税務調査の電話が来たら最初にやること3つ|加算税が5%で済む場合と重加算税35%になる場合【税理士解説】

公開 2026.09.14 約14分で読めます 筆者:田中将太郎(公認会計士・税理士)

「◯◯税務署の者ですが、調査にお伺いしたいのですが」——ある日突然、事務所やお店にこんな電話がかかってくる。この記事は、その電話(税務調査の事前通知)を受けた個人事業主・中小企業の経営者が、電話口での受け答えから調査当日までの数週間で「何をすべきか・何をしてはいけないか」を判断できるように、時系列で解説するものです。

先に結論を一つだけ。期限内に申告していた場合、調査通知の後でも、その調査による更正等を予知する前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税は原則5%で済みます(当初の申告が期限後だった場合や無申告の場合は、無申告加算税という別の税率区分が適用されます)。一方、その調査による更正等を予知した後に修正申告をした場合や税務署の更正を受けた場合に、課税標準等の基礎となる事実を隠蔽・仮装し、それに基づいて申告していたと認定された部分には、重加算税35%が課されます(更正等を予知する前に自主的に修正申告した部分は、重加算税の対象外です)。どちらになるかは運ではなく、記録と行動の問題です。順番に見ていきましょう。

まず全体像:電話から調査当日までの時系列チェックリスト

タイミングやること/やってはいけないこと
電話が来た日その場で即答しない・日程は調整を申し出る・税理士にすぐ連絡する
調査の日まで帳簿と証憑を「出せる状態」に揃える・自分の申告を見直す・誤りがあれば先に修正申告(調査通知後・更正予知前なら原則5%)
やってはいけない書類の後付け・破棄・口裏合わせ → 申告時の仮装・隠蔽を推認させる決定的に不利な事情になり、更正予知後の修正申告・更正で隠蔽・仮装に基づく申告と認定された部分は重加算税35%(更正予知前の自主的な修正申告は重加算税の対象外)。偽りその他不正の行為により税を免れたとされれば遡及期間は7年に。悪質なケースでは青色申告の取消しも
調査当日聞かれたことに答える・曖昧なことは後日回答・原本を預ける場合は預り証・税理士に立ち会ってもらう
日頃から証憑をきれいに整理しておく——最も効果的な調査対策

その電話の正体は「事前通知」という法定の手続き

税務署からの電話は、国税通則法74条の9に基づく「事前通知」です。実地調査を行う前に、税務署は原則として、調査を開始する日時・場所・対象となる税目・課税期間・調査の目的などを納税者に伝えることとされています。通知の方法は法令上定められていませんが、運用上は原則として電話で口頭により行われます(国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」)。

なお、事前に通知すると正確な課税標準等の把握が困難になるおそれがある、と個別に判断された場合には、法令の規定に従って通知なしで調査が行われることもあります。ただしこれは例外で、原則は連絡が先です。「抜き打ちが基本」ではありません。

電話が来た日にやること3つ

1. その場で全部答えようとしない——「税理士に確認して折り返します」でよい

電話口で日程を即決する必要はありませんし、聞かれてもいないことまで話す必要もありません。「税理士に確認して、折り返します」と伝えて一度電話を切ることは、手続き上まったく問題ありません。頭が真っ白なまま受け答えをして、うろ覚えの内容を断定的に話してしまうことのほうがリスクです。

2. 日程は調整できる——申し出は口頭でよい

事前通知の際、税務署はあらかじめ納税者や税務代理人の都合を聞いて調査開始日時を調整することとされています。また、通知を受けた後でも、病気や入院、冠婚葬祭、業務上やむを得ない事情など合理的な理由があれば、日程変更の協議を求めることができます。この申し出は口頭で差し支えないとされています(同FAQ)。繁忙期のど真ん中に当たってしまったなら、その事情を伝えて相談すればよいのです。ただし「一方的に延期できる権利」ではなく、あくまで協議である点は押さえておいてください。

3. 顧問税理士にすぐ連絡する

税理士は税務調査に立ち会うことができます。また、税務代理権限証書に同意の記載をしておけば、事前通知自体を税務代理人(税理士)に対して行えば足りる扱いになります。なお、税理士以外の知人などの第三者の立会いは、調査で納税者の秘密に触れることから原則として認められていません。顧問税理士がいない方は、このタイミングで探し始めてください。連絡を受けた直後が、最も選択肢の多い段階です。

