算より先に、分母をプラスに戻すことが課題になります。
計算例:借入金4,000万円、税引後利益200万円、減価償却費200万円の会社なら、4,000万円 ÷(200万円 + 200万円)= 10年。ぎりぎり目安内ですが、10年ちょうどは黄色信号です。実務感覚としては7年を切ると優良と評価されやすく、10年を超えると新規融資はかなり慎重になります。
分母に減価償却費を足すのは、お金が出ていかない経費だからです。裏を返すと、赤字でも減価償却前で黒字なら、銀行はまだ見捨てません。逆に、利益を圧縮しすぎる過度な節税は、この分母を自分で削り、借りられる天井を自分で下げる行為になります。
直し方:自社の決算書と電卓で自己採点し、10年を超えている、または分母が0以下で年数を算出できないなら「新規借入の前に利益の積み増し」を優先すること。融資戦略の全体像は関連記事「金融機関の選び方と融資戦略完全ガイド」も参考にしてください。
【サイン5】純資産のマイナス——債務超過と「銀行の中のもう1枚の決算書」
貸借対照表の純資産(資産-負債)をマイナスにしない——債務超過にしないことは、融資実務における最重要の防衛ラインです。債務超過とは、会社の財産をすべて売っても借金を返し切れない状態。格付け上の大きなマイナス要因となり、新規融資のハードルは大幅に上がります。ただし、債務超過なら一律に融資が止まるわけではなく、前掲の金融庁文書や令和8年の事業性融資の考え方が示すとおり、経営改善計画や事業の将来性・将来キャッシュフロー、再生支援の枠組みも勘案して判断されます。
ここで重要なのは、帳簿の純資産がプラスでも安心できないことです。銀行はあなたの決算書の数字をそのまま信じず、行内で決算書を「作り直し」ます。これを実態査定といいます(前掲の金融庁文書でも、貸出先が実質債務超過かどうかを重視して自己査定結果を検証してきた実務が言及されています)。
計算例:帳簿の純資産がプラス300万円の会社で、倉庫に3年動いていない在庫が500万円、1年以上回収できていない売掛金が200万円あるとします。実態査定ではどちらも資産価値ゼロと見られ得るため、実態純資産は 300万円 – 500万円 – 200万円 = マイナス400万円。「実態債務超過」です。帳簿が黒字でも、銀行の中のあなたの会社は、すでに債務超過かもしれないのです。
直し方は2つ。①不良在庫・回収困難な売掛金を放置せず、実態を把握して必要な手当てをする。②純資産は基本的に利益の蓄積(と増資)でしか増えないため、小さくても黒字を出し続ける。それがそのまま融資の体力になります。
①について、重要な注意があります。銀行の実態査定上の減額と、会計上の評価減・法人税法上の損金算入は別の判断です。「3年動いていない」「1年以上回収できていない」といった年数だけで、帳簿上ゼロ評価にしたり損金処理したりできるわけではありません。棚卸資産の評価損は、国税庁の法人税基本通達(棚卸資産の評価損)が示すとおり、著しい陳腐化や型崩れ・品質変化など具体的な事実が必要で、単に長期保有しているだけでは認められません。売掛金の貸倒損失も、国税庁タックスアンサーNo.5320「貸倒損失として処理できる場合」が定める要件——債務者の資産状況等から全額回収不能が明らかであること(担保があれば処分後)、または継続的取引先との取引停止後1年以上経過(担保物がある場合を除く)など——を満たす必要があります。販売可能価額、回収努力の記録、債務者の資力、担保の有無、取引停止時期などの証拠に基づき、会計基準と法人税法の要件を顧問税理士と個別に確認したうえで処理してください。
【サイン6】役員貸付金——公私混同を疑われやすい科目
融資審査で特に説明を求められやすい科目のひとつが役員貸付金(短期貸付金として計上されることもあります)です。会社のお金が社長個人に流れて、まだ返ってきていないという記録です。もっとも、後述のとおり評価は金額・使途・回収可能性等による個別査定であり、この科目があるだけで一律に融資が受けられなくなるわけではありません。
厄介なのは、多くの社長に「借りたつもり」がないことです。会社の口座から生活費を少し引き出した、レシートのない支出があった、私的な支払いを会社のカードで切ってしまった——この「行き場のないお金」は、経理上ひとまず決算時に役員貸付金等として計上されることがあり、1回数万円でも毎年積み重なって、気づけば数百万円になります。
ただし、こうした残高が税務上そのまま「貸付金」と認められるとは限りません。真正な貸付なのか、それとも役員への給与等に当たるのかを、発生原因、返済義務・返済能力、契約の有無、返済実績などから残高ごとに確認する必要があります。会社が実質的に負担した役員の個人的費用は、国税庁タックスアンサーNo.5202「役員等に対する経済的利益」が示すとおり、役員への給与としての経済的利益に当たります。この場合、源泉徴収が必要になり得るほか、定期同額給与に当たらない経済的利益は法人側で損金不算入となるおそれがあります。「私的支出は貸付金に計上して所定の利息だけ処理すれば足りる」というものではない点に注意してください。
銀行が役員貸付金を嫌う3つの理由
- 資金使途への疑念:銀行から見ると、事業に使うことを前提に融資したお金が社長個人に流れたように見えます。
