マイクロ法人の正しい作り方|試算例では社会保険料が年60万円以上下がる可能性も——「設計図」を公認会計士・税理士が解説

公開 2026.08.01 約18分で読めます 筆者:田中将太郎(公認会計士・税理士)

「マイクロ法人を作れば社会保険料が下がる」と聞いて、作るべきか迷っている個人事業主・フリーランスの方へ。この記事は、①自分はマイクロ法人を作るべきか(作らない方がよいか)、②作るならどう設計すれば税務・社会保険の両面で説明できる形になるか——この2つの意思決定を、令和8年度の実際の保険料をもとに数字で判断できるようにするための実践ガイドです。

結論から言うと、国民健康保険(国保)が高い個人事業主がマイクロ法人を正しく設計すると、国保・国民年金との保険料の単純差額(税効果前)は、東京都練馬区の令和8年度料率による試算例(45歳・総所得金額等600万円)で、単身なら年約75万円(法人の維持コスト差引後で年約55万円)、国民年金を納付している所得のない45歳の配偶者がいる2人世帯なら年約105万円(同・年約85万円)になる計算です(40〜64歳の方を含む国保上限クラスの世帯では、単純差額が年100万円を超えることもあります)。国保は自治体・年齢・世帯構成・所得の中身で大きく変わるため、これはあくまで特定の前提を置いた試算例です。ただしこれは税金への影響(後述)を織り込む前の粗い比較です。一方で、世の中で語られる「作り方」の中には、税務でも社会保険でも問題になり得る危ない設計が少なくありません。また、そもそも作らない方がよい人も明確に存在します。本記事では、公認会計士・税理士として顧問先の相談を受けてきた経験から、「成立する大前提」→「事業の選び方」→「役員報酬の設定」→「損益分岐」→「やってはいけない設計」の順に、設計図として解説します。

マイクロ法人が成立する大前提:事業の実態が「分かれている」こと

マイクロ法人とは、個人事業を続けながら小さな法人を別に持ち、法人側で健康保険・厚生年金に加入することで、国保・国民年金より社会保険料を抑える仕組みです。成立するには、性質の異なる2つの判定を別々にクリアする必要があります。第一に税務上の所得帰属——「契約・顧客・商品・業務・設備・口座・意思決定・許認可などの実態から、法人の事業を個人事業と客観的に区分できるか」。第二に社会保険の被保険者資格——法人での労務と報酬の実態から、健康保険・厚生年金に加入できると認められるか(後述)。役員報酬の金額や法人の形だけでは、どちらの判定も満たせません。

NG例:同じ事業の売上を法人と個人に分ける

実際によくある危ない相談が、「1店舗の美容室の売上の一部を法人につけて、残りを個人に残せば社保が安くなる」というものです。店は1つ、働く人も顧客も同じで、売上だけを法人と個人に割る——この設計は、税務上「その所得は実際には誰が稼いだのか」という実質所得者課税(所得税法12条)の問題になります。所得の帰属は請求書に書いた社名ではなく、「その事業を経営していると認められる者がだれか」で判定されます(所得税基本通達12-2)。具体的には、契約の名義・入金口座・実際に働いた実態・店舗や設備の帰属が見られ、これらが全部個人のままなら、法人に付けた売上は個人の所得に戻されるリスクがあります。

税務署と年金事務所は「別の入口」から確認に来る

この論点が厄介なのは、確認が二方向から来る点です。税務側は「その所得は誰が稼いだのか」(契約名義・入金口座・業務実態・設備)を、年金事務所側は「法人での仕事の中身は何か、役員報酬額の根拠は何か」を見ます。事業の中身が伴っていないと、どちらの質問にも答えられません。実際に、実態の乏しい法人の役職に就く手法で国保料を圧縮していたケースが報道され問題視された例もあり、形だけのスキームへの目は年々厳しくなっています。