調査の日までにやること——先に手を挙げた人ほど軽くなる設計

帳簿・証憑を「聞かれたら出せる状態」にする

通知された課税期間の帳簿、領収書、請求書、通帳などを揃えます。「揃えて、すぐ出せる」状態を作るだけで、当日の調査の進み方は大きく変わります。逆に、正当な理由なく帳簿書類の提示・提出を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類を提示したりした場合には、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金という罰則も法定されています(同FAQ)。

自分の申告を先に見直す——誤りを見つけたら「調査の日を待たずに」修正申告

売上の計上漏れはないか、プライベートの支出が経費に紛れていないか。もし見直しで誤りを見つけたら、調査の日を待たずに自分から修正申告を出すことを検討してください。理由は、過少申告加算税の税率が申告のタイミングで段階的に設計されているからです。

同じ申告漏れでも…(期限内に申告していた場合)過少申告加算税
調査通知前、かつ、その調査による更正等を予知する前に自主的に修正申告かからない(不適用)
調査通知の後、かつ、その調査による更正等を予知する前に自分から修正申告原則5%
調査による更正等を予知した後に修正申告・更正を受ける原則10%
調査による更正等を予知した後の修正申告・更正で、隠蔽・仮装に基づいて申告していたと認定される(次章)認定された部分は過少申告加算税に代えて重加算税35%(更正等予知前の自主的な修正申告は重加算税の対象外)

※この表は、期限内に申告書を提出していた場合の過少申告加算税の税率です。当初の申告が期限後申告だった場合や申告書を提出していなかった場合には、過少申告加算税ではなく無申告加算税という別の税率(調査通知前の自主的な申告は5%、原則は税額に応じて15%〜30%)が適用されます。また、新たに納める税額のうち「期限内申告税額と50万円のいずれか多い額」を超える部分には各5%が加重されます(10%→15%、5%→10%)。また、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、調査で帳簿の提示・提出を求められたのに提示しなかった場合や、帳簿への売上金額の記載等が本来記載すべき金額の2分の1未満(10%加算)・3分の2未満(5%加算)であるといった重大な記帳不備がある場合には、その帳簿に関係する税額についてさらに加重されることがあります。税率は国税通則法65条・68条、財務省「加算税制度の概要」および国税庁タックスアンサーNo.2026によります。

ポイントは、調査の連絡が来た後でも、その調査による更正等を予知する前に自分から直せば原則5%で済むという点です。注意してほしいのは、「予知する前」とは「明示的に誤りを指摘される前」という意味ではないことです。国税庁の過少申告加算税・無申告加算税の事務運営指針(PDF)では、臨場調査や取引先への反面調査などにより調査があったことを納税者が了知したと認められた後の修正申告は、具体的な誤りをまだ指摘されていなくても、原則として更正を予知したものとして扱われます(この場合は原則10%。なお、臨場のための日時の連絡を受けた段階での提出は原則として予知に該当しないとされています)。予知の有無は個別の事情で判定されるため、迷ったら税理士に確認してください。いずれにせよ、「調査までの数週間」は隠す時間ではなく、直す時間です。

やってはいけないこと——書類の後付け・破棄・口裏合わせ

ここが本記事で最も重要な部分です。税務調査で最も重いペナルティである重加算税は、「うっかりミス」ではなく「仮装・隠蔽」、つまり工作に対して課されます。国税庁の事務運営指針は、仮装・隠蔽に当たる行為の例として、帳簿書類の改ざん、虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の破棄・隠匿などを挙げています。

典型的な失敗が、「請求書が見つからないから、取引先に頼んで当時の日付で作ってもらう」という行動です。本人の感覚では「不備を整えるだけ」でも、これは日付を偽った証憑の偽装であり、通謀による虚偽証憑の作成に該当し得ます。