- 回収可能性を厳しく査定される:実態査定での評価は、資金使途、金額、契約や利息の有無、返済期限・返済実績、役員個人の資産・返済能力などによって個別に判断されます。使途が不明、金額が多額、長期に滞留している、返済実績がない、といった場合は厳しく査定され、回収可能性によっては全部または一部が資産価値から控除され得ます。控除された分だけ実態純資産が目減りし、サイン5の実態債務超過に近づきます。
- 公私混同のシグナル:「この会社の財布は社長の財布と一体ではないか」という疑いを決算書自体が招きます。後述する経営者保証の主要な観点の1番目「法人と経営者の関係の明確な区分・分離」の説明が難しくなります。
真正な貸付と認められる場合も税務上の問題が起きる:認定利息
役員への給与等に当たらず、真正な貸付として役員貸付金に計上される場合でも、会社は利息を取る必要があります。国税庁タックスアンサーNo.2606「金銭を貸し付けたとき」によれば、利率の基準は令和4年から令和7年中に貸し付けたものは年0.9%、令和8年中に貸し付けたものは年1.3%(会社が他から借り入れて貸し付けた場合はその借入金の利率)です。無利息や低利で貸し付けたまま放置すると、原則として基準との差額が役員への給与として課税上扱われる問題が生じます(災害・病気等の場合や、差額が年5,000円以下の場合などの例外があります)。お金が返ってきていないうえに、課税の論点まで抱えることになるわけです。
絶対にやってはいけない消し方:「見せかけの解消」
決算日の直前だけ社長がお金を返し、年が明けたらまた借り戻す——期末残高だけゼロにする方法は逆効果です。銀行は勘定科目内訳明細書や通帳の動き、期中残高を見ています。期末だけゼロで期中はずっと残っている貸付金は、むしろ「隠そうとした」と読まれ、信用を下げます。サイン3で見た「見栄え目的の期末返済」と同じで、決算日前の小細工はプロには見えていると考えるべきです。
正攻法:解消の3ステップ
- これ以上増やさない:会社の口座から生活費を引き出す習慣をやめ、役員報酬を生活実態に合った金額に設計し直します。定期同額給与の仕組み上、役員給与の通常改定は国税庁タックスアンサーNo.5211のとおり原則として事業年度開始から3ヶ月以内に行う必要があるため、決算のタイミングで必ず見直してください。
- 毎月決まった額を返す:役員報酬の手取りから毎月5万円でも10万円でも返済に充てます。その際は、役員本人との書面による返済(相殺)合意を作成したうえで、役員報酬は総額で計上し、源泉所得税・社会保険料と手取りからの返済額を区分して処理してください。なお、使用人兼務役員など労働基準法上の賃金に当たる部分については、賃金全額払いの原則により会社が貸付金を一方的に相殺することはできず、厚生労働省の解説のとおり、本人の自由な意思に基づくと認められる合意が必要になるなど労務上の要件も確認が必要です。
- 残高が大きいなら出口の計画を専門家と作る:「いつ・どうやってゼロにするか」の道筋を書面にします。将来の役員退職金との相殺は、実際の退任等の事実があり、国税庁タックスアンサーNo.5208「役員の退職金の損金算入時期」のとおり株主総会の決議等で適正額が具体的に確定していることが前提で、相殺する場合もNo.2732「退職手当等に対する源泉徴収」による源泉徴収が必要です。退任の時期・適正額・機関決議・源泉徴収・相殺可能な債権額を顧問税理士等の専門家と確認したうえで初めて選択肢になる方法であり、無条件に使える定型策ではありません。
そのうえで、返済計画は銀行に自分から見せることをおすすめします。ただし、返済計画はあくまで説明力を高める材料であり、計画を見せるだけで残高や回収可能性の問題が軽くなるわけではありません。評価を実際に変えるのは、残高そのものを減らすこと、返済原資を確保すること、返済実績を積むことです。「認識しています、毎月これだけ返しています、実際にここまで減りました」と実績で示せるようになることが目標です。
セルフ診断チェックリスト:6つのサインと今日の打ち手
※表の番号は本文の掲載順(編集上の順序)であり、リスクの大きさの順位ではありません。どこから直すかは、滞納や直近の資金繰り危機の有無、返済能力・債務超過の程度、役員貸付金の金額と回収可能性などを個別に評価して決めてください。
| No. | サイン | 今日の打ち手 |
|---|---|---|
| 1 | 売上自慢・利益なし | 経常利益の黒字を最優先。2期連続赤字は回避 |
| 2 | 税金・社会保険の滞納 | 滞納する前に借りる・相談する。放置しない |
| 3 | 現預金が薄い | 手元資金を確保。見栄え目的の期末返済は避ける |
| 4 | 債務償還年数10年超 | 借入÷(税引後利益+減価償却費)で自己採点。分母が0以下なら返済原資を確保できていない要注意状態 |
| 5 | 債務超過・実態債務超過 | 不良在庫・不良債権は実態を検証し、要件を満たすものを処理。黒字を積む |
| 6 | 役員貸付金 | 増やさない→合意に基づき毎月返す→出口は専門家と設計→計画を銀行に見せる |
過去の決算書は書き換えられません。しかし、来期の決算書は今日から作れます。銀行は3期分を並べて「方向」を見ています。役員貸付金が毎年減っている、純資産が毎年増えている、現預金が厚くなっている——この矢印が見えれば、前回落ちた会社が次は通ることも普通にあります。
発展:社長の連帯保証と3つの観点