もう一つの大前提:被保険者資格は「労務と報酬の実態」で決まる

税務上、事業を客観的に区分できても、それだけで健康保険・厚生年金に加入できるわけではありません。法人の役員が被保険者となれるかどうかは、厚生労働省の令和8年3月18日付通知が示すとおり、①その業務が実態において法人の経営への参画を内容とする経常的な労務の提供であるか、②報酬がその業務の対価として法人から経常的に支払われるものであるか——を実態から総合的に判断して決まります。役員会に出席するだけで具体的な経営参画のない名目的な役員や、役員報酬を上回る会費等を法人へ支払っていて実質的に経常的な報酬がない場合は、被保険者資格が認められません。つまり、月5万円の役員報酬を「設定」するだけでは足りず、法人事業の経営・業務を実際に継続して担い、その対価として報酬が毎月実際に支払われていることが必要です。

OK例:実態が客観的に区分できる設計

逆に、きれいに成立しやすい典型例が士業のケースです。司法書士などの資格者限定業務は、一般の株式会社等の法人では営めません(なお、司法書士法人(日本司法書士会連合会)税理士法人(国税庁)など士業法人という選択肢は別にあります)。個人の司法書士事務所として本業を営む方が、別に不動産業を法人で営めば、契約・顧客・業務の実態が個人と法人で客観的に分かれた構造になります。法人側で役員報酬を出して健康保険・厚生年金に加入した結果として、社会保険料が最適化される——この順番が重要です。

つまり、正しいマイクロ法人とは「売上を分けたくて分ける」のではなく、「事業の実態がもともと分かれている」設計です。「なぜ2つに分かれているのですか」と聞かれたときに、契約・顧客・業務の実態を挙げて一言で説明できるかどうかが、最終的な判断基準になります。

STEP1 事業の選び方:個人=本業、法人=別事業

設計の基本形は、個人事業に本業を残し、法人には本業と明確に区別できる別事業を持たせることです。実態を客観的に区分しやすい組み合わせには、代表的に次の3つの型があります。

仕組み
① 資格型資格者限定業務は一般の株式会社等では営めない(士業法人は別制度)ため、個人事務所の本業と法人の別事業が実態として分かれやすい司法書士・行政書士・税理士など士業(個人事務所) ×(法人で)不動産業・物販など
② 許認可型許認可・免許(個人でも取得可能)を法人名義で取得し、それに基づく契約・業務・収益を法人に帰属させる宅建業免許(国土交通省)・古物商許可・旅館業許可などを法人で取得し法人で運営
③ 資産型収益資産を法人が保有し、賃料・収益が法人に帰属する不動産賃貸・設備レンタルを法人保有で運営

逆に弱いのは「個人でコンサル、法人でもコンサル」のように、外から見て同じに見える組み合わせです。顧客も業務も同じなら、事業は1つと見られてもやむを得ません。判定には、次の5つのチェックを使ってください。

#事業実態の5チェック
法人名義の契約書があるか
法人名義の請求書・入金口座があるか
個人事業と法人で顧客・商品・サービス・リスクが分かれているか
法人側で実際に意思決定・営業・納品をしているか
売上規模と役員報酬の説明がつくか

5つ全部に「はい」と言えて、初めて次のステップに進めます。順番も重要です。「社保を下げるために法人を作る」のではなく、「法人でやるべき事業があるから法人にする。結果として社保も最適化される」が正しい順番です。

STEP2 役員報酬の設定:社会保険料は「階段」で決まる

社会保険料は報酬額そのものではなく、標準報酬月額という「階段」で決まります。報酬月額を一定の幅で区切り、どの段(等級)に乗るかで保険料が決まる仕組みで、この階段には上にも下にも「端」があります。上の端では、厚生年金の標準報酬月額は65万円で頭打ちになり、それ以上報酬を増やしても厚生年金保険料は増えません。マイクロ法人は、この階段の逆の端=一番下の段(最低等級)を使う設計です。