ここで制度を正確に押さえておきましょう。重加算税が課されるのは、国税通則法68条1項により、課税標準等・税額等の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装し、それに基づいて申告書を提出していた場合で、対象となる税額も、申告漏れの全体ではなくその隠蔽・仮装された事実(不正事実)に対応する部分に限られます。つまり、調査の連絡が来た後の工作それ自体が、過去の通常の申告漏れ全額を当然に35%に変えるわけではありません。さらに、同項は、その調査による更正を予知しないでされた修正申告を重加算税の対象から除外しています。したがって、調査通知の後でも、更正を予知する前に自主的に修正申告した部分には、当初の申告に隠蔽・仮装があった場合でも重加算税は課されず、期限内申告であれば過少申告加算税(原則5%)にとどまります。重加算税35%が現実になるのは、更正を予知した後に修正申告をした場合や、税務署による更正を受けた場合です。ただし、国税庁の重加算税の事務運営指針(PDF)は、調査の際の虚偽の答弁等とその他の事実関係を総合的に判断して「申告時における隠蔽又は仮装が合理的に推認できること」を不正事実の例として挙げています。連絡後の書類の後付けや口裏合わせは、「最初から分かっていて申告したのではないか」という申告時の隠蔽・仮装を推認させる決定的に不利な事情になり得るのです。認定されれば、その部分に対応する加算税は10%ではなく重加算税35%。隠蔽・仮装に基づいて申告書を提出していなかった(無申告だった)場合は40%です(決定等を予知しないでされた自主的な期限後申告は、同条2項により重加算税の対象外です)。

また、調査官は提出された書類を単体で見るのではなく、取引の相手方の申告内容・振込記録などと突き合わせます。取引先に対するいわゆる反面調査という手段も制度上用意されています。片側だけ作った書類は、突合の中で矛盾として浮かび上がります。

「事実を揃える」のはOK、「事実を作る」のはアウト

では、書類がない経費はどうすればよいのか。実務上の線引きはこうです。

  • OK(事実を揃える): 実在する取引について、取引先に事情を話して再発行日を偽らずに請求書を再発行してもらう(取引年月日は事実のとおり記載する)。書類がどうしても揃わない支出は、「いつ・誰に・何のために払ったか」をメモに整理し、振込記録とあわせて説明できるようにしておく
  • アウト(事実を作る): 過去の日付にさかのぼって書類を作る・内容を偽る・帳簿を書き換える・データを消す・取引先と口裏を合わせる

一点、注意があります。ここでの「OK」は、虚偽の書類作成(仮装)に当たらないという意味であって、その支出が経費・損金として税務上認められることまで保証するものではありません。特に消費税の仕入税額控除を受けるには、一定の例外を除き、帳簿と適格請求書等(インボイス)の両方の保存が原則として必要です(国税庁タックスアンサーNo.6496)。メモと振込記録だけでは消費税の控除要件を満たさない場合があるため、修正申告の要否は税目ごとの要件に照らして税理士に確認してください。

覚えるべき原則は一つ、「隠すな、説明しろ。作るな、直せ」です。

重加算税だけでは済まない「3つの追い打ち」

  1. 遡及期間が7年に伸びる: 更正・決定ができる期間は原則5年ですが、「偽りその他不正の行為」により税額を免れ、または還付を受けた国税については7年です(国税通則法70条)。これも、調査の連絡が来た後の行為だけで当然に7年になるものではなく、不正行為により税を免れていたと認められる場合の話です。
  2. 延滞税が重くのしかかる: 延滞税は原則として法定納期限の翌日から納付の日まで日数に応じてかかります。令和8年中の割合は年2.8%、納期限の翌日から2月を経過した日以後は年9.1%です(割合は年により変動します)。さらに、延滞税には計算期間を短くする特例(除算期間)がありますが、偽りその他不正の行為により国税を免れた場合等にはこの特例が適用されず、本来なら計算から除かれたはずの期間まで延滞税がかかります(国税庁タックスアンサーNo.9205)。
  3. 青色申告の承認取消し: 帳簿書類の提示を正当な理由なく拒否した場合や、隠蔽・仮装による不正所得金額が一定基準(更正等後の所得金額の50%超。500万円未満の場合を除く)を超える場合などには、青色申告の承認が取り消されることがあります(国税庁事務運営指針)。取り消されると、その年分以後、個人なら65万円控除やその年に生じた赤字の繰越しといった青色の特典が使えなくなります。なお、過去の青色申告年度に生じた欠損金は、その後白色申告になっても要件を満たせば繰越控除が維持されます(法人につきタックスアンサーNo.5762)。

※今回と同一の税目について、基準日前5年以内に所定の無申告加算税または重加算税を課されたことがあるなど、国税通則法68条4項1号の要件を満たす場合には、重加算税は35%から45%に加重されます。