6つのサインを潰すことは、融資に通るだけでなく、社長個人の連帯保証を外す道にもつながります。「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月、日本商工会議所と全国銀行協会が共同で設置した研究会が策定した自主的なルール。原文PDF)は、金融機関が経営者保証を求めない可能性等を検討する際の主要な観点として、主たる債務者に主に次の経営状況を求めています。これらを満たせば保証の解除が保証されるわけではなく、最終的には金融機関が個別に判断します。
- 法人と経営者の関係の明確な区分・分離——会社のお金と社長のお金が分かれていること。同ガイドラインのQ&Aでは、役員貸付金を含む法人・経営者間の資金のやりとりが「社会通念上適切な範囲」を超えていないかどうかを、対象債権者(金融機関)が個別に判断するとされています。役員貸付金があるだけで一律に失格になるわけではありませんが、多額・長期滞留の貸付金はここでの説明が難しくなります。
- 財務基盤の強化——法人の資産・収益力だけで返済できること。サイン5の純資産、サイン4の債務償還年数の話そのものです。
- 財務状況の適時適切な情報開示——聞かれる前に会社の数字を正直に見せること。
3つ目に関連して、明日からできる実践を1つ。試算表を半年に1回、聞かれる前に自分から銀行に送ってください。それだけで「情報開示に積極的な会社」になれます。数字が悪い期こそ先に見せて、「ここが悪かったので、いまこう直しています」と一言添える。この一言が言える会社は、銀行から見て安心して稟議を書ける会社です。
よくある質問
Q. 赤字決算だと融資は受けられませんか?
赤字イコール否決ではありません。減価償却前で黒字か、赤字の原因が一時的か、改善の方向が3期分の並びで見えるか、といった点が評価されます。ただし2期連続の経常赤字は大きな減点要因なので、赤字見込みの期こそ早めに顧問税理士・金融機関に相談してください。
Q. 役員貸付金は決算書のどこを見れば分かりますか?
貸借対照表の資産の部の「役員貸付金」「短期貸付金」等の科目と、法人税申告書に添付する勘定科目内訳明細書の「貸付金及び受取利息の内訳書」で確認できます。銀行は申告書一式の提出を受けて内訳まで見ています。まず自社の残高の有無と金額を把握することが第一歩です。
Q. 創業したばかりで決算書がまだありません。
創業期は決算書の代わりに創業計画書・自己資金・経歴が評価の中心になります。「創業融資制度の変更に対応するためのポイント」で解説しています。
融資に強い決算書づくりを、顧問税理士と進めませんか
融資に強い決算書とは、テクニックで着飾った決算書ではありません。銀行員は毎日決算書を読むプロであり、決算日前の化粧は見抜かれます。強いのは、嘘がなく、実態と一致していて、方向が上を向いている決算書です。
田中将太郎公認会計士・税理士事務所では、月次の決算書づくりの段階から「銀行にどう読まれるか」を意識した財務改善と融資対応の支援を、顧問業務として行っています。役員貸付金の解消計画づくり、債務償還年数の改善、金融機関への説明資料づくりまで、決算書を「未来に向けて作る」お手伝いをします。
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本記事のテーマは、YouTubeチャンネル「たなSHOW: お金と経営の学校」でも動画で解説しています。決算書と電卓を手元に、動画と合わせてセルフ診断してみてください。
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出典・参考(一次情報)
- 国税庁 タックスアンサー No.2606「金銭を貸し付けたとき」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与」(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.5202「役員等に対する経済的利益」(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.5208「役員の退職金の損金算入時期」(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.2732「退職手当等に対する源泉徴収」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.5320「貸倒損失として処理できる場合」(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第1節第2款「棚卸資産の評価損」
- 厚生労働省「スタートアップ労働条件」Q&A「貸付金を賃金と相殺することは可能でしょうか」
- 金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(令和元年12月)
- 金融庁「アクセスFSA 第274号」(令和8年6月・事業性融資における融資判断の考え方)
- 全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」案内ページ・同ガイドライン原文PDF(平成25年12月)・同ガイドラインQ&A(PDF)
- 東京信用保証協会「ご利用いただけない中小企業とは」
執筆・監修:田中将太郎(公認会計士・税理士)/最終レビュー日:2026年9月12日/制度情報の基準日:2026年9月12日。債務償還年数10年・現預金月商1〜2ヶ月分・実態査定の運用等は法定基準ではなく実務上の目安であり、金融機関により運用は異なります。