令和8年度・協会けんぽ(東京)の保険料額表(PDF)に基づく最低等級の数字は次のとおりです。

保険最低等級の標準報酬月額該当する報酬月額保険料(労使合計・月)
健康保険(1等級)58,000円63,000円未満5,713円+子ども・子育て支援金133円
厚生年金(1等級)88,000円93,000円未満16,104円
子ども・子育て拠出金(会社のみ)約317円
合計月 約22,267円 = 年 約26.7万円

※東京都・令和8年度の料率(健康保険9.85%・子ども・子育て支援金0.23%・厚生年金18.3%・拠出金0.36%)による計算値。40〜64歳の方は介護保険料(1.62%)が加わり年約27.8万円。都道府県により健康保険料率は異なります。このうち本人の給与天引き分は月約1万1千円(年約13万円)です。

比較対象となる個人側の負担はどうか。国民年金保険料は令和8年度で月17,920円(1人あたり年約21.5万円)(日本年金機構)。国保は自治体・年齢・世帯人数・所得の中身で大きく変わるため、本記事では前提を固定した試算例で示します。東京都練馬区の令和8年度料率(基礎分: 所得割7.51%・均等割47,600円/後期高齢者支援金分: 2.80%・17,600円/介護納付金分〔40〜64歳のみ〕: 2.43%・17,800円/子ども・子育て支援金分: 0.27%・1,873円。賦課基準額=総所得金額等−基礎控除43万円)で計算すると、45歳・総所得金額等600万円(青色申告特別控除後などの合計。賦課基準額557万円)の個人事業主の国保は、単身で年約81.0万円、45歳・所得なしの配偶者も国保に加入する2人世帯で年約89.4万円になります。また国保の賦課限度額(上限)は令和8年度で年113万円です(厚生労働省通知・令和8年1月15日保発0115第9号。医療分93万円+介護納付金分17万円+子ども・子育て支援金分3万円の合計。介護納付金分は40〜64歳の被保険者がいる世帯のみ賦課され、該当者がいない世帯の上限は96万円)。40〜64歳の方を含む上限クラスの世帯(国保113万円+本人の国民年金約21.5万円=約134.5万円。世帯の国保加入者全員が国保を脱退できる前提)が、労使合計・年約27.8万円(介護保険料込み)の世界に変われば、単純差額は年約106.7万円。上の練馬区試算例では、単身モデル(国保約81.0万円+国民年金約21.5万円=約102.5万円)で年約27.8万円との単純差額が年約74.7万円、夫婦2人世帯モデル(国保約89.4万円+夫婦2人分の国民年金約43.0万円=約132.4万円)では、配偶者が被扶養者・第3号被保険者となり保険料負担ゼロになるため、単純差額は年約104.6万円です。いずれも税金への影響を織り込む前の粗い比較(税効果前)である点に注意してください。

役員報酬は「月5万円前後」を基準に個別設計する

具体的な役員報酬は、月5万円前後を基準に個別設計するのが実務的です。理由は3つあります。

#役員報酬設計の5原則
月63,000円未満 → 健康保険・厚生年金とも最低等級に収まる
他に給与収入がない場合、年60万円の給与収入は給与所得控除の最低保障額65万円(令和7年分以降・国税庁No.1410)以内となり、給与所得は0円。給与所得控除は勤務先ごとではなくその年の給与収入の合計額に適用されるため(同No.1410: 源泉徴収票が2枚以上ある場合は支払金額を合計して表を適用)、他に給与収入がある場合は全勤務先の給与収入を合算して税額を試算する
無報酬はNG(業務対価としての経常的な報酬の実支給がなければ被保険者資格が認められない)。報酬は法人での経営参画・労務の対価として毎月実際に支払う(上記・厚労省令和8年3月18日通知)
毎月支給する役員給与は、原則として定期同額給与(毎月同額)の要件を満たす必要がある。ほかに事前確定届出給与・一定の業績連動給与という法定類型もあり、期中改定にも事業年度開始から3か月以内の通常改定・臨時改定事由・業績悪化改定事由の例外がある(国税庁No.5211)
報酬に「生活費」「節税」の役割を持たせない(下記)