実額で比べると——追加本税100万円のケース

追加で納める本税が100万円だったとします(期限内に100万円以上の税額を申告しており、帳簿不備による加重(不記帳加重)その他の加重・軽減措置がない場合の概算。期限内申告税額がこれより少ない場合は加重部分が生じ、金額は変わります)。

  • 調査通知後・更正予知前に自分から修正申告した人: 加算税は約5万円
  • 調査による更正等を予知した後に直した人: 約10万円
  • 更正等を予知した後の修正申告・更正で、隠蔽・仮装に基づく申告と認定された人: 35万円(追加本税100万円の全額が隠蔽・仮装に基づく部分=重加対象税額である場合)+不正行為があれば7年遡及・延滞税増・青色取消しのリスク

同じ100万円の申告漏れで、加算税だけでも30万円の差が生じ得ます。ミスそのものと同じくらい、連絡が来た後の対応が結果を左右するのです。

調査当日の受け答え——5つの原則

  1. 聞かれたことに答える。聞かれていないことまで話を広げない
  2. 記憶が曖昧なことは断定しない。「確認して後日回答します」でよい
  3. 嘘をつかない。前章のとおり、虚偽の説明は最も高くつきます
  4. 帳簿等の原本を預ける場合は、留置きの手続により預り証を受け取る(法定の手続きです)
  5. 税理士に立ち会ってもらう。見解が分かれたら、感情ではなく根拠で議論する

なお、代表者個人名義の預金口座も、事業との関連が疑われる場合には質問検査等の範囲に含まれるとされています。事業と関係がないなら、その旨を淡々と説明すれば足ります。調査官は敵ではなく、申告が正しいかを確認するプロです。こちらは記録と根拠で誠実に説明する——この構えが一貫していれば、調査は「戦いの日」ではなく「日頃の記帳を説明する日」になります。当日の受け答えの詳細は、関連記事「税務調査で気をつけるべきこと10選」も参考にしてください。

結局、税務調査が「怖くない」のはどんな会社か

領収書や請求書がきちんと整理され、聞かれたらすぐ出てくる会社です。証憑がきれいな会社の調査は短時間で淡々と進むことが多く、逆に、レシートが袋に山積みの会社は確認事項が増え、調査も長引きがちです。最強の調査対策は交渉テクニックではなく、日々の整理整頓です。調査で否認されやすい経費の傾向は「重加算税!?税務調査で否認されたらどうなる?」で解説しています。

よくある質問

Q. 事前通知なしで、いきなり調査官が来ることはありますか?

A. 法令上あり得ます。事前に通知すると正確な調査が困難になるおそれがあると個別に判断された場合です。その場合でも、その場で税理士に連絡し、立会いを求めることはできます。慌てて曖昧な即答をしないという原則は同じです。

Q. 顧問税理士がいません。今から依頼できますか?

A. できます。調査の連絡を受けてからでも、税理士に調査立会いを含めて依頼することは可能です。むしろ、通知を受けた直後の「調査の日までの期間」にどれだけ準備できるかが結果を左右するため、早い段階での相談をおすすめします。

Q. 繁忙期で提示された日程では対応できません。断れますか?

A. 一方的に断ることはできませんが、業務上やむを得ない事情など合理的な理由があれば、日程変更の協議を申し出ることができます。申し出は口頭で構いません。

動画でも解説しています

税務調査への向き合い方は、YouTubeチャンネル「たなSHOW: お金と経営の学校【田中将太郎】」でも解説しています。あわせてご覧ください。

税務調査の連絡を受けたら、早めにご相談ください

当事務所では、税務調査の事前通知を受けた段階からのご相談・調査立会い・修正申告の要否判断まで、公認会計士・税理士が対応しています。連絡を受けた直後が最も選択肢の多いタイミングです。「この経費は説明できるか」「先に修正申告すべきか」の判断に迷ったら、調査の日が来る前にご相談ください。

→ 税務調査対応の相談はこちら(お問い合わせフォーム)

出典(一次情報・2026年9月14日確認)


著者: 公認会計士・税理士 田中将太郎
最終レビュー日: 2026年9月14日
制度の基準日: 2026年9月14日現在の法令・国税庁公表情報に基づきます。延滞税の割合など年により変動する数値は、最新の国税庁サイトでご確認ください。個別の調査対応は事情により異なります。必ず税理士にご相談ください。

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