失敗例:共済に入りたくて役員報酬を上げてしまう

実務でよく見る失敗が、「小規模企業共済に入りたいから」「所得控除を使いたいから」と、掛金分だけ役員報酬を上げてしまう設計です。社会保険料は標準報酬月額の等級で決まるため、健康保険は報酬月額63,000円未満、厚生年金は93,000円未満であればそれぞれ最低等級のままで、増額分の全額に一律で保険料がかかるわけではありません。ただし、これを超えて等級が上がる帯で報酬を増やすと、一例として、増加分におおむね社会保険料約30%(法人負担約15%+個人負担約15%)がかかる一方、低い税率帯の方の所得控除の節税効果は所得税5〜10%+住民税10%=15〜20%程度(所得税の税率は国税庁No.2260)にとどまる——という前提付きの試算になります。もっとも、法人側では給与や社会保険料の法人負担分が損金になり、本人の限界税率や将来の年金給付額も変わるため、常に逆効果とは限りません。控除目的だけの増額は不利になる場合があるため、増額前後の標準報酬等級・個人の税額・法人の税額・将来の年金給付を合わせて試算してから決めてください。

しかもマイクロ法人の場合、小規模企業共済の掛金は小規模企業共済等掛金控除として支払額の全額が所得控除になるため(国税庁No.1135)、個人事業側の所得にぶつければ足ります。役員報酬を上げる理由にはなりません。一方、iDeCoは別の注意点があります。法人で厚生年金に加入すると、個人事業を続けていても、iDeCo上は原則として第1号被保険者から第2号被保険者に変わり、拠出限度額も変わります。基準日(2026年7月5日)時点では、第1号の月6.8万円に対し、企業年金のない第2号の上限は月2.3万円です(厚生労働省・iDeCoの概要)。さらに2026年12月1日には拠出限度額を引き上げる改正の施行が予定されているため、掛金の設計は実行時点の最新の上限を必ず公式資料で確認してください。生活費は個人事業の所得から出し、役員報酬は「社会保険の器」としてだけ使う——控除目的だけで動かす前に、必ず全体を試算する、が原則です。

STEP3 維持コストと損益分岐:「作らない」も正解のうち

マイクロ法人は、持っているだけでお金がかかります。赤字でも、です。

項目金額の目安(年)
法人住民税の均等割(赤字でも毎年)約7万円(東京23区・最低区分。自治体で異なる)
税理士費用(記帳・決算・申告)10〜30万円程度
社会保険・年末調整などの事務時間コスト(新規適用届・算定基礎届・源泉納付など)

税理士費用まで含めると、維持コストはざっくり年20万円前後は見込むべきです。ここから損益分岐は次のようになります。

いまの国保+国民年金(年)マイクロ法人の社保(労使合計・年)税効果前の単純差額維持コスト(年・目安)維持コスト控除後(税効果前)
合計約50万円約27万円約23万円約20万円ほぼゼロ
【単身モデル】国保約81.0万円+国民年金約21.5万円(計約102.5万円)※45歳・総所得金額等600万円・練馬区令和8年度料率約27.8万円(介護保険料込み)約74.7万円約20万円約54.7万円
【夫婦モデル】国保約89.4万円+国民年金2人分約43.0万円(計約132.4万円)※ともに45歳・配偶者は所得なし・総所得金額等600万円・練馬区令和8年度料率約27.8万円(配偶者は被扶養者・第3号被保険者で負担ゼロ)約104.6万円約20万円約84.6万円
【上限モデル】国保上限113万円+国民年金約21.5万円(本人1人分・計約134.5万円)※本人が40〜64歳(介護納付金分の賦課対象)で、世帯の国保加入者全員が国保を脱退できる前提約27.8万円(介護保険料込み)約106.7万円約20万円約86.7万円

※国民年金は各行に記載した納付人数分で計算しています(単身モデル・上限モデルは本人1人分のみ、夫婦モデルは2人分)。国民年金を納付している配偶者等が他にもいる世帯では、法人加入後に負担がなくなる人数分を合算して比較してください。また各モデルは世帯の国保加入者全員が国保を脱退できる(夫婦モデルの配偶者は被扶養者・第3号被保険者になる)前提です。被扶養者にできない家族が国保に残る世帯では、残る人を前提に自治体で再試算した年額との差で比較してください。国保額は自治体・年度・年齢・世帯構成・所得により変わります。
※この表の金額は税効果前の単純差額であり、税引後の手残りではありません。国保・国民年金や健康保険・厚生年金の本人負担分は、支払額の全額が社会保険料控除の対象になるため(国税庁No.1130)、支払いが減ると個人の所得税・住民税は増える方向に働きます。一方、社会保険料の法人負担分は法人側で損金になります。最終的な手残りは、これらの税効果に加え、法人税・所得税・住民税と法人設立の初期費用まで含めた個別試算で確認してください。

一次スクリーニングの目安は次のとおりです。いまの国保と国民年金の合計が年50万円に届かない方には、マイクロ法人はおすすめしません。差額が維持コストに食われ、効果がほぼ残らないからです。50万円台の方は要試算のグレーゾーン、60万円を超えている方は検討する価値があります。ただしこれはあくまで入口の目安であり、最終判断は上記の税効果まで含めた個別試算で行ってください。金額は自治体・年齢・世帯構成で変わるため、判定は必ずご自身の実額で行ってください。

自分の負担額の調べ方

判定に使う「いまの負担額」は、次の2つを足すだけです。

  1. 国保: 毎年6月頃に届く「国民健康保険料(税)納入通知書」の年間保険料額(世帯合計)を確認したうえで、削減額は「現在の世帯年額−法人加入後も国保に残る人を前提に自治体で再試算してもらった年額」で見積もる。世帯合計の全額を削減額として使えるのは、世帯の国保加入者全員が国保を脱退できる場合だけです。健康保険の被扶養者にできない家族(収入要件を満たさない家族など)が国保に残る場合、国保料はその人たちの分で再計算されて負担が続きます(練馬区「国保のしおり」令和8年度(PDF)でも、世帯の一部が脱退した場合は年間保険料を再計算するとされています)。誰を被扶養者にできるかは、事前に年金事務所・協会けんぽ等へ確認してください
  2. 国民年金: 法人加入後に負担がなくなる人の納付人数分を合算する。対象は、ご本人に加えて、法人加入後に被扶養配偶者(第3号被保険者)となる20〜59歳の配偶者など、現在国民年金保険料を納付している方です。月17,920円×12か月×人数=1人あたり年約21.5万円(令和8年度・付加保険料や前納割引は別途)

この合計が年50万円未満なら見送り、60万円超なら設計の検討に進む——これが最初の一次スクリーニングです。最終判断は税効果を含む個別試算で行ってください。

やってはいけない3つの設計

#NG設計何が起きるか
同じ事業の売上の付け替え(美容室型)税務: 実質所得者課税(所得税法12条)で所得の帰属を否認されるリスク/社保: 意図的な社保逃れと指摘されるリスク
実態のないペーパー法人(取引ゼロ・請求書なし)事業実態の5チェックが全滅し、税務・社会保険の両面で説明不能になる
経営参画・労務の実態がない名目だけの役員報酬社保: 被保険者資格は報酬額の高低だけでなく、経常的な経営参画・労務の提供と、その対価として経常的に支払われる報酬の実態から総合的に判断される(厚労省令和8年3月18日通知)。実態が伴わなければ健康保険・厚生年金に加入できない

「バレなければいい」という発想は勧めません。「バレるかどうか」を考えている時点で設計が間違っています。社会保険の適用は広がる方向にあり、形だけの低報酬スキームへの説明責任は年々重くなっています。逆に言えば、事業の実態が客観的に区分できている設計なら、説明を求められても一言で答えられ、隠す必要が最初からありません。

マイクロ法人 設計図チェックリスト(7項目)

#チェック
個人=本業、法人=実態を客観的に区分できる別事業(資格・許認可・資産の3つの型が代表例)になっているか
事業実態の5チェック(契約書・請求書口座・顧客分離・意思決定・報酬の説明)に全部「はい」か
役員報酬は月63,000円未満・月5万円前後を基準に個別設計しているか。他に給与収入がある場合は、全勤務先の給与収入を合算して税額を試算したか
定期同額給与で毎月同額か。無報酬・極端な低額になっていないか。控除目的の増額は、増額前後の等級・個人税・法人税・将来給付を試算してから判断したか
国保+国民年金の実額で一次目安(50万円未満は見送り・60万円超で検討)を確認し、税効果まで含めて個別に試算したか
売上付け替え・ペーパー法人・実態のない名目だけの役員報酬になっていないか。法人の経営・業務を実際に担い、対価として報酬を毎月実際に受け取る形か
税務署にも年金事務所にも「一言で説明できる」設計か

よくある質問

Q1. 配偶者はどうなりますか?

法人で健康保険・厚生年金に加入した場合、収入要件を満たす配偶者は被扶養者・第3号被保険者となり、配偶者自身の保険料負担はゼロになります。国保には扶養の概念がなく世帯人数分の負担が生じるため、扶養家族が多い方ほどマイクロ法人の効果は大きくなります。

Q2. 小規模企業共済やiDeCoはどちら側で使えばいいですか?

掛金は小規模企業共済等掛金控除としてその年に支払った全額が所得控除になります(国税庁No.1135)。マイクロ法人側の役員報酬は、他に給与収入がなければ給与所得控除の範囲内で給与所得がほぼ出ない設計のため(他に給与収入がある場合は全勤務先の給与収入を合算して判定)、控除は個人事業側の所得にぶつけるのが基本です。ただしiDeCoは、法人で厚生年金に加入すると加入区分が原則第2号被保険者に変わり、拠出限度額が下がる点(基準日時点で企業年金なしの場合月2.3万円。2026年12月1日に限度額引き上げ改正の施行予定あり)に注意してください。控除を使う目的で役員報酬を上げると、標準報酬の等級が上がる場合には増える社会保険料が控除の節税効果を上回ることがあるため、増額前後の等級と税額を試算してから判断してください。なお共済・iDeCoの加入資格や実行時点の限度額などの個別判定は、実行前に専門家・公式資料でご確認ください。

Q3. 個人事業と同じ業種の法人を作ってはだめですか?

同一の顧客・業務・設備のまま売上だけを法人に付け替える形は、実質所得者課税(所得税法12条・所得税基本通達12-2)により所得の帰属を否認されるリスクが高く、おすすめできません。同業でも顧客・商品・リスクが実態として分離できるケースはありますが、判断が難しいため、事業実態の5チェックを満たせるか専門家と一緒に確認してください。

まとめ:堂々と説明できる設計だけが正解

マイクロ法人の設計図は、①個人事業と実態を客観的に区分できる別事業を法人に持たせ、その経営・業務を実際に担って対価として報酬を受ける(税務の所得帰属と社会保険の被保険者資格は別々の判定)、②役員報酬は最低等級(月5万円前後)を基準に個別設計する、③国保+国民年金が年60万円超なら検討・50万円未満なら見送りを一次目安に、税効果まで含めて試算する、の3点に集約されます。違法すれすれの設計に頼らなくても、正しい設計のマイクロ法人・社宅・共済など、堂々とやれる対策を一つずつ実行するのが、結局いちばん強い経営です。実行にあたっては、必ず税理士・年金事務所に個別の状況を確認してください。

▶ この記事の内容は、YouTubeチャンネル「田中将太郎公認会計士・税理士事務所」でも実例エピソードとともに解説しています。動画で学びたい方はこちらからどうぞ:
YouTubeチャンネルを見る(@shotaro-tanaka)

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